おへそに手をあてて……

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耳を澄ませば…… [2008年04月16日(水)]
最近、インタビューを受けることが増えています。

書く仕事をしている私は、取材などのときに、私がインタビューをすることはあったとしても、インタビューを受けるとなると、どうにも落ち着きません。

インタビューをしてくださったのは、港区青山にある出版社の雑誌編集者さんです。その出版社は、作家でもある落合恵子さんが経営されていて、子どもや女性の暮らしをテーマにした本屋さんを中心に、出版事業、レストラン、通販など、総合的にライフスタイルをサポートする、とても面白い活動をしています。居心地のよい本屋さんであり、美味しい食事もできて、ゆっくりお茶を楽しめるので、私が東京に住んでいたときにはよく通っていました。

以前、その雑誌にフラについてのコラムを書かせていただいたご縁があり、今回、インタビューをお受けしたのですが、まだ慣れない私は、いただく質問に答えられているのかどうか、と心配ばかり。

というのも、質問には質問する人の意図があるというのを、私が自分がインタビューをする経験から知っています。なので、すぐに意図をくむこともできるのですが、ときに、自分がその意図に対して十分な答えをもっていないことにも、気がついてしまうのです。

もちろんそのようなときは、正直にお伝えし、どのくらいその質問の意図に幅があるのかを伺って、対応するようにしています。そのことから、インタビューが長引くこともありますし、結果的に質問を変えていただくことも。私には、適当に対処するということが、あまり向いていないのでしょう。

いろいろなインタビューのなかで、よく質問にあがるのは、「リラックスするための音楽について」です。

いま、音楽を楽しむことがとても簡単になっていて、世界中の音楽をインターネットでダウンロードできるようになっています。ダウンロードした音楽を、小さな入れ物にたくさんいれて、どこにでも気軽に持ち歩くことができます。リラックスをするための音楽をそばに置いておくことができたら、いつでもどこでもリラックスできて、さぞかし便利なことでしょう。

ところが、私は、いわゆる「リラックス」をするために、音楽を聴かないのです。



そもそも、一般的なリラックスのイメージは、「静」でしょう。たとえば、読書をするとしたら、感極まって涙が止まらず胸が苦しくてたまらないような本や、問題を提議し弁論に及ぶような本をリラックスするために選びません。エクササイズをするとしても、重いバーベルを何回も持ち上げたり、著しく激しい動きが含まれるような運動も避けるでしょう。

つまり、イメージは、「動」ではありません。

そこで、私は、私にとって音楽を聴くことが、「動」のリラックスであることから話しはじめます。我が家は、夫の趣味のオーディオ機器がぎっしりと並び、さらに夫の仕事でもあるオーディオ関係のものが、それこそ家中にあるのです。スピーカーが数十、レコード針が数百……にはじまり、私には理解不能のたくさんの機材がそろい、いつも音楽が流れています。


何故かレコード針がかわいく思える今日この頃


しかし、私は、自分で彼のオーディオを使って、音楽を聴くことができません。それは、夫が私の仕事机にある原稿や資料にむやみにさわらず、私がショウで使う衣装や道具を使わないのと同じで、我が家の専門領域の縄張りの問題のようです。

それでは不自由だからと、ipodなどの何か便利なもの買うことも考えるのですが、なかなかそれに至らないのは、我が家のスピーカーから流れる音に私が惚れているからに違いありません。

クラッシック、ジャズ、ハワイアン、オペラなどコンサートのレコードをかければ、その臨場感は最高。観客の息から、演奏者の動きまで、目に見えるように、肌で感じるように聴こえるのです。時代をこえて、距離をなくす、我が家のコンサートホールを、家にいる限りはいつでも楽しめるのですから、便利な小さな音楽の入れ物に手が伸びないわけです。

私にとって、音楽を聴くことは、食べたいものを食べる、読みたい本を読む、踊りたい踊りを踊る、話したいことを話すこと、会いたい人に会う、などのように、「動」のリラックス。

質問には、こう答えます。

CDやパソコンからダウンロードした音は、デジタル信号だということを考えるきっかけを持ってみてください、と。お気に入りの音楽をいつも身近におくのは素敵なこと、でも、同時に、デジタル信号であることも知っておくと、デジタル信号を生の音に近づけて音楽を聴くにはどうしたらいいのかな、レコードを聴いてみようかな、コンサートに行ってこの曲を聴いてみたい、などの、聴く広がりが増えると思うのです。

そして、生の音を聴きたいという気持ちがわいてきたら、楽器をそばに置くこともできます。私は、楽器をたしなむ夢はあるのですが、なかなかたどり着かないので、裏庭で洗濯物をほしながら、仕事に行くときに子どもと手をつなぎながら、私のまわりにある生の音を楽しんでいます。


木のざわめきの音楽もおすすめです!


いい音のある生活は、耳を澄ますところからはじめたいですね。

プロフィール
神宮寺愛
エッセイスト×フラダンサー
東京での出版社勤務を経て、現在はエッセイストとして活動。マウイ島ワイルク在住。著書『心と体がピュアになるハワイアンな暮らし』(青春出版社・刊)他。フラやハワイ語等を学ぶダンサーでもあり、カノエアウダンスアカデミー所属。現在カアナパリビーチホテルのディナーショーにレギュラー出演中。