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谷崎 潤一郎「春琴抄」

2008-06-03 00:27:30
いつも帰りに寄る本屋さんの一角にある古本コーナーで
朱色の表紙が目にとまり、買ってみた。

谷崎 潤一郎の「春琴抄」




文字は小さいし、句読点はほとんどないので
ついついホッタラカシにしていたけれど読み出すと、やめられない〜

盲人の美女春琴にひとめぼれ、生涯従事する佐助。

ふたりの間に子供ができても、一切彼の子供だと
認めようとしない春琴、何がなんでも主従関係を守ろうとする佐助。
あまりに我がままな春琴に読んでいると辟易してくるけれど、
佐助は、根をあげることなく、まめまめしく仕える。

・・・これって、ドSドMよねぇ、と読み進めていくと
極地を通りこし、息をのむ展開…!!
え、え、え、ウソーーーー!!!
ホラー映画のように、思わず目をつむりたくなる

でもちゃっかり指の間から見てますみたいに、
結局何度かそのところ、読み返した。
恐ろしいけど、気持ち悪くないのが不思議な谷崎氏の文章。

とにもかくも。
佐助もまた、そのホラーな一件で盲目となるのだが、
失った視覚は、より感覚を研ぎ澄ませ30年間脳裏に焼きつけた春琴の姿を艶かしく
思い起こせるようになる。

「眼が潰れると眼あきの時に見えなかった
いろいろなものが見えてくる
お師匠様のお顔なぞもその美しさがしみじみと見えてきたのは
目しいになってからであるその外手足の柔かさ肌のつやつやしさが
お声の綺麗さもほんとうによく分かるようになり…(以下省略)」


美しい文章でぐい、ぐぃぃと引き込まれる谷崎ワールド。
直接的な官能表現はないのに、日本語の美しさが余計に際立てて、
まぁ、なんと色めかしいこと。

ここまで超越すると「異常」も超自然現象かのように思えてくるけど、
いやはや、こんな純愛の形もありかって、ウーーーーーン 壮絶…
年とってから、もう一度読んでみたい。

「四畳半神話大系 」森見登美彦

2008-04-14 22:37:52
学生のはてしない妄想を超硬派な文体で書いた
「太陽の塔」を読んですぐに、
また森見さんの著書を読みたくてうずうず!!

そんなとき、これ以上ないくらいのグッドタイミングで
元同僚の玉露さんから「森見登美彦の四畳半神話大系
文庫本として角川書店から出ましたよ!!」
とメールが

翌日、通勤途中にある本屋で買おうとすればない〜
なんと売り切れ。
気を取り直して、日を改め会社近くの書店に行けば在庫がこんもり
まずは近くの本屋からやな。灯台元暗し。



それから1週間ほどかけて読破

四畳半風呂なしトイレなしの学生寮。
そこでつつまし過ぎる、地味〜な青春のセもない生活を送る
京都大学の学生の主人公。

「あの時こうしていれば」「あの時、あのサークルに入らなければ」と
あれやこれや思うわけですが、
「あの時○○してれば」の展開が第一話。
「あの時△△していれば」の展開が第二話と続き、
しまいに第四話では
四畳半の空間が永遠に続いていて、ドアを開ければ
また四畳半(1)、その四畳半の窓を開ければまた四畳半(2)が続き、どこまで
続く四畳半探索!! という面白い構成になっています。

特に最終話はインパクト大。
部屋から部屋へと移動して、どこかで四畳半世界から
抜けられないかと間抜けなサバイバルをする主人公。
どの四畳半に移動してもある魚肉ハンバーグとカステラを食べながら、
なんとなく間のぬけた(でも切実よ!)なサバイバル

でも、どんな選択をとっても、結局主人公は
ぬらりひょんのような妖怪のごとき小津につきまとわれるし、
すっきりと理知的な明石さんに出会うところにホッとする

一見、つつましやかで地味〜でも、ウダウダと考えてみたり、
悪友につけまわされたり、奇妙な師匠に従事することになったり、
ラブドールを部屋に放置されてしまったり、深夜に猫ラーメンをすすったり
そんな何もかもが青春やないのとちょっぴり眩しい気持ちで読みました。

「夢の櫂こぎ どんぶらこ」田辺聖子

2008-03-28 22:58:08
田辺聖子さんのイメージを、「ジョゼと虎と魚たち」と「言い寄る」を読んでから、
なんとなくチャキチャキと気の強そうな作家さんかなと思い描いてた。
今回、「夢の櫂こぎ どんぶらこ」を読んで、
なんとオキャンで乙女なおばちゃま!とおどろき。



