おへそに手をあてて……

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ありがとうはいつでも、いつまでも [2007年11月27日(火)]
先週の木曜日は、サンクスギビングデーという祝日でした。アメリカ先住民であるアメリカインディアンが、農作物が育たず、狩猟もうまくゆかずに困っていたヨーロッパからやってきた人々助けたことに感謝し、その後収穫を祝うようになったという謂れのある日です。

この日は、家族や友人が集まって食事をして過ごすことが多く、七面鳥やカボチャ、芋、トウモロコシなどを使った料理をみんなで囲みます。私はいつも、クム・フラであり、私のハーナイ・ママであるアンティ・ケアラの家で昼食、その後、私と夫の共通の友人夫婦、ペケロとロビンの家へ。

どちらの家のお料理も数日かけての手作りです。私もアンティ・ケアラの家に前日から泊まり込みでした。みなさんにまずはお腹を満たしていただくためにも、両家のメニューをご紹介しましょう!






【アンティ・ケアラの家のおおごちそう】
七面鳥の丸焼き・ピーチとクローブで煮込んだハム・野菜入りのスタッフィング・コーンとサクサクのクラッカーのバター風味オーブン焼き・マシュマロトッピングのヤム芋のマッシュドポテト・蟹入りポテトサラダ・洋ナシとクランベリーとピーカンナッツののっているグリーンサラダ・グレイビーとクランベリーソース・パイナップルとスイカ・パンプキンクランチパイ・ブルーベリータルト・カスタードとチョコレートカスタードのタルト





【ペケロ&ロビンの家のおおごちそう】
七面鳥の丸焼き・甘辛い鳥のから揚げ・リンゴとセロリとクランペリーとマシュマロのヨーグルト風味のサラダ・コーンとグリーンピースのサラダ・マッシュドポテト・野菜入りスタッフィング・チャイニーズヌードル・グレイビーとクランベリーソース・カスタードバイ・ピーカンパイ・パンプキンパイ

※スタッフィングとは、七面鳥を丸焼きにする際にする詰め物。



実は、どちらの家にもお料理の美味しさ以外にたくさんの共通点があるのです。

其の一・アメリカンインディアンの血が流れていること
其の二・ロビンのお母さんはアンティ・ケアラの恩師、アンティ・ケアラはペケロとロビン、ロビンの姉妹の高校時代の先生
其の三・マウイ島のハナで長い間暮らしていたこと


ロビンのお母さんの家の数々のアメリカンインディアンのアート


マウイ島は小さい島ですから、つながりがあることは不思議ではないのですが、夫が娘のプリスクールの手伝いに出かけた時にすっかり意気投合し、とても仲良くなったのがペケロ、その後、娘たちが大親友と呼び合う仲になり、私とロビンも姉妹のように。あるとき、娘が親友のナーマカをアンティ・ケアラのフラの練習に連れてきたところ、其の二の事実が発覚したというわけです。

今年のサンクスギビングデー、いつものように私はアンティ・ケアラの家で、お腹がはちきれんばかりに食べ、踊っていると、アンティ・ケアラがペケロとロビンの家に早く行くように私をせかしました。その理由は、今年、ロビンのお母さんが癌で亡くなったからでした。

大切な人を亡くした年のはじめての大きな祝日に、ロビンをさみしい気持ちにさせたらいけない。サンクスギビングデーの前日に大親友を亡くしたことのあるアンティ・ケアラはその話とともに、まだ涙のかわかない私の背中を押しました。

ロビンのお母さんは、「先生」という仕事が大好きな人。マウイ島のハナ・ハイスクール、ボールドウィン・ハイスクールで教えたあと、学校に行かなくなった子どものための学校で、癌の手術の前日まで教壇に立っていました。


