おへそに手をあてて……

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「魚見知り」なく [2007年11月08日(木)]
おへそに手をあてていたら、浮かんだことと言えば、今晩何を食べようかな、でした。

お腹がすいているときは、早くお料理ができて、すぐに食べたいですよね。そんなときは、一汁一菜、つまり、ご飯のほかに汁物と一種類のおかず、簡単メニューが一番。お米をといで、笊にあげ、お鍋にはった水に出し昆布を放りこんだら、魚を買いに走る……、これは日本で暮らしていたころと変わりません。

変ったのは私ではなく、魚売り場の魚たちの様相。

「おっ、青々として旨そうな魚じゃ」「う〜ん、このシャキッとした姿、よく黒潮にもまれてきたのぅ」「いいねえ、この時期は。身がぷりっとしいて、あぶらものってるし」と、魚たちが成仏できること間違いなしの食いっぷりが想像できる、魚売り場前の私。

処変わると……。



「んっ、青いのはいいが、やけに青いな」「えっ、こっちは赤いし、あっちは虹色、いったい身の色は何色なんだ」「えっと、君は水槽から来たのかな」「うーむ、姿かたちよりも大事なのは中身、とはいえ、このかたちはちょっとなぁ」となるわけで。

このころやっと人見知り、いいえ、魚見知りがなくなり、「どぅれ、食べちゃうぞぉ〜」と脅かせるようになってきたところなのです。

人見知りというのは見知らぬ人に対しておこるのであって、見知った人にはおこりませんよね。つまり、魚見知りをしていた私は、魚を見知ってきたというわけです。

まず、ハワイの魚料理といったら一番手にあがるのは、ポケ。これは生の魚の切り身を漬けたものです。アヒ(キハダマグロ)のものが圧倒的に多いですが、ほかにも、アク(かつお)、タコ、オピヒ(貝)、蟹などがポケに使われます。



味付けは天然塩、ククイナッツを砕いたもの、リム(海藻)、醤油、ごま油などを使うのですが、日本の魚料理の漬けと似ていて、馴染みやすいもの。一口大に切ったものなので、食べやすく、おかずにもププス(おつまみ)にも最適。たいていは、魚などの切り身のほかに玉ねぎやネギを刻んだものと和えます。

売り場などをのぞくと、キムチ味、海苔ふりかけ味、ワサビ風味など、バリエーションはとっても豊富、もっともシンプルなものを買ってかえって、家でオリジナルの味付け、合わせを楽しむのもあり。私は、納豆や胡瓜、大根おろしと混ぜて和風おかずにしたり、他の野菜と一緒にマリネしたり、ときには食べ残しを炒めものにしたりもします。

ところが私のお腹ときたら、しばらくすると、いつも馴染みやすい顔ばかりでは、と、ほかの魚たちに興味津々。まずは、作れるようになるには食べなくては、と、美味しいと聞く魚料理を食べることに専念。でも、美味しいければ美味しいほど、「食べるばかりではなく、自分でだって作りたい!」 

そこで、元船乗り、元板前の我が夫に指南役をお願いしたのです。

「魚臭いの嫌いなんだよね」「え、じゃあ、いままで鼻つまんで仕事していたの?」「新鮮な魚って臭くないんだよ」 つまり、新鮮かどうかを見分けるには、匂いをかげばいいのです。臭くない魚を買って帰ることだけはできるようになり、次は料理法を学ぶことに。

「ハワイの魚はね、あぶらがのってないから、たいていの魚は揚げ物にするといいよ。ほら、この間もフライド・アクレ(あじの揚げ物)の定食、美味しいって食べていたでしょ」

これを聞いて、どれだけ目の前が暗くなったことか……。自称・料理好きの私、お料理上手との褒め言葉を素直に受け取ってしまう私、なんと、揚げ物料理が大の苦手だったのです。しかし、そんなことは我が夫は百も承知。薄ら笑いを浮かべながら、こう言いました。

「魚にね、粉をつけて、揚げ物にするとちょうどいいよ。でも、揚げ物するとき、油の入った鍋に、遠くから魚を投げ込んだら危ないよ」

日本のガスコンロと違って、火加減が見えない電気コンロ、油の温度の調節をどうやってするんだろうという不安、油がピチバチはねるに決まっているという思い込みによる、揚げ物恐怖症。家で作る揚げ物のほうがヘルシーに決まっているのに、「外で揚げ物食べることが多いんだから、家では揚げ物する必要がないよね」と家族をマインドコントロールまでしていたのです。

しかし、食欲は恐怖よりも強し。

昨晩、これが新鮮で旨いに違いない、それに名前もかわいいし、と買ってきた「ムーン・フィッシュ」を揚げ物に。

「ねぇ、ムーン・フィッシュってどんなお魚? 切り身で売っているってことは、大きいの?」
「このくらいで、赤い魚だよ」
「げっ、どんな赤い色? まさか、食欲失うような赤色じゃないでしょうね」
「えっと、えっと、鯛の仲間だよ」
「あらっ、素敵、赤い鯛なんてお目出度いし! 高級感たっぷり!」

お目出度いのは私のほうなのでしょうけれど、魚見知りもなくなり、揚げ物恐怖も解消できた、私の食欲に、おへそに手をあてて感謝しなくていけないですよね。
この記事のURL

http://www.cafeblo.com/piko/archive/16
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コメント


ムーンフィッシュとはですね、大きくて、お月さまみたいにまんまるに近い形、色は派手! 赤と朱とからしいです。元船乗曰く、船ではムーンフィッシュを「芸者」って呼んでいたと言ってました。楽しそうな宴会よね。
Posted by:ai  at 2007年11月10日(土) 03:39
わはははは! と出だしに笑い、そして・・・んむむむむむぅ、おいしそうです。ポキ、食べたい! でもあの、揚げものするとき遠くから投げ込むのは危ないですね・・・(かなりはっきり、想像しちゃいました)。ムーンフィッシュ、名前も素敵。形がお月さまに似ているの?(まんまる??)
Posted by:葉  at 2007年11月08日(木) 12:41
こんにちは!
ブダペスト在住のsunです。
大変ご無沙汰しております。
ブログスタートのお知らせ、
ありがとうございました。

むむむん、
写真のお魚に発情しています!
海のない国に住んでいるため
慢性新鮮な魚欠乏症です。
おへそに手をあてたら、
ぽすっと情けない音がしそう・・・(笑)

これからのブログの更新
楽しみにしていますね!
Posted by:sun  at 2007年11月08日(木) 10:05
プロフィール
神宮寺愛
エッセイスト×フラダンサー
東京での出版社勤務を経て、現在はエッセイストとして活動。マウイ島ワイルク在住。著書『心と体がピュアになるハワイアンな暮らし』(青春出版社・刊)他。フラやハワイ語等を学ぶダンサーでもあり、カノエアウダンスアカデミー所属。現在カアナパリビーチホテルのディナーショーにレギュラー出演中。