おへそに手をあてて……

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宝物が届きました [2008年03月25日(火)]
宝物が届きました。

みなさん、覚えていますか? 今年のはじめに、私が宝物探しにでかけたこと。

エディトリアルライターの内田あやさんと、フォトグラファーの山本哲也さんと、コーディネーターの私が見つけた宝物たちは、雑誌『FIGARO voyage』になって、今月の十五日に発売しました。

雑誌『FIGARO voyage』は、『FIGARO』という雑誌から生まれ、旅をメインテーマとして扱っている雑誌です。年に数回の発売のなかで、都度、違う旅先が選ばれるのですが、ハワイははずすことのできない人気の旅先とか。

どっさりと届いた雑誌、表紙には目の覚めるようなピンク色のアークリクリの花のレイ。



今回の特集は、オアフ島、ハワイ島、マウイ島の小さな町。

ページをあけると、素顔のハワイがいっぱいでした。ワイキキから車で三十分の静かな海、地元のマーケットで“採れたて”“できたて”を味わうオアフ島、太陽の家“ハレアカラ”からはじまる虹色ドライブルート、自然と一緒に暮らす人々の笑顔が溢れるマウイ島、心と体にエネルギーをチャージする癒しとスロウフードの情報が満載のハワイ島。

日常を離れて遠く旅をするということが、限りなく身近な存在になることの楽しさを教えてくれる『FIGARO voyage』ならではの内容です。

私はマウイ島の宝物探し担当でしたが、オアフ島、ハワイ島の探検隊の成果が集結して、宝箱をひっくり返したように盛りだくさんな一冊。取材のあと、校正作業といって、情報が正しく原稿などに記されているかを確認する作業があるので、マウイ島のページにどのような原稿や写真が掲載されているかを知ってはいたのにもかかわらず、やはり、印刷、製本されて、形になると、「手に取る」ことの良さというか、実感がずっしりと伝わってきます。

ほかの島のページを読み終わった後には、いくつもの旅をした気分でした。

マウイ島の取材では、宝物探検隊の三人のそれぞれに、お腹にずんと響くような出会いがありました。



波を愛するフォトグラファーの山本さんは、マウイ島のラジオ局でのインタビュー取材にやってきてくれた、人気のミュージシャン“エコル”のメンバーと、同じ波に乗る友人同士として、かけがえのない時間を過ごすことができたようです。エディトリアルライターのあやさんは、実はこのブログでもご紹介したように、ボディーワークの専門家。体を動かすという点で、ハワイの文化の象徴でもあるフラの動きに触発され、日本に戻ってからも、フラダンサーの手の指の動きが忘れられなかったとか。

もちろん、約二週間の取材のなかには、大変なこともありました。やはり、日本とは違う環境ですし、車での移動も多いので、体調が悪くなることもあります。体と心はつながっていますから、体を大切にしなければ、心も不安定になってしまいます。限られた時間のなかで仕事をするには、睡眠、食事などはとても大切でした。

また、マウイ島は、東京のようなビジネスに特化した場所ではありませんから、このゆったりした時間の流れが、仕事をしようとするときには、時に、もがきたくなるほど遅く感じます。取材のはじまりには、取材チームがどんな風に時間や意識、役割を配分するかをはかったり、話し合ったりしなくてはいけませんでした。特に、コーディネートの仕事で、私が気をつけたのはこの点でした。

仕事が順調であろうと、そうでなかろうと、三人でしか助け合えません。腹を割るという言葉にあるように、お腹に手をあてて、探検隊のチームワークを作ることができたからこそ、宝物を日本に持ち帰ることができ、みなさんにお目見えすることができたのです。

私はこの仕事をくださった『FIGARO voyage』の編集長にも、あやさんにも、「私のコーディネートの仕事は、今年はこれでもうおしまいです」と伝えました。

いまの私にとって、コーディネートの仕事は、宝物を持ち帰ることではなく、宝物を育みながら暮らすことですから。

「コーディネートの仕事を『FIGARO voyage』のためにしてくださいませんか」という編集長の有難い言葉は、私にとっては「『FIGARO voyage』にあなたの宝物をシェアしてくださいませんか」ということでした。

私は、私の想いを理解してくださって、声をかけてくださる編集長と、読者のみなさんに、喜んで宝物をシェアしようと思いました。

宝物は、私にとっては特別な人たちや物ですけれど、それは、どこにでもある、誰もが持っている普通のもの。あまりに普通すぎて見落としてしまいそうなほど、素朴なものです。誰もが、その人にとって大切な宝物がある、というだけのことです。

それらは、私と同じように宝物を大切に思ってくださった山本さんとあやさんの手で、とっても素敵なページになって、今年一年中、たくさんの読者のみなさんと、私の想いを分け合うことができる時間を作ってくれました。