ロビンのお母さんの若きころの写真、聡明な面差しが印象的


博識で、私にもいろいろなことをわかりやすく教えてくれた彼女。教会のバザーやセールなどで日本語の本を見つければどっさり買って私に、娘には誕生日やクリスマスに必ずプレゼント、子どもに見せたほうがよいイベントや聴かせたほうがよいコンサートがあれば連絡をくれ、泊まりにでかければ、娘に自分の孫と同じように本を読んでくれたりする、とっても頼れる「グランマ」でした。

私がペケロとロビンの家に行くと、二人はキッチンで七面鳥を食べやすく切っているところでした。ロビンはお母さんの言いつけどおり、食卓にはどんなときも本物のお皿とフォークとナイフ。外で食べるときも、小さな子どもが使うときも、何十人のお客様でも、紙のお皿やプラスティックのフォークやナイフを嫌ったお母さんの言いつけを実行していました。以前は、「ママったら、六十枚のお皿を外に持ち出して、しかもそのあとお皿洗いは私がするなんて」とぼやいていたのに。

娘と親友のナーマカ、その妹のエラはまるで姉妹のように仲良し。外にあるテーブルのそばの大きな椅子に二人で座り、賑やかに食べはじめました。

私が二度目のごちそうをほおばっていると、ロビンが、「じゃあ、今日はサンクスギビングデーなので、みんながそれぞれ何に感謝しているかを言いましょうよ」と言いだしました。

子どもたちが元気に、「パパとママ!」とか、「ママがおっぱいをくれたこと!」とか、「毎日幸せだってこと」などと叫びはじめます。しかーし、大人はちょっと口が重めというか、特に男性陣は照れがあるようでした。

そこで私はロビンに、アンティ・ケアラの家でとっても盛り上がった話をおすそわけ。それはマウイ島の高原クラにあるラベンダーファームで働いているアンティ・ケアラの友人とファームのお店にやってきたお客様との一悶着の話。ラベンダーファームのお店は、ラベンダーを使ったスキンケア用品、アロマテラピー用品、もちろんフラワーアレンジメントもあり、最近はラベンダーを使ったクッキーやスコーン、紅茶なども人気で、お店はいつも賑わっているのです。

「たいてい女性のお客様がお店のなかで時間をかけてお買い物をして、男性は外で首を長くして待っている感じなんですって。でね、待ちくたびれた男性の一人が、ちょっとひねくれた口調でこう言ったの。『この時分、どこもかしこもサンクスギビングデー、オレンジや赤や黄色の色だっていうのに、ここは年がら年じゅうラベンダー色ってわけかい』って。

そこで、アンティ・ケアラのお友達、そのお客様に思いきって言ってやったんですって。『サンクスギビングデーってみんなは騒ぐけど、その日だけ感謝すればいいってわけじゃないでしょう。感謝は毎日するものよ。だからここではサンクスギビングデーだからって、赤やオレンジの色で飾りつけたりはしないの。毎日がサンクスギビングデーだったら、赤やオレンジの色を毎日飾るわけにいかないでしょ。だから今日の色はラベンダー色ってわけ!』ってね」

ロビンは大笑い。少し前にお母さんの話をしながら涙ぐんだロビンにちょっと心配をしていた私は、一安心しました。

私にとってサンクスギビングデーは親しみのない祝日です。日本の秋の収穫を祝う様々な行事のほうが何倍もしっくりきます。でも、家族や友人が集まって、一緒にお料理をしたり、食事をしたり、今日のこの話を聞いて頷き合ったり、笑いあったりするのはとっても楽しいこと。

ありがとうの気持ちは一年中。サンクスギビングデーを、サンクスギビングイヤーに!

師走が音をたててやってくる十一月の末に、ふさわしい週末だったように思えます。

プロフィール
神宮寺愛
エッセイスト×フラダンサー
東京での出版社勤務を経て、現在はエッセイストとして活動。マウイ島ワイルク在住。著書『心と体がピュアになるハワイアンな暮らし』(青春出版社・刊)他。フラやハワイ語等を学ぶダンサーでもあり、カノエアウダンスアカデミー所属。現在カアナパリビーチホテルのディナーショーにレギュラー出演中。