なにせ、この本では"あーたん"こと田辺聖子と暮らすぬいぐるみ達との
日々の暮らしが書かれてるのです。
ぬいぐるみたちは、本の中でちゃんとナイフとフォークを使って
ご飯を食べ、買い物に行き、、俳句を書き、時に家出をし、
六甲おろしを歌い、漉し餡やつぶ餡のおかしの好みだってちゃんとある。

性格も言動もそれぞれで
読んでいると自分の好きなぬいぐるみが自然と決まってきて、肩入れしてしまう。
特に聖徳太子の教えが大好きなスヌなんか、品があって素敵なんだな。
弱虫で気のちっちゃいコビィも可愛い。
きっと人間でいたらナチュラルにフェロモン系であろう、ブチもいい。

実際、田辺聖子宅にはぬいぐるみがたくさんあるらしいが、
その子たちを見て繰り広げた空想がこの本のストーリーなんだそう。

田辺聖子の書く関西弁は、柔らかくていい。
ぬいぐるみ達が、妙にイキイキと見えるのはその関西弁があるからこそと思う。
時々登場する、あんよ(足)が不自由なだんなさんも、
影の柱のようなさりげないサポートがナイスです。

また、素敵な表紙にも注目。
雑誌かテレビでこのデザイナーさんを見たことがある。
他の作品もいろいろ見てみたいなー。
切り絵から飛び出た人間が今にも動き出しそうな感じ。

「太陽の塔」森見 登美彦

2008-03-26 22:47:31
「太陽の塔」のタイトルにビビッときて
思わず手にとったら最後、ほれこんで一気読み〜
これからも色んな本に出会うだろうけど、
この本は特別に好きで印象に残り続けると思う。
「太陽の塔」(森見 登美彦著)日本ファンタジーノベル大賞受賞作らしい。



女の子にひたすらもてない男子の繰り広げる妄想ワールド。
それはもう男臭くって、デリケートで、
もどかしくって、破天荒ぶりに笑えて、ほくそえんで、ほほえましくて、照れくさくて
すこし切なくて、キュンとして、甘酸っぱくて…

主な登場人物は京都大学の学生である主人公とその周辺を固める強烈な同士、
クラブの先輩、後輩、そして好きなのにフラレてしまった初めての彼女・水尾さん。
この小説に登場する人物は、だれかれもが強烈な個性の持ち主で、
でも憎めなくて愛らしい。

何かの巣窟のようになっている髪型と巨体からは想像できないような
つぶらな瞳と繊細な心の持ち主の高薮くん。
(ちなみに私はこの高薮くんが1番好き

同士の中でなぜかリーダ的存在で微妙にカリスマ性をもつ飾磨くん。
クリスマス前には鬱々と考え意識しすぎて、
イブだかクリスマスには毎年発熱する可愛らしさも。

世間全般に憤っており、すぐに我が世界に入り込んでしまう井戸くん。

「男の美学」を暑苦しいばかりにふりかざす坂本竜馬好きな海老塚先輩。

水尾さんが好きでしょうがなく、歪んだ一生懸命さゆえ主人公と行動がかぶる遠藤くん。

主人公と遠藤くんの水尾さんをめぐってのやり合いのはずが、
何故か「ゴキブリキューブ」合戦に…。
それがあたかも高尚なことのように書かれていて、おかしい。

「生命の神秘を丸ごと贈るのであるから、きっと大喜びするに違いない。
彼も生命力の力強さに触れれば、恋愛などと愚かしい妄想に
右往左往することもなくなるだろう」
という具合

ほかにも
「世界平和のためには我々1人1人が責任を持って荒ぶる魂を鎮めねばならぬ。
社会に生きる者の義務とは言えつらいことだと嘆きながら、禍々しい
生殖本能の矛先をそらすために培われてきた膨大な作品群を前にして私は
右往左往し(中略)…そして割合まめに新作をチェックする」
とか、

エッチなビデオをかりるためにも、こんなに理屈をこねて肯定を前置きしなければ
ならなかったり、ストイックな精神を持つ(主人公いわく)人間は忙しい。

狭い貧乏学生アパートで悶々と繰り広げられる屈折しながらも
一本気な妄想ワールドは、太陽の塔のごとく、にょきにょきと、つかみどころがなく、
ドーンとそびえたっているみたい。
その実、めっちゃデリケートでちょっとしたハプニングで大きく揺れ動いてしまって、
いとおしい。まるでガラスの太陽の塔のごとく