これから、雑誌をもって、宝物たちに会いにいきます。

「どうもありがとう、これからもそばにいてね」って。

「体」仲間=仕事仲間 [2008年01月25日(金)]
宝物が重くなって、スーツケースの数を増やして帰る、ライターの内田あやさんを空港で見送り、私のコーディネーターのお仕事が一段落しました。

今回の宝物探しの探検家の後姿を眺めながら、雑誌のお仕事はやっぱり楽しいなと実感。忙しい二週間を共にした二人の探検家が、一人は空へ、一人は海へと旅立ち、ほっと一息ついたところで、仕事の初日にゼロにしておいた車の走行距離メーターを見ると、なんと2300マイル(約3701キロメートル)を示していました。



ライターの内田あやさんとは、編集長の紹介ではじめてお会いすることになったのですが、年齢もほぼ同じで、出版社を退社後、書き仕事をしながら、体を動かす仕事をしているなど、共通点が多く、初対面とは思えないほどすぐに打ち解けました。

「ライターとして働くとき、もちろん体力は必要だし、取材、執筆、どれも体を使うけれど、ブレインワークとボディワークのどちらか、と聞かれれば、ブレインワークですよね、愛さん!」

あやさんは、ライターでありながら、ジャイロトニック、ジャイロキネシスというボディワークのインストラクターとして活躍中。私は、ダンサーと執筆業を両立中ということで、まずはその話題からはじまりました。
(ジャイロトニック、ジャイロキネシス、あやさんの活動を読んでみてください!)

「そうよね、私も、編集や書く仕事って、ブレインワークだけど、すごく体力がいるのよって、いつも思っていたし、みんなにもそう言っていたのね。でも、午前中は書き仕事、午後はダンサーとして働くようになってもう二年。ダンサーとして働いてみてはじめて、仕事で体を使うってこういうことなんだなってわかったの。あやさんは、小さいときからバレエをしていたから、私よりはボディワークに理解があったんじゃない?」

「う〜ん、でもボディワークを仕事として選んでから、わかったことがたくさんあるんですよ」

この取材日程の二週間、あやさんはライターの仕事に、私はコーディネーターの仕事に集中するため、普段のボディワークはお休みし、宝物探しに専念しました。あやさんとカメラマンさんと私の三人は、「読者が雑誌を読んだときに、私もマウイ島で宝物探しをしたいって思えるページを作ろう」を合言葉に、島のなかを朝から晩まで行ったり来たり、となったわけです。

宝物のためなら、雲ゆきを見つめて数時間、寒さに震えて数時間、視界を三百六十度に広げんばかりに目を見開いて数日、時には三人で話し合いを繰り返しながら……、探検隊は一日、一日を大切に過ごしました。宝物は、物ばかりではありません。マウイ島で暮らす、あの人、この人、インタビューの数々。人も物も、その存在は私たちに、言葉ではない想いを雄弁に語ってくれました。



実は、私はコーディネーターをしながらも、数日はショウに踊りにいかなくてはならず、その事情を理解してくださったあやさんのおかげで、「あ〜、体を動かしたい!」と唸らずにすんだのです。あやさんだって、唸りたいに決まっているのに。

ところがある日、あやさんを迎えにホテルの入り口に車をつけた途端、「あ、何かしたな」とはっきりわかるほど、あやさんの顔がすっきり、あやさんから漂う雰囲気も軽いのです。

「ホテルにジャイロトニックのクラスがあったので参加してみました!」と笑顔が。

長い取材のスケジュールのなかで、時間を上手に使って、リフレッシュを図るのは大事なことです。

「よかった〜、やっぱり体を動かすと気持ちがいいよね〜。実は私もショウで踊ってきたら、体が軽いもの」

ダンサーの仕事をはじめたころ、日々変わっていく体の変化に驚いたものです。お気に入りの道具を使い込んでいくと、愛着がわき、形も整い、風合いもでて、とてもしっくりと使い手に馴染むように、体も使い込むと自分のものになっていきます。自分の体は自分のものに決まっているのに、「ああ、私の体なんだな」という気持ちがむくむくと湧いてくるのです。

そうすると、自分の体の隅々にまで、自分の魂が満たされて、動くたびに、ぴったりと吸いついてきます。形のある体という存在に、形のない魂が満ちていく感覚。人は体を動かしていなくても、いろいろ考え事をしたり、何かを気遣っているでしょう。魂は休むことなく動いているのに、体は動かさなければ動かないのです。

「愛さんの体は、とってもバランスがいいですよ」と体を診るプロのあやさんに言われて、小躍りした私ですが、あやさんのような人と自分の体の話をできる機会はない、とばかりに質問攻め。

「バランスがいいと言われるとうれしいんだけど、でも、私、ゆっくり左にスピンをするときに、よっぽど集中していない限り、バランスが崩れるから、自分の体のバランスはよくないのかもと思っていた」と告白。

