少女の頃、私が憧れた外国の土地は、アフリカの国々とイスラエルにある“死海”でした。
縁があって、いま私はアフリカに住んでいますが、今回はイスラエルでの仕事の合間の半日の休日を使って、この憧れの“死海”に行ってきました。
さて、死海のお話しの前に、今回の目的地のひとつ、イスラエルのことを少しお話ししましょう。
ご存じのように、イスラエルはその建国の歴史の関係で、近隣のアラブ諸国と緊張状態にあります。イスラエルの基本情報は
こちらからどうぞ。
イスラエルと国交を樹立していない国々のほとんどで、イスラエルの土地を踏んだ外国人の入国を認めていません。
つまり、パスポートにイスラエルの入国スタンプがあったら、他のアラブの国からは入国拒否されてしまう可能性があるのです。また、アラブの国のスタンプがあったら、イスラエルに入国できるかどうかは、これまた微妙なものがあるようです。
現在、アラブ首長国連邦のドバイなどは、イスラエルの入国スタンプがあっても例外的に入国が認められるようです。でも、これはかなり国際政治的な絡みが強いので、こういった状態がいつまで続くのかは分かりません。
しかし、この慣例は今に始まったことではないので、いろいろな抜け道があります。
一番簡単なのは、イスラエルの入国時に、「入国スタンプをパスポートではなくて、別の紙に押してください」と申し出ればいいのです。
私がこうお願いすると、若い女性の入国管理官は慣れている様子で、何の質問もなく、スタンプを別紙に押してくれました。その後、その紙を別の関係者がばりばり、とパスポートからひきはがしてしまいました。
これにはちょっとがっかり。その“別紙”に押された入国スタンプをせめて写真でも写しておけばよかったと思いました。
今回、イスラエルに到着する前の経由地はパリでした。
パリのシャルルドゴール空港のエアーフランスは、通常であれば、機械でチェックインができます。
ところが、目的地を「テルアビブ」と押すだけで、機械がそこでストップ。
「この行き先は、この機会ではチェックインできません」
というメッセージが出てきます。
係員に質問すると、どう考えても過剰で攻撃的な反応が返ってきます。
「私たちは航空会社です。イスラエルの入国には特別なセキュリティチェックが必要なのです」
時間が迫っていることもあり、多くの人がいらだち気味。
そうしているうちに、ようやくチェックインの前のパスポートの検査が始まりました。私の前にいた、子ども連れの家族の父親がチェックインの前に、パスポート検査でどうやら「渡行不可」の判断が出た様子……。
どこの国、といった詳しい情報は聞こえなかったのですが、どうやら彼のパスポートにはアラブの国のスタンプがあったようです。
こんなことを目のあたりにすると、さすがに、イスラエルとアラブの国々との緊張関係が身近に感じられました。
さて、そんなパリでの複雑な感情を抱えながら、飛行機はテルアビブへ。飛行時間は、5時間足らずでほんの一っ飛びです。
テルアビブの入国も無事に済ませ、タクシーで街に向かいました。
テルアビスの街中にたくさんあるジュース屋さん
新鮮なジュースを手絞りで。大きめのカップで250円。
今回は南アでものすごくアポ取りに時間を費やしたのですが、連絡がついたサッカー関係者の皆さん、どうも、ものすごくのんびりしていて、おっしゃることは、
「テルアビブに着いたら電話してください」
なので、私は一刻も早くホテルに落ち着き、イスラエルのSIMカードを買って自分の携帯の南アのSIMカードと交換して、ミーティングの時間をセットしなくてはいけません。
このSIMカードとは、携帯電話に挿入するチップのことで、これを入れ替えれば、少なくてもアフリカ、欧州、米国などで、自分の携帯電話がそのまま使えます。これをすることによって、高いローミング料金を払わなくてもいいのです。
日本でもこれができるといいのですが、どうやら日本ではまだこれは一般的ではないようです。どこからの携帯電話会社がこのサービスを始めた、という話を聞いたことはあるのですが、いまどうなっているかは分かりません。
今回の出張で、イスラエルの滞在は一番長くて、八泊九日。でも、イスラエル国内をいろいろと移動するので、そうのんびりはしていられないのです。
それでも、なんとか、奇跡的にそれぞれのミーティングをセットして、クラブを訪問したり、試合を見せてもらったり、となかなか充実したビジネスに発展しています。
そんな中、ぽっかりと空いた半日。地図で場所を確かめてみると、私の子どものころからの憧れの土地、“死海”がその日滞在していた Beer Sheva の街から一時間半ほどのところにあったのです。
この機会を逃すわけにはいきません。一生懸命、車を走らせ、行ってきました。
死海は、世界でもっとも“低い”位置にある土地で、海抜マイナス400メートル、塩分、ミネラルが高密度を保っているため魚などの生き物は生息できません。塩分など、地中海のそれと比べると10倍も濃度が濃いのです。
しかし、今回、私はこれだけ憧れ続けた“死海”の近くに行くというのに、バスタオルなどを一切持参しなかった!という大失態!
それでも、私の目の前で、その塩分が強いために、何もしなくても水に浮く、という噂に違わぬことを楽しんでいるカップルに、
「私のタオルを貸してあげるから、絶対に入りなさい!」
と勧められて、大喜びで“死海”に入りました。
その水はものすごくしょっぱくて、苦くて、無防備にぺろぺろと水をなめていたら、このタオルを貸してくれたカップルに、
「気をつけて!水を顔につけたら駄目よ!目にダメージが起きるのよ!」
とアドバイスを受けました。
確かに、水着を通してでも、感じることのできる塩分のきつ~い水でした。でも、この水はミネラルが豊富で、傷や内科の病気も治す作用もあるとか。
日本だったら、これは湯治場ならぬ、湯治海となっているはずです。
でも、ここイスラエルでは、大きなホテルは点在するものの、他にさしたる観光地ぽいものはなく、いたって閑散としたムードが漂っていました。
私は聖書のモーゼスのことやら、エジプト人、イスラエル人、死んでいった人たち、生きている人たちのエネルギーを身体に感じながら、少女の頃からの憧れだった“死海”で、何の努力もしないのに身体が水に浮く、というその不思議を体感していました。