吉村峰子のアフリカに遊びにおいで!

2008年06月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
日本語とお箸 [2008年06月09日(月)]
 
去年の秋ころから始まった何組かの日本語クラスの訓練終了の時期が近づいてきました。私の日本語の生徒さんとその家族には、彼らの日本出発直前に、我が家に来てもらって日本食の食べ方などの特別レッスンをします。

まず、お箸の使い方から。



欧米ではもう普通にお箸を使える人が多くなりましたが、南アフリカではまだまだお箸は“未知との遭遇”に近い人もいます。

これも訓練の一環ですので、簡単なものを食べてもらうわけにはいきません。今日のメニューはてんぷらと冷たいうどんです。別テーブルではダーバン近海で上がったばかりの中トロや庭でとれたアボカドなどがネタの手巻き寿司の実演も。

さて、この冷たいうどんの食べ方は特に大変です。何が大変かというと、“音”を立てながら食べ物を食べる、ということが習慣になっていない人が多いからです。南ア人もほとんどの人が、「食事のときに立てる音は失礼にあたる」という家庭でのしつけを受けてきた場合が多いのです。

日本人からすると、そば・うどん類を、音を立てずに食するのはあまり美味しそうな食べ方ではありません。試してみてくださいね。どんな上品な食べ方をしたとしても、まったく音を立てずに麺類を食するのは、かえって不自然なのです。

しかし!こういうと、中には、
「おおお!これぞ私の出番!」というように、盛大な爆音を立てて麺類をすする人が必ずいるのです。

いえ、いえ、爆音は立てないのです。
それに、爆音を立てると、汁が飛びますよ!

適度なすすりで、適度な音を立てて召し上がれ、と言っても、なかなかコツがつかめません。そこで、日本人登場で、デモンストレーションをするのですが、これがまた、全員に注目されていると、けっこう意識してしまうものです。毎回、咳き込んだり、噴出したり、……日本語の先生も大変です。


そ、そんなに見つめないで欲しいのに……。


次に、南ア人が不安に思うのが、なんとこの食器です。



取っ手のないお茶のみ。

「どこに手を添えるのですか」
「熱くないのですか」
「砂糖を入れるためにはスプーンを頼んでもいいのですか」

といった質問が出ます。最初の二つは実際に熱い緑茶をそそぎ、それを飲んでもらいながら説明します。

最後の質問にはもちろん、「日本茶にはお砂糖はいれないです」と念を押すのも忘れません。

私は言語を学ぶ、ということはその言葉を話す人たちの文化も一緒に学ぶことが大切、と思っているので、私の日本語の生徒たちには機会があるごとに自宅に来てもらって、日本人の家庭の雰囲気を味わってもらうようにしていいます。

それに、日本へ行くことに不安も抱えた彼らです。こういった機会で彼らのこれからの日本での生活に対して度胸をつけてもらえれば、とも思います。

ただ、“日本人家庭”といっても、我が家はアフリカ生活が長いので、私たちが正真正銘の日本人家庭なのか、と聞かれてしまうと、ちょっと自信がないのも事実です。夫婦揃って日本人なので、人種的には間違いなく日本人なのですが、文化的にはかなり複合的になってきています。

特に我が家の二人の子どもたち。こういう場にも母からの指令で必ず参加させられるのですが、その発言行動は確実に南ア人になりつつあります。

彼らの発言の中で、「ああ、こいつらはもう100%日本人ではない!」と関心?したことがあります。

まず、カンジの発言。

「ボクはキューピーちゃんのマヨネーズよりも南アのマヨネーズの方が好きだね」

え?なんでこれが非日本人発想なの?と思いますか。

実は、海外駐在の日本人家庭で、日本よりご用達の食料品で人気ランクに常に上位を占めるのが、あのプラスティックの容器に入った、キューピーちゃんの絵のついたマヨネーズなのです。

多分、あの独特の酸味が他の追随を許さない所以なのかもしれません。その独特さの証拠には、南ア・ダーバンのお寿司を出すレストランでも、「ジャパニーズ・マヨネーズ」は追加料金でオーダーもできるほど。

しかし、世の中には“マヨラー”と異名を取るほどマヨネーズが好きな人たちもいるというのに、カンジはつい最近までマヨネーズが苦手でした。だから、キューピーちゃんのマヨネーズにも感化されていなかったというわけです。

見かけは日本人なのに、彼に郷愁を誘うマヨネーズは、キューピーちゃんではないんだなぁ、と実感してしまいました。ふふふ、ちょっとおかしいですね!でも、現地調達に勝るものはないので、これはこれでいいことです。

