本日、お日柄もよろしく [2008年02月13日(水)]
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お日柄もよろしい、去る日曜日、かしこみ、かしこみ、お願いしてまいりました。
お願いの儀とは、数えで七歳になる娘の無事の成長、世に言う「帯解」、つまり七五三でございます。 本来ならば、昨年の十一月、もしくは満年齢で今年の十一月に行うべきなのでしょうけれど、家族が集まることができて、晴れ着を着てもそう暑くはない季節となると、いましかない……。そこで、マウイ神社に相談に行ったところ、「祝えるときに祝いなさい」と、御歳九十四歳の宮司のトラコおばあちゃんのお言葉。 久しぶりの晴天に恵まれ、心地よい風に吹かれながら、めでたく、お祝いをすることになりました。 まずは髪結、登場したるは、私のフラの師、ハーナイママのアンティ・ケアラ。実はハワイ州認定の美容師免許をもつ彼女は、ダンサーのヘアスタイルをいつも華やかに結い上げてくれる手練れなのです。 「日本髪の結い方は、本当に素敵よね。三十年くらい前に日本ではじめてみたときは、日本の人の髪の毛はなんて美しいのだろうって思ったわ。髪の美しさを大切にするのはハワイも日本も一緒ね」と話しながら、数十分で娘の髪を結い上げてしまいまいした。 娘は、彼女にとって「孫」のような存在。「さあ、今度は本当のおばあちゃんに着物を着せてもらいなさい」といって後ろへまわったアンティ・ケアラは、私の継母が静かに着物を着せていくのをじっくりと眺めていました。 桜色の絞り染めの着物に紅色の帯を締め、朱色の帯揚げをふんわりと。ひとつひとつを重ね、結んでいく作業は、大切なことをひとつひとつ確認していくような安心感。つややかな髪に大きめの花かんざしをつけてあげると、娘は興奮した様子で、「アンティ、私、すごい靴をはくの」と、木履(ぽっくり)を箱から出してきました。 ![]() さて、少し白粉をはたき、唇に紅をひいた娘、木履をはいて用意万端。いざ、マウイ神社へ。 「ママね、このお着物をきて、木履をはいて、アイナと同じように神社に行ったんだけど、神社の石段が登れなくってね、おじいちゃんにおんぶしてもらったのよ」と私が懐かしげにつぶやくと、「駄目じゃない、ママ〜、もう赤ちゃんじゃないのに、おんぶなんてしてもらって」と、娘はどこかで見たような諭し顔。私の思い出の着物を娘に引き継ぐことができたことは、じんわりと世代の移り変わりを考えさせられる出来事でした。 九十四歳のトラコおばあちゃんは、私たちをにこやかに、大きな声で迎えてくれました。神妙な面持ちで神社の本殿に入り、席につくと、頃合いよく、トラコおばあちゃんが静々と前へ、そして太鼓をたたきはじめます。 「太鼓で神様に合図するのね」 「ママ〜、あの太鼓は鮫の皮でできている?」 「ハワイの神様の太鼓は、鮫の神様や、豚の神様が皮をくださるけど、日本の太鼓は、牛さんよ」 「着物って暑いね」 「そうね」 「暑いなぁ」 「静かに」 「暑いよ〜」 「我慢しなさい」 神前で祝詞を唱えるトラコおばあちゃんの声は、九十四歳には思えないほど大きく、声には十分に張りがありました。私は日本の祝詞をあげたことはありませんけれど、小唄を習ったことはありますし、いま、仕事でハワイの祝詞を詠唱することがありますから、広い場所で、皆に聞こえるように声を続けてだすことは、とても体力、精神力の要ることだと知っています。 トラコおばあちゃんは、その姿だけで私に、いろいろなことを教えてくれました。自分のするべきことを知り、それを黙々とする姿。見ているだけで、深々と頭の下がる思いでした。 儀式を終えたおばあちゃんは、私たちのところにやってきて、「年をとったから、人の言っていることがよく聞こえないし、自分の声はどんどん大きくなっているようだし」と笑っていました。「元気な証拠ですね」と私が言うと、「今日もお赤飯を炊いてあげようと思ったのだけど、なかなか年寄りにはすぐにはできなくって。でも、桃の節句のときは炊くから必ず来てね」、そして、「よいお父さんとお母さんを持って幸せね」と言い聞かせるように娘に。 私は結構な楽天家なので、娘に「ほぉら、私はよいお母さんなのよ」と言うこともあるのですが、トラコおばあちゃんのような女性に、それを娘に伝えてもらうことは、私にとってではなく、娘にとって大切なことのような気がして、有難い気持ちでいっぱいでした。 おばあちゃんに何度もお礼を言いながら、帰途につき、家に戻ると、今度はお祝いのお餅つき。お餅が大好物の娘は、すでにお腹をすかせ準備万端。裏庭に置いた石臼の横に寝そべって待っています。 ![]() 少し日が落ちた午後四時、友人たちも集まり、お餅つき。コトコトと煮込んだ甘い小豆と、きな粉と黒蜜、大根おろしの入った大皿に、つきたての白いお餅が手でちぎられて、ぷるるん、ぷるるんと並んでいきました。 日本髪を結ったままの娘は、お餅つきの返し手に挑戦し、お餅がついたままの手で小豆のお餅を頬張っています。「お米のなかには七人の神様がいるんだよ。だから大切に……」が口癖の夫は、日本酒を飲んで、「お餅とお酒は合うね〜」と上機嫌。 星が見えはじめた夜空に、私は祈るばかりでした。 心と体が健やかでありますように、家族と友人たちをお守りください、 かしこみ、かしこみ、お願い申し上げます、と。 |





