ジンバブウエ、歴史的連立政権樹立! [2008年09月16日(火)]
|
いま、南部アフリカの政治が大きく動こうとしています。
以前、『ジンバブウエのデモクラシーが抹殺された日』として、南アの隣国ジンバブウエでの大統領選挙に関する動きをお伝えしました。 最大野党の党首・ツァンギライ議長が、政府与党及び警察から、自分の支持者が多数暴行(死者も多数)を受けたことに抗議し、決選投票参加を拒否したのです。実は、彼は最初の投票では過半数には届かなかったものの、投票数では現職のムガベ氏に勝っていたのです。 その後、ムガベ大統領がツァンギライ議長の決選選挙拒否も無視し、大統領選を強行し、国際社会からのごうごうたる非難を受けていました。 ![]() 左がツァンギライ氏、右がムガベ氏 この状況を打開すべく、南部アフリカの国々や国連のサポートを受け、南アフリカの現大統領、ターボ・ムベキ氏を仲介役として、ここ数カ月、場所を変えながらも頻繁に会議が開かれていました。それが、ついに、ここにきて現大統領であるムガベ氏とツバンギライ議長が連立政権を組むことで同意したのです。28年も続いた独裁政治に終止符が打たれたのです。 2008年9月15日、南アのニュース報道では朝からこの調印式の様子をジンバブウエのハラレから生中継で放送していました。 合意の内容として、ムガベ大統領は現職を維持、しかし、かなり権力は縮小されるようです。ツァンギライ議長は、新設の首相となります。また、もう一人、野党から、ムタンバラ氏が副首相に就任しました。 それぞれの権力分配としては、ムガベ氏が軍の指揮権限をそのまま維持して内閣を管轄します。その一方、ツァンギライ氏は、首相として、警察指揮権限を含む行政をとりまとめ、内閣を監督する「閣僚会議」の議長を務めるそうです。ツァンギライ氏の政党を激しく攻撃していた警察が彼の支配下になるのは、かなり混乱も起きそうです。また、ムガベ氏がこれまで同様、いまだに軍隊のトップであることも注意が必要です。 この三人のそれぞれの受諾スピーチを生中継で聞いていました。新しく就任した二人は、「過去の戦いは捨てて一緒に新しいジンバブウェを建国しよう」という、まっとうな、きっぱりとした順当な内容でした。 が、う〜ん、ムガベ氏、相変わらずの欧米批判と「アフリカの問題はアフリカで解決する、植民地主義の欧米の奴らの思い通りにはさせん」と、延々と持論をぶち上げています。カメラは所在なげに、この調印式の様子をだらだらと流していましたが、ムガベ氏の脱線ぶりには壇上に上がっている仲介役の南アの大統領・ムベキ氏も苦しみの表情でした。 ![]() ハラレからの生中継 ジンバブウェの経済を立て直すには、欧米を含む国際社会の援助が絶対不可欠なのに、まだ、欧米をそこまで敵視した発言を繰り返していたら、立場がない人がたくさんいるのですが……。ムガベ氏はそんなことはどこ吹く風。でも、これを「失言」として問題視するのではなく、そのままムガベ氏の言いたいことを、「まあ、言いたいんだろう」と容認しておくあたりが、アフリカ政治のおもしろいところかもしれません。 しかし、これまで、政敵として激しく戦ってきた複数政党が連立政権を組むのですから、そう簡単に事が進むと思いません。が、会場にはせ参じているのは、アフリカ連合(AU)や南部アフリカの各国の首脳たちです。いかにこの連立政権の誕生が大きなニュースであるかがわかります。どうか、どうか、長年続いたジンバブウェの混乱が収まることを願うのみです。天文学的なインフレにも歯止めがつくことを祈るばかりです。 しかし、この調停の大役をやっと無事に終えそうな南アのムベキ大統領もほっとしている状況ではないのです。いま、南アでは、来年の選挙前に、ムベキ大統領の首がすげ替えられるかもしれない、との憶測が出ています。 どうしてか? 