ONEOR8(田村孝裕・作演出/田中直樹(ココリコ)出演)『莫逆の犬』THEATER/TOPS [2008年04月28日(月)]
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このごろ、悲惨な事件が次々と報道されています。
その度にニュースやワイドショーが大きく取り上げ、犯人の人物像や事件の背景などを詳細に放送しております。 しかし、事件を起こしたという先入観があるゆえに、見えなくなってしまうものもきっとあるはず、と思う。 いま脚本家として注目されている田村さんの最新作は、大人しくて人のいい男だが、ある日カッとなって母を殺してしまった一郎(田中直樹)と、彼を庇って部屋に住まわせている恋人の美月(和田ひろ子)との10年に渡る生活を断片的に描いたもの。 美月の家に来て以来、一度も外へ出ようとしない一郎。 最初の頃こそ発覚を怖れながらもふたりの生活に満足していた美月。 しかし、部屋を訪れる美月の弟・照実(関川太郎)や、その会社の先輩たち、美月の職場の同僚・りょう(冨田直美)や八雲(恩田隆一)らとの関わりのなかで、ふたりの関係が次第に変化してゆく。 タイトルの“莫逆”とは、goo辞書によれば「互いに争うことがない親しい間柄。また、親しい友」だそうです。 莫逆の犬とは、毎日のように部屋で恋人の帰りを待ち、恋人が与える食事を食べるだけの存在、一郎のこと、なんですね。 逮捕を恐れて美月の家から一歩も外へ出ずに暮らしている一郎のことを、あるとき美月が「これじゃ、刑務所と同じじゃない」と言い、それを聞いた一郎の父親(小林隆)は、「同じじゃない、美月さんが一緒じゃないか」と返すシーンがある。 でも、それは本当は美月自身が自分に投げかけていた言葉なのかもしれない、と思う。 犯罪を犯してしまった人のいい恋人、という綱に繋がれて、綱の届く半径数メートルの世界だけしか歩き回れない自分もまた、莫逆の犬なのかもしれない、と。 殺人の生々しさや、警察から逃げ回っていることへの切羽詰まった空気はどこにもない。 ただ、作品にずっとまとわりつくのは、どことなく不穏な空気。 それが真綿のようにじわりじわりと劇場を閉塞感で包み、ラストに残るのは大きな空虚感だ。 ラストは切なくてやりきれなかったなー。 脱力したように窓に背を向けて座る田中さんの姿が、その切なさを一掃感じさせてくれます。 映画やドラマで観ていて、芝居も上手い人なんだなーと思っていたのですが、舞台でも不思議な匂いを放っていてとてもよかったです。 普段はいい人、を演じることが多いですし、この作品でも基本的にはそういう役なのですが、どこか狂気を孕んでいるようなところを感じさせてくれます。 物語としては、警察の追跡にさして怯えていない彼らに違和感を覚える部分もありましたけれど、ラストの暗転後の父親がドアを叩く場面などは、うまいなーと思いました。 田中さんのシーンで終わりかと思っていたけれど、あのシーンがあることで、田中さん&小林さんの演じる親子の、愚かなほどの美月への依存ぶりが如実に見えてきて、より憐れで情けなくて切ないラストになっておりました。 でもそれだけに、もっともっと田中さんに焦点を当ててよかったのではとも。 美月と一郎、両方に焦点を当てているがゆえに、心理的に入り込めない部分もあったのは事実。 美月が一郎との日々を「思い出がない」と言っておりましたが、私は日常の何気ない出来事ほど思い出になると思うんだよなー。 「外に出られない」「一緒に出掛けられない」ことよりも、匿ってもらっているという負い目から、“恋人じゃなくペット”になってしまったことの方が切ないはずなのに。 公演は残念ながら終了。ただ、公演中にムービーが入ったようなので、シアターテレビジョンで放送されるか、DVD発売になるのかもしれませんね。 ONEOR8のHP:http://homepage2.nifty.com/oneor8/ |



