吉村峰子のアフリカに遊びにおいで!

2007年12月
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HIV/Aids、アフリカ、そして子どもたち A [2007年12月03日(月)]
 
私が自分の子どもたちのために始めた、リロングウェの“子どもの家”通い。この“家”で出会った子どもたちの一人が、この画面の左がわ、私のプロフィールの写真で一緒に写っているエマニュエルだった。

彼は、動物の好きな男の子。この写真を撮った二週間後に彼はエイズの合併症の肺炎と下痢でその短い人生を閉じた。その命の終わりが間近になった数週間、私はできる限り彼の病床に足を運んだ。

エマニュエルが好きだったのは、バナナ。
エマニュエルが好きだったのは、コーラ。
エマニュエルが好きだったのは、コーラの王冠。
エマニュエルが好きだったのは、カエル。
エマニュエルが好きだったのは、蝶々。

私の知っていたエマニュエルは、統計の中の“一人のエイズ孤児”ではなくて、6歳の、元気になってくるとちょっとワガママな、一人の男の子だった。

今でも忘れられないことがある。

エマニュエルは、看護するマザーテレサのシスターたちが、「もう駄目かもしれない」という病状に何回か陥ったが、彼は何回も復活した。このころ、この“子どもの家”では、抗ウイルス剤などの投薬治療をする金銭的余裕はなかったので、治療と言っても、栄養剤を点滴したり、口から摂取できる消化のよい食べ物を与えたり、というものだった。


ほほがまだふっくらしていた頃のエマニュエル


何回目かの死線からの復活のあと、エマニュエルにしっかり意識が戻ると、彼は排泄するときに、しっかり人を呼び、オマルを要求するのだ。その頃、『吉村峰子のマラウィ私信』という、私が代表をしていた組織GITCの会員向けに書いていた文章に、こんなくだりがある。

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それにしても、私はまた子どもたちに「あきらめないこと」の大切さを教えてもらっています。誰がどう見たって、エマニュエルは死期が迫った状態でした。それがどうでしょう。今週は、おまるにしっかりとした便もするようになったのです。賢いエマニュエルは、決して粗相などしません。多分、ベッドの端に触れる だけでも激痛が走るのでは、と思うほど痩せてしまっているのですが、ちゃんと人を呼び、おまるを出してもらって排泄します。触るのが怖いほどやせ衰えた彼を介助しながらつくづく思いました。私たちは彼のこうした姿勢に、人間としての厳かな品性を教えてもらっているのです。エマニュエルはたったの6歳。ここ まで体がつらかったら、お漏らししたっていいのです。それなのに、きちんと排泄しようと、エマニュエルはがんばります。
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エマニュエルは無意識だったと思う。だが、その短い人生で、例えば、「おしっこ、うんちは、きちんとトイレでする」とは、彼が身につけていた、きちんとした生活習慣そのものだ。私は彼が誰からそれを教えられたか、想像をめぐらせた。もっともっと小さかったエマニュエルに、排泄のしつけをした人がいた、ということが、私の心を明るくした。幼い子どもが、周りの大人に、褒められながら、ときにがっかりされながら、おしっこを、ウンチをトイレで排泄できるようなる。……こんな子育てのシーンのひとつが、アフリカの小さな村であった、ということを、エマニュエルの行動の中に見ることができたからだ。

そして、彼は、最後まで、この自分に身に付いた生活習慣をしっかり守ろうとしていたのだ。私たちは、信じる人たちに教えられたことを「守ろう」と努力する。それが、大切な生活習慣であれば、その毎日の律儀な積み重ねが、生活にリズムを生み、家族という単位で行動する毎日に秩序を与えてくれる。

戦争で荒れ果てる前の、または、エイズ渦で大人がばたばた死んでしまう前の、名もない多くのアフリカの小さな村の清潔さ、穏やかさ、大人に見守られながらシアワセに暮らす子どもたちの健康的な生活を知る人間として、エマニュエルのシアワセだった日々を想像することができた。

エイズで壊滅的な打撃を受けているであろう、エマニュエルの家族が住んでいたマラウィの村にだって、こういった普通の毎日の生活が存在していた、という証が、この幼いエマニュエルの律儀さの中にあったのだ。

そして、私はこのとき、「私がこういう子どもたちのことを人に伝えていかなかったら、誰が伝えるのだろう。この子たちの生きてきた証はどこに行ってしまうのだろう」と考えた。

私に爪を毎週切って欲しい子は、爪を切ってもらうことだけが楽しみなのではない。大人に抱っこしてもらい、爪を切ってもらう時に自分に向けられた注意が嬉しいのだ。日本のお母さんたちだったら、何気なく存分にわが子に与えているこういった思いやりがこの子たちには特別なことだったのだ。