さて、ショウコの発言。

南ア人の生徒さんたちに、「日本人は面倒くさいよ。あのね、一回断られても、それを信じてはいけないよ」と力説しています。

何のことを言っているのだろう、と聞いてみると、それは彼女の友達とのある“事件”でした。

日本の小学校に数ヶ月お世話になったショウコは、昨年帰国したときに、その当時のお友達と一緒に遊んでもらったのです。そのとき、南アからのおみやげのチョコレートを一緒に食べよう、とお友達に差し出したそうです。

すると、お友達は、「ああ、いいです」と断ったそう。

ショウコは、それを聞いて、「そう、じゃあ、私が食べよう!」と言って、その子の目の前で、美味しそうにそのチョコレートをぱくり。

そのお友達は目を真ん丸くして、「ああああ、食べちゃった」と驚いたそうです。

ショウコはショウコで、驚かれたことにびっくり。

「だって、いらないって、言わなかった?」

う〜ん、ショウコの描写ですから、細かいところはぶっ飛ばされているだろうとは思いますが、その状況はくっきり理解できます。

でも、これを聞いた南ア人は、おののきました。

「えええええええ、じゃあ、どんなに嬉しくても、日本人から何かをもらったら、私たちも最初は断らなくてはいけない、ってこと????」

いえいえ、そうではありません。

南ア人には、日本人の行動様式を真似する必要はないことをしっかり伝えました。ただ、もし、日本人がこういった行動をしたとしたら、それは文化的に、いったん辞退するのは礼儀のひとつだと思っているから、と説明しました。

しかし、確かに、ショウコのような文化的背景を持っていると、この状況は、

「日本人は面倒くさい!」

に、なるのだろうなあ、と納得してしまったのでした。




この記事のURL

http://www.cafeblo.com/safrica/archive/54
コメントする

名前:
Email:
URL:
クッキーに保存
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク

コメント



ちゃたさん、

ふふふ。そのお友達、「ここでは遠慮してはいけない!」というのを身にしみて分かったでしょう!世の中、複雑なことがあまりにも多いので、ちゃたさんやショウコのように分かりやすい人たちは貴重です!


Posted by:吉村峰子  at 2008年06月13日(金) 14:06
昨日、息子の友達が遊びに来ていて、おやつにチョコドーナツを出してあげたら、「いいのにぃ〜」っと遠慮するので、「あ、いらないの?じゃあ、おばチャンがもらう」ってパクリ。一瞬怯んだ友達でしたが、その後、一気にチョコドーナツが飛んでいきました。

私、翔子ちゃんに似てるのかもね。
Posted by:ちゃた  at 2008年06月13日(金) 03:31
Keikoさん、

コメントありがとうございました。そうですよ〜。南アではまだ、「魚を生で食べておなか壊さないの?」と真剣に聞かれてしまいます!でも、お寿司はブームにもなっている気配あり。地元のスーパーでもお寿司のパックが売っているのです。

ぶー・姉さん、

うわ〜、冷やし稲庭うどん!美味しそうですねぇ。食べたい!

ショウコは、ほんと、“そのまま”のやつですから。単純でとっても分かりやすい性格をしています。だから、余計に日本人の「遠慮」というものがなかなか理解できないのかもしれませんね。

Posted by:吉村峰子  at 2008年06月11日(水) 02:32
今日、会社の食堂で、隣の人が、見事に冷やし稲庭うどんをすすっていました。この記事を読んだあとだったので、なんだか感心してしまいました。
翔子ちゃんはおもしろいですね。でもいわれてみれば、彼女が100%正しい気がします。
Posted by:ぶー・姉  at 2008年06月10日(火) 22:04
峰子さん、こんにちは。

年末にPCを壊して、ブックマークも消えてしまっていました。

カフェグローブだったことは覚えていたのに、探すのなんてちょっとの手間なのにね。

まだちょこっとしか、お休み期間のブログは読んでませんが、相変わらずのあねごでにっこり。

ビーズのこととか、よかったですね。

特別レッスンも、峰子さんらしい。

でもバンクーバー辺りの人って、みんな日本食に慣れていて、そういうびっくりって、経験することはまずないので、へぇー!!!でした。
Posted by:Keiko  at 2008年06月10日(火) 12:35
プロフィール
Profile
吉村峰子
(日本語/英語教師・ライター・通訳)
東京都生まれ。1980年頃より日本語・英語教育に関わる。教えた国は、日本、米国、デンマーク、ドイツ、リべりア、エチオピア、マラウィ、南アフリカなど。1986年頃より、アフリカと日本を交互に生活した後、2003年、南アフリカ・ダーバンに家族とともに移住。現在はダーバンで日本語・英語教育、執筆業、通訳業で大忙しの毎日を送る。