コンセント

2008-03-11 23:46:58
田口ランディの「コンセント」を2日で一気読み!
移動中の電車、バス、歩いているときまで本が離せない

ストーリーは…

主人公ユキの兄が真夏に、まるで生きることを停止したように衰弱死した。


兄の腐乱した遺体の強烈な死臭を嗅いで以来、
(死体の記述が生々しくウプッとなってしまう!
 真夏、暑苦しい部屋で読んだらさらにきつそうだ

ユキは街中で出会う人や友達から、ふと兄の死臭に似たものを
嗅ぎ分けてしまう。また、頻繁に兄の幻覚を見るようになり、
兄がなぜ、衰弱死にいたったのか、
何か自分にメッセージを残してるのではないか、ただの錯覚なのかと
思い悩み、かつての恩人を訪れる。


心理学、精神分析、医学分析などから手がかりをたどっていきながら、

(オカルト的要素もいっぱい出てきて面白い
生前からどうしようもないと思っていた兄の心を
違うフィルターから見えるようになる。そこで直面することとは…


後半は、急展開すぎるゆえ、
「ちょっとちょっとーー」とひいて読んでしまったけど
前半部分(兄の死体、葬式の準備、部屋の掃除、恩師との再会、
クラスメートとの再会)はググーッと引き込まれるようにして読める
人物描写が細かく、合理的に考察しようとするが
説明不可能な現象や感覚に悩まされるユキの葛藤も生々しく伝わってくる。

転移、逆転移、分裂症など心理学用語や、
ユタ、シャーマン、シャーマニズムなど精神世界用語が頻出で
ちょっと調べてみたくなった。

…とさっそく、帰り道にユングの中古本を購入してみたけど
ちょびっと読めばネムタイ〜 こりゃこりゃ。

「適当教訓」高田純次 

2008-02-07 01:03:51
同僚氏となにかの話をしていて「高田純次、まぁまぁ好きですよ」と
言うと「え!!!」とビックリされて後にひけなくなった。
好きか嫌いかで言うと「好き」の部類に入るか、いや、うーん、知らん!…な
程度なのに何が「まぁまぁ好き」なんでしょう

きっと、この本を出会うべくして、口をついて出たのでしょう。にょほほ。
翌日、これ面白いんですよ、とかしてくれたのが
適当教訓」という高田純次の本。



高田さんが老若男女の悩みを一挙両断!しているのだが、
たまにちょっぴりいいことも言うてるけど、たまげるほど適当で、
ここまで適当に答えられるのも一流の芸風なんかしら!?
このテキトウさ加減に愛さえ見えてくる、高田マジック…
そもそもの悩み元は何やったのか読むほうも煙に巻かれてしまう。

悩みも、シリアスなものにまぎれてこんなんも。

「墓の色を黒にするか灰色にするかで悩んでいる。高田どうすればいい?
75歳 自営業」

それに対し、高田さんは

「オレんちのはグレーだから、グレーにしとけば。グレーだとオーストラリアの
石で安いのがあるんだよ。…(中略)革命的にいくなら真っ赤とかにしてほしいね。
石屋に頼んだらきっと「ほかをあたってくれ」とさとされると思うけど」

あっさり解決! しかも、オレんちのがグレーだからと。
私、こういうの好きです。ぷぷ。

途中ハッとしたのが
「今、だいたい人生80年でしょ。
80年っていったら約3万日しか生きられないんだよ!」
という箇所。
3万日ってえらく少なく感じる!

とびっくりしつつ、あとがきまで一気に読むと。

「家族はねぇ、女房が去年他界して、密葬というか、身内だけでお葬式したのよ。
…(中略)これから三人でね、生きていこうかなと……。
でも一つ困ったことが、女房はまだ生きてたのよ(笑)。今の話はウソだよウソ!
女房はまだピンピンしちゃってるよ!わははははは!」


……。一瞬動揺したのに。
「80年っていったら約3万日しか生きられないんだよ!」
発言を確認しといた方がいいかな、と
365×80と電卓はじけば「29,200」。約3万日で間違いありません

こんな感じで、だまくらかされかと思えば、急に真意をついていたり、
心をつくような発言もあるので、おちおちしておられない
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