粗末ながらも、栄養の行き届いた食事で、子どもたちは子どもの家についてから、短期間でふっくら健康になる

私は、この子たちのことをしっかり受け止める人間でいたい、と思った。そして、彼らが確かに生きていたことを、世界の大人たちはもっとしっかり知るべきだと思った。せっかく同じ地球に生まれながら、文句も言わずに死んでいく幼い子どもたちのことを、もっと多くの大人たちが知るべきだと思った。そして、私には、この子たちのことを世の人に伝える責任があると思った。

私はこの子たちのお母さんにはなれないけれど、この子たちの生きてきた証を文字にして、日本の子どもたちや大人たちに伝えることはできる。それは、アフリカに居なくてもできることなのだけれど、私はこの子たちとのかかわりの中で、近い将来アフリカに自分の生活の場を移すことが極めて自然なことのように思えてきていた。


お知らせ

↓↓↓シンポジウムにご参加ください!↓↓↓

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エイズ問題学習会〜エイズの「いま」を考える
@日時:12月15日(土)夜6〜9時
A会場:豊島区立生活産業プラザ
  170-0013  豊島区東池袋1-20-15
  池袋駅東口より徒歩7分
B内容:(発言順)
  吉村峰子(南アフリカ在住):
   南アフリカのエイズをめぐる現状
  保田行雄(弁護士):
   日本のエイズをめぐる現状
  金子由美子(公立中学校養護教諭):
   性教育の今
  川田龍平(参議院議員):
   国会から
  司会:岩辺泰吏
C参加費:(会場整理費)500円
D主催:人権アクティビストの会(代表:川田龍平、事務局長:岩辺泰吏)
E参加申し込み:直接会場へ起こしください
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この記事のURL

http://www.cafeblo.com/safrica/archive/27
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コメント


お返事ありがとうございます。今回は時間帯からも難しいので諦めます。
子連れでも大丈夫とのことで、次回はぜひ参加したいと思います。
またの機会を待ってます!
Posted by:siva  at 2007年12月14日(金) 14:02

siva様

コメントありがとうございました。どうぞ、お子様もお連れくださいね。当日は、私の娘もいますので、ベビーシッターをさせます!でも、体調がよくないようでしたらご無理をせずに。またの機会がきっとありますよ。でも、お目にかかることができたら光栄です。
Posted by:吉村峰子  at 2007年12月14日(金) 10:11
いつも拝見させていただいています。今回のお話は特に胸に響いて、深く考えさせられました。危険に対する無知が一番の危険。知らないということは、親になったら無責任でもあると感じました。15日のシンポジウムは体調の関係で不参加になりそうですが、またこういった告知をしてくださると助かります。
一点、質問なのですが子連れでの参加は難しいでしょうか?3歳なのである程度は大人しく出来るかと思いますが・・・。
Posted by:siva  at 2007年12月12日(水) 14:29
sumi さま、

ありがとうございます。でも、子どもたち、元気いっぱいですからね。全員が病床に伏せている、というわけでもありません。遊んで、けんかして、成長する毎日もきちんと平行線でありますから。そんなにお心を痛めませんよう。

こうやって、関心を持っていただけることが嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

中岡さま、

メールアドレスをお教えいただけますか?または、私の個人メールまでご連絡をいただけますか?よろしくお願いします。

Posted by:吉村峰子  at 2007年12月06日(木) 12:18
吉村さま


 名古屋ZIP FMというFMラジオ局で番組制作をしております、中岡と申します。

いつも大変興味深く、読ませていただいております。

ぜひ、私の番組の中で、ブログでされているようなお話をしていただけないでしょうか?

詳細を一度、お話したいので、
メールをいただけると幸いです。

よろしくお願い致します。


ZIP FM(EAU名古屋) 中岡聡子
       
Posted by:中岡聡子  at 2007年12月06日(木) 08:05
こんにちは。興味深く拝見いたしました。私は現在11ヶ月の赤ちゃんの母です。毎日健康でいてくれることに感謝です。写真をみていてこんなに愛らしい幼い子たちが命の危険にさらされていると思うととてもつらく思います。

トイレのしつけについてもじーんときてしました。保育園ではなくわが子には自分でおトイレのしつけをしてあげたいと思いました。

シンポジウムにはいけませんが
また記事を拝見させていただきたいと思います。次回を楽しみにしております。

Posted by:sumi  at 2007年12月06日(木) 00:39
プロフィール
Profile
吉村峰子
(日本語/英語教師・ライター・通訳)
東京都生まれ。1980年頃より日本語・英語教育に関わる。教えた国は、日本、米国、デンマーク、ドイツ、リべりア、エチオピア、マラウィ、南アフリカなど。1986年頃より、アフリカと日本を交互に生活した後、2003年、南アフリカ・ダーバンに家族とともに移住。現在はダーバンで日本語・英語教育、執筆業、通訳業で大忙しの毎日を送る。
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