吉村峰子のアフリカに遊びにおいで!

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“性教育”への子どもの反応 [2008年01月22日(火)]
 
前回のエイズの講演についての記事にご質問をいただきました。

「小学生などの幼い子どもがこういった性教育にどんな反応をするのですか。具体的に教えてください」。

私の経験では、子どもたちは本当に素直に受け止めてくれます。その中でも、一人、とっても印象に残っている男の子がいます。アフリカのマラウィにある、英国系インターナショナルスクールに通う、英国人のアダムは当時6歳。インターナショナルスクールの1年生でした。

アダムの話の前に、アフリカのインターナショナルスクールの背景を少し説明しましょう。


マラウィの英国系インターナショナルスクールの子どもたち
各国の衣装をまとっての集会


アフリカにあるインターナショナルスクールに通う子どもたちの多くは、各国大使館や国連、国際NGO勤務の親を持ち、世界各国を2〜3年で移動させられています。ただ、アフリカにいながら、彼らの生活は、どうしても現地の人たちの暮らしから遠いところにあります。私は自分の子どもたちをマザーテレサの子どもの家に通わせながら、この活動を他の子どもたちにも広げようと奮闘していました。放課後に子どもの家の子どもたちを学校に招待して、インターナショナルスクールの教室で遊んでもらうことなども頻繁に行いました。



事実、この活動は応援してくれる先生方も増え、私がマラウィにいた頃は、子どもたちの放課後の“クラブ活動”に昇格していました。たくさんの子どもたちが協力してくれて、アダムのこのクラブの一員でした。



そして、このクラブの大切な活動のひとつが、子どもの家に寄付するおもちゃを、学校全体の生徒たちから集めることでした。ある週、集まったおもちゃを持って、数人の子どもたちと子どもの家を訪問することになりました。そこで、その前日、子どもたちを集めて、エイズ(正式にはHIV/Aids)の感染経由のこと、どうしたら自分の身体を守ることができるか、などをお話しました。

普段こういった場所とまったく接触のない子どもたちをHIVウイルスに感染している子どももたくさんいる場所に連れて行くのですから、親や学校の承諾も取り付けました。そして、何よりも子どもたちに、エイズに関しての最低限の知識を持ってもらわなくてはいけません。

エイズの感染源は血液を介すること、母乳も血液の一種であること、セックスからも感染するので、セックスをするときはコンドームをすること、などを前回ご紹介したエマニュエルの話の紙芝居も使いながら子どもたちに伝えました。

もちろん、「コンドームって何ですか」という低学年の子どもの質問にも、「セックスするときに、ペニスにかぶせるゴムのことです」という説明もしました。

年齢差のあるグループでしたが、個別に出された質問などにも答えながら、子どもたちに強調したのは、子どもの家で、もしも誰かが怪我などで出血したとしても、血液には絶対に触らないということ。そしてHIVウイルスに感染している人たちを差別しない、ということでした。

話が終わる頃には、みんなの顔に安心感がただよい、実際に明日、おもちゃを届けることへの期待感があふれていました。

さて、その後、集めたおもちゃを私の車に運ぶ際に、この6才のアダムが私に大真面目でこんな質問をしたのです。

「ミセス・ヨシムラ、明日、僕たちが子どもの家に行くときに、僕もコンドームをつけて行ったほうがいいでしょうか」

英国人の外交官の父を持つ、大人顔負けの挨拶もきちんとできる礼儀正しいアダム。彼は、幼いふっくらとした顔と頬をやや紅潮させて、私にきちんとこう質問したのです。

私は、にっこり笑って、

「いいえ、アダム、明日、あなたはコンドームをつける必要はないですよ。だって、あなたは、明日、誰ともセックスをしないと思うから!」と彼に伝えました。

それを聞いたアダムは心から安心したように笑顔を見せました。

私の話の中の、「エイズは“セックス”を介して感染する」という説明に彼の理解が追いつかなかったのでしょう。でも、その、よく分からない“セックス”をするときでも、“コンドーム”さえつければ、エイズに感染しない、ということは理解できたのです。

だからこそ、自分はその“セックス”が何かはちょっと分からないけれど、明日、万が一、それをすることになったら大変だから、自分も準備しておいたほうがいいのかも知れない、と考えたのだと思います。

私はこのやり取りを忘れることができません。6歳のアダムのこのまっすぐな質問に心を打たれました。そして、こうやって、エイズの話題を幼いころから身近にしていたら、彼は彼の年齢を重ねるたびに、エイズへの理解も深めていくのだ、と確信したのです。

当時6歳だったアダム。今ではもう中学生になっているころでしょうか。実はこのアダム、動物が大好きで将来は環境学者になりたい、という希望を語っていました。


ペットの亀と一緒のアダム

話はちょっとそれますが、彼に絡まるエピソードをもうひとつ。実は、私は彼から、なんと“日本人”である、ということだけで、感謝されたことがあるのです。

アダムは、「日本人は地球環境のために、電気で走る自動車を発明してくれました。ありがとうございます」と言ったのです。彼は、当時、アフリカでも話題に登るようになってきた日本製のハイブリッド車のことを絶賛していました。私は日本人の代表!でも、ハイブリッド車開発チームで働いているわけでもないのに、ただ、ただ、「日本人である」というだけで、このステキな将来の環境学者に感謝されてしまったのです!

ああ、子どもって、本当にステキです。そして、こういう子どもたちが成長していく過程で、避けては通れない性感染症の危険。私はエイズに限らず、子どもたちに、自分の身体は自分で守る、ということをいつでもどこでも語っていきたい、と考えています。


この記事のURL

http://www.cafeblo.com/safrica/archive/35
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コメント


ブー・姉さん、

そうですね。成長したアダムに会いたいですね!あの頃のアダムは、多くのお母さんたちに絶大なる人気でした。ちょっと、苦笑するくらい礼儀正しくて!
Posted by:吉村峰子  at 2008年01月25日(金) 04:01
アダムはステキな人だな、と思いました。知識を思いやりをもって役立てていける人だなと思いました。私もそういう人になりたいです。
Posted by:ブー・姉  at 2008年01月23日(水) 22:55
プロフィール
Profile
吉村峰子
(日本語/英語教師・ライター・通訳)
東京都生まれ。1980年頃より日本語・英語教育に関わる。教えた国は、日本、米国、デンマーク、ドイツ、リべりア、エチオピア、マラウィ、南アフリカなど。1986年頃より、アフリカと日本を交互に生活した後、2003年、南アフリカ・ダーバンに家族とともに移住。現在はダーバンで日本語・英語教育、執筆業、通訳業で大忙しの毎日を送る。
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