カフェブロトップへ
注目キーワード  コンビネゾン スパンコールカーデ / 【今週のプレゼント】しっとり!ハンドクリーム

クレジットカード的SEO対策

クレジットカードについて書きます。

仕様が無い」とは仕様が無い
『「仕様が無い」とは仕様が無い。それこそ仕様が無いぢやないか。』
『だツて、実際仕様が無いから喃。』
『然し君は大分苦い顔をして居るぜ。一体その顔は不可よ。笑ふなら腸まで見える様に口をあかなくちや不可。怒るなら男らしく真赤になツて怒るさ。そんな顔付は側で見てるさへ気の毒だ。そら、そら、段々苦くなツてくる。宛然洋盃に一昨日注いだビールの様だ。仕様のない顔だよ。』
『馬鹿な。君は怎[#「怎」は底本では「恁」]も、実際仕様がない。』
『復「仕様がない」か。アハヽヽヽ。仕様がない喃。』
 話が間断れると、ザザーツといふ浪の音が、急に高くなる。楠野君は、二人の諍ひを聞くでもなく、聞かぬでもなく、横になツた儘で、紙莨を吹かし乍ら、浪の穂頭を見渡して居る。鼻から出る煙は、一寸許りのところで、チヨイと渦を巻いて、忽ち海風に散ツてゆく。浪は相不変、活動写真の舞踏の歩調で、重り重り沖から寄せて来ては、雪の舌を銀の歯車の様にグルグルと捲いて、ザザーツと怒鳴り散らして颯と退く。退いた跡には、シーツと音して、潮の気がえならぬ強い薫を撒く。


...続きを読む
2012年5月25日(金) 10:48 [ ]
この記事のURL / /
明治四十三年九月
 明治四十三年九月、わたくしは刑期が滿ちて千葉監獄を出ました。通信で仄かにそれと察してはゐたのであるが、大逆事件を聞いてちよつと驚きました。迎へに來てくれた渡邊政太郎君その他の人々は、わたしが意外に元氣であつたのを喜んでくれました。入獄前に亡母を葬るべく寒い夜中に貸車内の遺骸を守つて埼玉縣本庄驛まで行つたが、それが凍るやうな寒さであつたので、わたしはひどい風邪に罹りました。入獄の際も咳がはげしく、毛細氣管支炎をわづらつてゐたので友人達は非常に氣づかつて迎へてくれたのでした。その病氣はまだ全治したわけではないが、兎も角も元氣で出獄し得たのは吾も人もうれしかつたのです。
 出獄すると間もなく、家宅搜索がやつてきました。幸徳等の大逆事件に關連した取り調べであつたのです。手紙その他の書類を車に載せて持つて行き、同時に私も警視廳に引つぱられました。

...続きを読む
2012年5月20日(日) 23:18 [ ]
この記事のURL / /
どうです。これがふたりの女の話でした
「まあついでだからいいますがね。」と、幸福のおそばづかえのそのまた召使は話しました。「きょうはわたしの誕生日なのですよ。それでそのお祝いに、ご主人からうわおいぐつを一足あずけられました。そしてそれを人間のなかま[#「なかま」は底本では「なまか」]にやってくれというのです。そのうわおいぐつにはひとつの徳があって、それをはいたものはたちまち、だれでもじぶんがいちばん住んでみたいとおもう時代なり場所なりへ、はこんで行ってもらえて、その時代なり場所なりについて、のぞんでいたことがさっそくにかなうのです。そういうわけで、人間もどうやら、この世の中ながら幸福になれるのでしょう。」
 こういうと心配の妖女が、
「いや、お待ちなさいよ。そのうわおいぐつをはいた人は、きっとずいぶんふしあわせになるでしょうよ。そしてまた、はやくそれをぬぎたいとあせるようになるでしょうよ。」といいました。
「まあそこまではおもわなくても。」と、もうひとりがふふくらしくいいました。「さあ、それでは幸福のうわおいぐつを、ここの戸口におきますよ。だれかがまちがってひっかけていって、いやでも、すぐと幸福な人間になるでしょう。」
 どうです。これがふたりの女の話でした。