実は、ムベキ氏は、南アの最大政党、ANC(African National Congress)の党首ではないのです。この党首選挙は去年の12月に行われましたが、この選挙で、彼はジェイコブ・ズマ氏に敗北したのです。ですから、かつてはネルソン・マンデラ氏も党首をしていたANCは、このズマ氏が党首なのです。 ![]() しかし!しかし!このジェイコブ・ズマ氏。いかにも癖のあるアフリカの政治家なのです。 彼は、そもそも、ムベキ大統領の後継者として、副大統領職にあった人物です。が、武器不正取引疑惑があったり、何と、2005年には、知人のHIV・Aidsの活動家をレイプした罪で起訴されたり(後に無罪)、と、華々しいというか、日本だったら、政治生命だって即危うくなるような経歴の持ち主で、ムベキ氏から副大統領職もはく奪されているのです。 が、問題は、先週(2008年9月12日)に出た、2007年になってから起こされた彼の武器不正取引に関する訴追は無効である、という判決です。これは、どうやら、この武器不正取引に関わった賄賂を贈った方が有罪の判決を受け、15年の刑期を受けているのに、賄賂を贈られた方のズマ氏が、贈った側のシェビア・シャイク氏とともに訴追されなかったのは不都合であった、という何とも分かりにくい理由での判決でした。 今回の判決は、判事が、「ズマ氏が無罪か有罪かを判断しているのではない。この訴追が有効であるか、どうかだけだ。今回の訴追は、無効である」ということを繰り返し述べているのが印象的でした。 つまり、限りなく、有罪に近い人なのに、「訴追されるべき時に訴追されなかったから、今頃、訴追してもダメなんだよ」ということ!らしいのです。 私は南アの法律に詳しいわけではないので、この一連の動きを理解するのに苦労しました。それでも、新聞記事やテレビの報道、そして法律家の友人へのインタビューでわかってきたのは以上のことでした。 ここで、問題なのは、この訴追に関し、検察側に現職の大統領、ムベキ氏からの圧力があった、とする今回の判事の指摘です。そもそも、検察側が訴追に踏み切ったのも、ムベキ氏がズマ氏にANCの党首選挙で負けた数日後、というのも何やら疑惑を呼んででいるのです。 そもそも憲法により、2期10年の任期が来年に迫っているムベキ大統領。でも、このままでは、その任期満了の前に、大統領職を追われるかもしれません。 ![]() もう、『ズマ大統領!』の見出しが飛ぶ南アの全国紙 そして、南ア国内の黒人部族の権力争いがこの問題をまたさらに複雑にしているようです。 現大統領のムベキ氏は、元大統領・マンデラ氏と同族のコサ族出身。もともと、コサ族は法律家や医者などを多く輩出するインテリ層が多いといわれているのです。で、このズマ氏は南アの最大黒人部族であるズールー族出身です。ズールー族は狩猟民族で、最後までヨーロッパ人とも戦い抜いた戦闘的な部族と言われます。 コサ族にすると、どうしてもこのズマ氏のことをすんなりと大統領として認めたくないような気分もあるようです。 ズマ氏は、ズールーの文化として伝統的に許されている複数の奥さんがいるし、現在だって、4人目か5人目の奥さんの家族へ結納金を納めている途中でもあります。彼は、故郷に帰るときはヒョウの皮の民族衣装をはおったりして、なかなか、パフォーマンスも上手な民衆政治家なのです。地方に熱狂的なズマ氏の支持者が多いのも彼の特徴です。 しかし、このままで行くと、彼が、遅くとも1年以内には、近代化の路線をまっしぐら!のはずの南アの大統領になるわけですから、「う〜ん」と多くのズールー族以外の南ア人が眉を吊り上げているのも理解できます。 そういえば、彼は、ちょうど『南アの田中角栄』!、と言えばイメージがわくでしょうか。それとも、角栄さん自体がもう日本では忘れ去られているのでしょうか。 ジンバブウェも南アも、これから政治が大きく変化することには間違いありません。 |







