野村萬斎&尾上菊之助・出演/蜷川幸雄・演出『わが魂は輝く水なり』Bunkamuraシアターコクーン [2008年05月14日(水)]
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こんなこと書くと、ちょっと誤解を受けるかもしれませんが、このしち難しそうなタイトルとは対照的に面白い芝居でした。
主演をつとめるのは、狂言界のプリンス・野村萬斎さんと、歌舞伎界のプリンス・尾上菊之助さん。 どんな高尚な舞台になってしまうのだろうと、じつはちょっと身構えていたりもして。 でも、蓋を開けてみれば、高尚で難解な舞台ではなく、もっともっとストレートに戯曲の面白さを伝えてくれるドラマでありました。 ![]() もちろん、蜷川さんらしい華やかで目を引く舞台美術は見ごたえたっぷり。 とくに、冒頭の死屍累々の戦場の場面から一転、背景を覆い尽くすほどの満開の桜の華やかさにハッとさせられました。 舞台のセットが豪華であればいい、とは思わないけれど、こういうところで観客の目を心を惹き付ける演出は、演劇好き以外の観客たちもちゃんと相手にしている蜷川さんのすごいところだと思っております。 |
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源平騒乱の時代。平家の武将・斎藤実盛(野村萬斎)は、老齢の身をおして戦場に身を置き続ける。
彼の息子で兄の五郎(尾上菊之助)は、源氏の武将・木曽義仲の軍につくが、不慮の死をとげ、いまは幽霊となって父の傍を離れようとしない。 そして、もうひとりの息子・弟の六郎(坂東亀三郎)もまた木曽軍に寝返るが、そんな彼が目の当たりにしたのは、狂人となった木曽義仲に成り代わり木曽軍を率いる巴(秋山奈津子)の姿だった。 木曽義仲の軍は、義仲という存在を失ってなお、その亡霊を見続けるかのごとく義仲に執着し続ける。 義仲を名乗り、非情な戦法で平家軍を追い込んでゆく巴。 義仲を狂人と見なす巴に反発し、義仲を慕い続けるふぶき。 誰が本当の狂人で、誰が本当に正気なのか、わからない。 しかしだからといって、人と人とが殺し合う戦場において果たしてまともな精神である必要があるのかどうか。 滅びることを怖れない木曽軍の破壊的な強さは、同時に自軍をも滅ぼしてゆく。 戦争というのは、いつの時代も、どんな場面でも、どこかに狂気を孕んでいるものなのだと思う。 それが、どんなに正当性を主張しても、だ。 そして、浮き彫りになってくるのは、どうしようもなく人間に迫り来る“老い”というテーマ。 老いた実盛と、息子たちとの間にある意識の差。 それは、数百年前も現代もなんら変わりはないんだな、と思う。 実盛が若い頃にそうしたように、息子たちもまた、野望と情熱とが赴くままに突き進む。 そうして歴史は作られ、そうして時代は変わっていくんだなー。 先人からみれば、無謀だし浅はかでもある。でもそんな浅はかさもまた、愛おしい。 展開の中心となるのは、老いてもなお武将としての人生を全うしようとする父と、そんな父を見守り続ける息子との丁々発止のやりとり。 老け役を演じる萬斎さんは、最初こそちょっと無理を感じたけれど、観てゆくうちに違和感を感じなくなっていました。 それよりも、年をとってもなお若い武士たちと肩を並べようとする実盛の気持ちのうえでの若々しさ、身体は衰えてもなお前に進もうとする精神力の強さ、熱情の大きさがくっきりと見えて、それがとってもチャーミング。 そんな萬斎さんに対する菊之助さんも、幽霊らしいというかすでに現世への未練を捨てた者ゆえの飄々とした軽やかさがあって、ふたりのやりとりには思わずクスッとしてしまうところが各所に。 本来ならば、重たいテーマを扱った物語でありながらも、重々しいだけで退屈な演出に終始しないところが好ましかった。 そして、秋山奈津子さん、長谷川博己さん、このおふたりもまた素晴らしかったです。 美しい女性として登場したと思ったら、その後すぐにキリリとした若武者姿で登場する秋山さん。 その力強さ、その真っ直ぐさ、そして冷徹さと優しさ。 それをすべて表現できるのは、この人しかいなかったんじゃないか、と思うくらい。 後半にむけて、徐々に徐々に狂気の度合いが強まりゾクリとする一方で、またひときわ美しさも増し、その存在感の大きさはさすが、でした。 長谷川さんは、正直、ちょっとびっくりしたんですよ、こんな引き出しも持っている人なんだ、ってことにちょっとオドロキ。 なんだかね、長谷川さん演じる平維盛のトボケっぷりが妙におかしいんです。 真面目で一本気な印象だっただけに、意外でしたし、その抜けた感じがとてもよかった。 こういう役にこの人を持ってくる、っていう人の配置も蜷川さんって上手な演出家さんだなーとあらためて。 そんなこんなで、この作品、このキャスティングで、思いの外にエンターテインメントな舞台でした。 公演は、5月27日(火)まで。 BunkamuraのHP:http://www.bunkamura.co.jp/ |