...続きを読む
2012年5月18日(金) 15:44 [ ]
この記事のURL / /
最近二〇年間に
 最近二〇年間に熱輻射の本性に関する我々の知識は非常に豊富になった。その中でもステファン(Stefan[#「Stefan」は底本では「Stephan」])及びウィーン(Wien)の発見した法則は最も重要なものである。前者の法則によれば、外からの輻射を全く反射せずまた通過させない物体が自分自身で輻射する熱量はその物体の絶対温度(すなわち、摂氏零下二七三度を基点として数えた温度)の四乗に比例する。また後者の法則はこのような物体の出す全体の輻射が種々なスペクトルの色に相当する熱輻射のいろいろの種類からいかに構成されているかを教えるものである。前者の法則を使えば固体の皮殻をかぶっている遊星や衛星の温度を計算することができる。これを始めて計算したのがクリスチアンゼン(Christiansen)である。ある遊星あるいは衛星が太陽から受取っている熱量は知られている。

...続きを読む
2012年5月17日(木) 08:59 [ ]
この記事のURL / /
クララはいつの間にか男の裸体と
 クララはいつの間にか男の裸体と相対している事も忘れて、フランシスを見やっていた。フランシスは「眼をあげて見よ」というと同時に祭壇に安置された十字架聖像を恭しく指した。十字架上の基督は痛ましくも痩せこけた裸形のままで会衆を見下ろしていた。二十八のフランシスは何所といって際立って人眼を引くような容貌を持っていなかったが、祈祷と、断食と、労働のためにやつれた姿は、霊化した彼れの心をそのまま写し出していた。長い説教ではなかったが神の愛、貧窮の祝福などを語って彼がアーメンといって口をつぐんだ時には、人々の愛心がどん底からゆすりあげられて思わず互に固い握手をしてすすり泣いていた。クララは人々の泣くようには泣かなかった。彼女は自分の眼が燃えるように思った。

...続きを読む
2012年5月13日(日) 22:02 [ ]
この記事のURL / /
クララの回想とはその時の事である
 クララの回想とはその時の事である。クララはやはりこの堂母のこの座席に坐っていた。着物を重ねても寒い秋寒に講壇には真裸なレオというフランシスの伴侶が立っていた。男も女もこの奇異な裸形に奇異な場所で出遇って笑いくずれぬものはなかった。卑しい身分の女などはあからさまに卑猥な言葉をその若い道士に投げつけた。道士は凡ての反感に打克つだけの熱意を以て語ろうとしたが、それには未だ少し信仰が足りないように見えた。クララは顔を上げ得なかった。
 そこにフランシスがこれも裸形のままで這入って来てレオに代って講壇に登った。クララはなお顔を得上げなかった。
「神、その独子、聖霊及び基督の御弟子の頭なる法皇の御許によって、末世の罪人、神の召によって人を喜ばす軽業師なるフランシスが善良なアッシジの市民に告げる。フランシスは今日教友のレオに堂母で説教するようにといった。レオは神を語るだけの弁才を神から授っていないと拒んだ。フランシスはそれなら裸になって行って、体で説教しろといった。レオは雄々しくも裸かになって出て行った。さてレオが去った後、レオにかかる苦行を強いながら、何事もなげに居残ったこのフランシスを神は厳しく鞭ち給うた。眼ある者は見よ。懺悔したフランシスは諸君の前に立つ。諸君はフランシスの裸形を憐まるるか。しからば諸君が眼を注いで見ねばならぬものが彼所にある。眼あるものは更に眼をあげて見よ」


...続きを読む
2012年5月13日(日) 22:00 [ ]
この記事のURL / /
 今朝の夢で見た通り
 今朝の夢で見た通り、十歳の時眼のあたり目撃した、ベルナルドーネのフランシスの面影はその後クララの心を離れなくなった。フランシスが狂気になったという噂さも、父から勘当を受けて乞食の群に加わったという風聞も、クララの乙女心を不思議に強く打って響いた。フランシスの事になるとシッフィ家の人々は父から下女の末に至るまで、いい笑い草にした。クララはそういう雑言を耳にする度に、自分でそんな事を口走ったように顔を赤らめた。
 クララが十六歳の夏であった、フランシスが十二人の伴侶と羅馬に行って、イノセント三世から、基督を模範にして生活する事と、寺院で説教する事との印可を受けて帰ったのは。この事があってからアッシジの人々のフランシスに対する態度は急に変った。ある秋の末にクララが思い切ってその説教を聞きたいと父に歎願した時にも、父は物好きな奴だといったばかりで別にとめはしなかった。

