ドイツ 1−1(PK 4-2) アルゼンチン
ドイツ戦を前にしてアルゼンチンのペケルマン監督は「チェスのようになるだろう」と語ったそうだが、本当にチェスのような目まぐるしい攻防となった昨日のドイツvsアルゼンチン戦。
普段は試合を見ながら逐次原稿を書く筆者だが、さすがにこの試合は書く手が止まってしまった。
サッカーを見ているとたまにその緊張感から一瞬足りとも目が離せない試合がある。
1秒目を離しただけで決定的瞬間が訪れそうな試合…、昨日の試合はまさにそんな試合だった。
キックオフの笛から両軍はお互いの持ち味を潰すべく中盤で激しいプレス合戦を繰り広げる。
前線からのあまりにも速いプレスをかけるドイツにも驚いたが、それ以上に驚かされたのが、ドイツの激しいチェックにも関わらず、一切構わず個人技を発揮してボールをキープするアルゼンチン。
こいつら、体格は日本人と変わらないが、根本的に何かが違いすぎる。
前半20分頃まではお互い互角の展開を見せるも、20分すぎからは徐々にアルゼンチンがペースを握り始める。中盤でボールタッチの多いリケルメを起点に右からマキシ・ロドリゲス、左からカルロス・テベスが突破するアルゼンチンの攻撃にドイツはラインを下げられる事になる。
一瞬にして局面が変わる派手な攻防こそ無かったが、組織的に相手のフォーメーションを崩していく双方のサッカーはまさにチェス(日本では詰め将棋と言ったほうが解かり易いかも?)。玄人好みの好試合だ。
特に前半から目立っていたのがアルゼンチンのテベス。間違っても女性受けする外見ではないが、見たからに頑丈そうに出来ているこの男が繰り出すドリブル突破などの個人技は度々ドイツの右サイドバックを混乱に陥れた。
前半は両者とも無得点で終了。
そして後半以降、この試合は大きなドラマを生む事になる。
先に得点を入れたのはアルゼンチン。
後半に入った49分、右サイドで得たリケルメのCKにゴール前に飛び込んだアジャラが快心のヘディングシュート。これが見事にゴールネットを揺らしアルゼンチンが先制、1−0とリードを奪う。
今大会初めて先制を許したドイツはここから反撃を開始。
右サイドでテベスに手を焼いていたシュナイダーに代わって62分にはオドンコールを投入。一気に前掛りで同点ゴールを奪いにいく体制を整える。
しかし、ドイツが前掛りになったことで逆にドイツDFの裏にスペースが出来たアルゼンチンは守ってカウンターの展開から、マキシ・ロドリゲスあたりが惜しいシュートを放つも追加点は奪えない。
1−1になるのか?2−0になるのか?
到底この試合が1−0で終わる事など考えられなかった筆者は、ドイツが前掛りになる事で逆にアルゼンチンがカウンターから追加点を奪う可能性も有り得ると考えていた。
ペースはアルゼンチン、ドイツが攻めてはいるもののアルゼンチンDFがパニックに陥っているような状態ではなかった為、同じようなペースで守っていけばアルゼンチンに勝機があるとの印象だった。
ところが、後半72分、アルゼンチンのペケルマン監督は大黒柱のリケルメに代わって守備的MFのカンビアッソを投入する。これが試合の流れを大きく動かしてしまった。
確かに守備意識の低いリケルメをピッチに置いておくよりかは、カンビアッソを入れる事でチーム全体に1−0で逃げ切る意識統一を図り、守備意識を高める目的では良かったかも知れないが、相手のドイツからしてみればリケルメがピッチを去る事で決定的な場面を作る選手がいなくなってしまい安心して攻撃に専念できる事になってしまった。結果、アルゼンチンのDFラインは引き気味になり、後半80分にヘディングで繋いだボールをクローゼに決められる事になってしまう。
こうなってしまえば必然的に有利に立つのはホームのドイツ。
ましてやリケルメを失ったアルゼンチンは恐くないとばかり猛攻を仕掛けてくる。
しかしリケルメを失った後もアルゼンチンはよく頑張った。
途中出場のフリオ・クルスにボールを当てて、2列目からマキシ・ロドリゲスが狙う展開だ。
決してアルゼンチンの組み立てではなかったが、リケルメを欠いた後も何度かゴールチャンスを作り出したアルゼンチンに底力を見たような気がする。
そしてPK戦。これまでW杯のPK戦で負けた事にないドイツがましてやホームで負ける訳もなく4−2で勝利。
結局、「鼻の差」で大一番を制したドイツが準決勝に進出した訳だが、この試合の勝敗を最終的に分けたのは、途中足を痛めながらも最後まで大黒柱バラックを信じて使い続けたクリンスマン監督と、策士策に溺れてしまい途中で大黒柱のリケルメを交代させてしまったペケルマン監督の采配だったような気がする。
但し、ペケルマン監督が決して能力に欠けた監督ではないと思えるだけに、今回喫したたった1回のミスで監督を辞任することなく、次の南アフリカ大会に向けても監督業を持続してもらいたいと思う。
それほど今大会のアルゼンチンは素晴らしいチームであった。