昼も夜も芝居づけ

2008年04月
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
劇団青年座(赤堀雅秋・脚本/黒岩亮・演出)『ねずみ男』下北沢/本多劇場 [2008年04月20日(日)]
青年座といえば、結成から50年以上を数える老舗劇団ですが、ここのところ若手の注目作家たちとのコラボレーションを積極的に行っています。
じつは昨年、MONOの土田英生さんが書いた『悔しい女』を拝見したんですが、MONOで観るのとはまた違った、いい味わいがあって楽しめたものです。

そんな期待感があって、今回の赤堀作品も拝見させていただきました。
いやいや、なかなかに赤堀さんらしいほの暗いトーンの興味深い作品でした。

小さな自転車店を営む男(山本龍二)は、とある女性(野々村のん)を誘拐・監禁する。
その日は、男の娘(もたい陽子)の誕生日。彼女は、3年前に家を出て行ったまま。
じつはその日のちょうど3年前、男の妻(津田真澄)が自殺していた。
そして女性は、3年前に男の妻を万引きで捕まえた、スーパーの店員だった。

現在と妻が自殺した3年前の今日とが、入り乱れて展開する物語。
男は終始、うつろで暗い瞳で、3年前の妻を、そして誘拐した女を見つめ続ける。
そして女は、明らかに逆恨みされていると知りながらもけっして逃げようとはせず、3年前の妻は、まるで自殺するような素振りすら見えない。

物語が進むにつれて見えてくるのは、それぞれが抱えるぼんやりとした心の闇。
それは、不安だったり不審だったり、ちょっとした絶望だったり。
傍から見れば「誰もが抱える程度の…」と見えてしまうかもしれない。
でも、そんな闇にからめ捕られてしまった時、引き上げてくれる手がなかったら、そのまま堕ちていってしまうことは簡単だ。
妻の自殺の理由もまた、不意に訪れた闇にからめ捕られてしまったんだと思う。

男は、監禁した女に妻と同じ闇を見つけ、不意に妻が自殺した訳を知る。
ラストの展開に、こみ上げてくるものがあった。
そうなんだよね。闇に引き込まれそうになっている時、闇から救い出してくれるのは人の温もりだったりするんだよね。
誰でもいい。「いまこの世にあなたが必要だ」と言ってくれる人であれば誰でも。
でもしっかりと手を伸ばして、堕ちゆく闇から救い出して欲しいと思っているんだよね。
私は基本的にはポジティブシンキングな人間だと思う。
どちらかというとポジティブすぎるくらい。
それでも、ふと闇に堕ちることがある。
理由なんて本当にたいしたことはなく、「ただなんとなく未来を憂いている」だけだったり。
そんなとき、そんな私に気付いてか偶然か、誰かが電話をかけてくれたり、メールをくれたりする人がいる。
「ああ、大丈夫。ちゃんと私の存在を気にかけてくれる人がいる」。
そう思うだけで、ちょっと闇から上昇できる。ありがたいことです。

今回、SHAMPOO HATの公演ではなく、青年団に書き下ろした作品ということで、普段の赤堀さんの作品とは少し空気感の違う、もうちょっと硬質な手触りの舞台でした。
でも、いわゆるSHAMPOO HATっぽさを排したことで、より戯曲の輪郭がくっきりとして見えたような気がします。

劇団の座付き作家というと、やはりどうしても劇団員の得意技を生かした戯曲になってしまうだろうし、ある意味、劇団員の個性を生かすという意味では正解ではあると思います。
もちろん、それゆえに戯曲のおもしろさが生きる、ということもまたあるわけです。
が、ときに作家のクセ、作家の“おもしろがり”を、戯曲に書かれている以上に汲み取って、“らしい”芝居を意図せずに作ってしまうこともある訳ですよね。
そんな意味で、青年座のしっかりと訓練された芝居のできる役者さんたちが演じることで、雰囲気だけではない、作品のよさがシンプルに伝わってきた気がします。

この青年座と若手作家とのコラボレーションの舞台、またあったらぜひ観たいと思った次第です。
この記事のURL

http://www.cafeblo.com/theater/archive/119
トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://www.cafeblo.com/theater/tb_ping/119/-DeEYn.uEVzQJGJcwbU6rva7a3usA

コメントする

名前:
Email:
URL:
クッキーに保存
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク

コメント


Posted by:掲示板  at 2008年10月04日(土) 12:54
プロフィール
プロフィール
望月リサ。ライター。女性誌やWebサイトでインタビューやカルチャー関連の記事を担当。締め切り間際でも観たい舞台は絶対にハズさないステージフリーク! 「ライブじゃなきゃ味わえないこと、いっぱいあります。ハマるとこんなにすばらしいものはないです。劇場にもっともっと足を運びましょっ。」
ネットワーク (0)
http://www.cafeblo.com/theater/index1_0.rdf