...続きを読む
2012年5月13日(日) 21:59 [ ]
この記事のURL / /
又親ってものがお前不思議だってえのは
 又親ってものがお前不思議だってえのは、娘を持つと矢っ張りそんな気にならあ。己れにした処がまあカチヤには何よりべらべらしたものを着せて、頬っぺたの肉が好い色になるものでも食わせて、通りすがりの奴等が何処の御新造だろう位の事を云って振り向く様にしてくれりゃ、宿六はちっとやそっとへし曲って居ても構わ無えと思う様になるんだ。
 それでもイフヒムとカチヤが水入らずになれ合って居た間は、己れだって口を出すがものは無え、黙って居たのよ。すると不図娘の奴が妙に鬱ぎ出しやがった。鬱ぐもおかしい、そう仰山なんじゃ無えが、何かこう頭の中で円い玉でもぐるぐる廻して見て居る様な面付をして居やあがる。変だなと思ってる中に、一週間もすると、奴の身の周りが追々綺麗になるんだ。晩飯でも食って出懸ける所を見ると、お前、頭にお前、造花なんぞさして居やあがる。何処からか指輪が来ると云うあんばいで、仕事も休みがちで遊びまわるんだ。偶にゃ大層も無え。お袋に土産なんぞ持って来やあがる。イフヒムといがみ合った様な噂もちょくちょく聞くから、貢ぐのは野郎じゃ無くって、これはてっきり外に出来たなとそう思ったんだ。そんなあんばいで半年も経った頃、藪から棒に会計のグリゴリー・ペトニコフが人を入れて、カチヤを囲いたい、話に乗ってくれと斯うだ。



...続きを読む
2012年5月13日(日) 21:05 [ ]
この記事のURL / /
葉子の声はますます震えた
神経の末梢が大風にあったようにざわざわと小気味わるく騒ぎ立った。心臓が息気苦しいほど時々働きを止めた。
 やがて芳芬の激しい薬滴が布の上にたらされた。葉子は両手の脈所を医員に取られながら、その香いを薄気味わるくかいだ。
「ひとーつ」
 執刀者が鈍い声でこういった。
「ひとーつ」
 葉子のそれに応ずる声は激しく震えていた。
「ふたーつ」
 葉子は生命の尊さをしみじみと思い知った。死もしくは死の隣へまでの不思議な冒険……そう思うと血は凍るかと疑われた。
「ふたーつ」
 葉子の声はますます震えた。こうして数を読んで行くうちに、頭の中がしんしんと冴えるようになって行ったと思うと、世の中がひとりでに遠のくように思えた。葉子は我慢ができなかった。いきなり右手を振りほどいて力任せに口の所を掻い払った。しかし医員の力はすぐ葉子の自由を奪ってしまった。葉子は確かにそれにあらがっているつもりだった。
「倉地が生きている間――死ぬものか、……どうしてももう一度その胸に……やめてください。狂気で死ぬとも殺されたくはない。やめて……人殺し」
 そう思ったのかいったのか、自分ながらどっちとも定めかねながら葉子はもだえた。
「生きる生きる……死ぬのはいやだ……人殺し!……」
 葉子は力のあらん限り戦った、医者とも薬とも……運命とも……葉子は永久に戦った。しかし葉子は二十も数を読まないうちに、死んだ者同様に意識なく医員らの目の前に横たわっていたのだ。

...続きを読む
2012年5月10日(木) 22:24 [ ]
この記事のURL / /
まっ白な手術衣を着た医員や看護婦に囲まれて
 まっ白な手術衣を着た医員や看護婦に囲まれて、やはりまっ白な手術台は墓場のように葉子を待っていた。そこに近づくと葉子はわれにもなく急におびえが出た。思いきり鋭利なメスで手ぎわよく切り取ってしまったらさぞさっぱりするだろうと思っていた腰部の鈍痛も、急に痛みが止まってしまって、からだ全体がしびれるようにしゃちこばって冷や汗が額にも手にもしとどに流れた。葉子はただ一つの慰藉のようにつやを顧みた。そのつやの励ますような顔をただ一つのたよりにして、細かく震えながら仰向けに冷やっとする手術台に横たわった。
 医員の一人が白布の口あてを口から鼻の上にあてがった。それだけで葉子はもう息気がつまるほどの思いをした。そのくせ目は妙にさえて目の前に見る天井板の細かい木理までが動いて走るようにながめられた。

...続きを読む
2012年5月10日(木) 22:23 [ ]
この記事のURL / /


<< 2012年5月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ
日別アーカイブ
最新記事
cafebloトップへ
ブログ管理画面へ