すると、「ゆっくりのスピンってすごく難しいからですよ。早いほうが簡単でしょう?」とあやさん。

「あとね、私、右中心に振付けられた踊りを、左中心に振りうつすときに、自分でも笑っちゃうくらい迷うの。あと、いつもこっちが前と思っている方向を向いて踊るのは楽なのに、じゃあ今度はそれを後ろむいてやってと言われると手間取ったりね」

「視覚で確認しているのに、それが確認できないことで不安になるんでしょうね。愛さんは鏡を使って練習しているの?」

「鏡はないの。見るときは周りの人を見て、あとは耳をすますだけ」

「それはいい練習の方法。だって、私のところにくるお客さまに、なんとか私を見て同じように動いてもらおうと思っても、人って鏡にうつっている自分をみて、動きを確認したくなってしまうみたいだから」

あやさんとの「体」談義はつきませんでした。

この宝物探しの旅のなかで、探検隊の三人がどんな宝物を見つけ、あやさんが重そうにひっぱっていたスーツケースの中身が何なのかは、三月になって、雑誌が発売になってからのお楽しみ。そのときには、宝物発見の裏側をみなさんにこっそりお伝えしますね。



私が見つけた宝物は、私が島時間を十倍速で駆け抜けた二週間の間、私を支え続けてくれた家族と友人たち、そして、新しい「体」仲間のあやさんでした。

年のはじめの宝物探し [2008年01月07日(月)]
すっかり口説かれてしまったのです。

「マウイで何か大切なものが見つけたいです。それを一緒に探してくれませんか」と、なかなかお仕事のお誘いとは思えないこの言葉に、恋に落ちてしまった私。

普段はあまりお引き受けすることのない、雑誌の取材コーディネートの仕事を、松の内もあけきらないうちから、二週間に渡ってすることになりました。



雑誌の取材コーディネートのお仕事とは、まず、雑誌の編集者さんやライターさんと、マウイ島についてのページをどのように作っていくかを話し合い、日本にいる編集者さんやライターさんに、ページのコンセプトに合うマウイ島のニュース、人物、物、場所などを紹介。

取材をする内容を決めた後は、取材依頼、交渉をし、スケジュールを組んでいきます。実際、取材がはじまると、取材クルーのスケジュール管理、移動、取材時の通訳など、取材をスムーズにすすめるための縁の下の力持ちになるというわけです。

ハワイには場所柄、日本のメディアに対応するたくさんのコーディネーターさんがいらっしゃるのですが、私はそのなかでも本当に小さい存在で、普段、コーディネートの仕事はあまりしていません。書き仕事とダンサーの仕事で精一杯ですし、私にとって、コーディネーターとは、自分の身を激しく削る仕事だからです。

今回、私がどうして、この仕事をお引き受けしたかというと、編集長のお人柄を知っていたからです。私のライフスタイル、仕事に対する姿勢などを十分に理解してくださったうえでの、とても彼女らしい仕事依頼のメールが届いたとき、私のなかでは「彼女からの仕事を断わることなんてできない」と答えが決まってしまっていました。

編集長から紹介のあったライターさんは、とっても心根がまっすぐな女性。すぐに意気投合し、どんどん湧き上がってくるお互いのアイデアが、面白いように企画になっていきました。

そんななかで、「マウイで、何か大切なもの、そう、宝物を探せたらいいな」という言葉が彼女からでたのです。

取材をすることは、宝物探し。ライターさんやフォトグラファーさんたちは探検家、コーディネーターさんは宝物探しに必要な地図を書く人になれるでしょう。

「でも、この宝物探し、ちょっと大変かもしれないですね」というライターさんの声は遥か遠く、すっかりこの言葉に口説き落とされてしまった私。数秒後には、目をつぶったまま、耳もふさいだままだというのに、「大変だって、やりましょうよ、宝物、見つけましょうよ、きっとできるはず」とお腹の声、そして、「絶対、見つかるんだもん」と根拠のない自信に満ちていました。

お店に並んでいる宝物を買おうというのではなく、迷うことのない確かな地図もまだなく、それでも一歩を踏み出すのは危ないのでしょうか。

私にはそうは思えませんでした。

一歩がでなければ、十歩もでないのです。ほんの小さな一歩でも、一歩であればそれは前進、十歩につながっていくのだと信じています。

新しい年のはじめに、宝物探しをはじめるなんて、ワクワクしますね。

みなさんは、どんなはじまりですか?

宝物探し、みなさんと一緒にできるように、書き綴ってみます。

どうぞお楽しみに!

プロフィール
神宮寺愛
エッセイスト×フラダンサー
東京での出版社勤務を経て、現在はエッセイストとして活動。マウイ島ワイルク在住。著書『心と体がピュアになるハワイアンな暮らし』(青春出版社・刊)他。フラやハワイ語等を学ぶダンサーでもあり、カノエアウダンスアカデミー所属。現在カアナパリビーチホテルのディナーショーにレギュラー出演中。