ティッシュアート、模写や習作をノッケテいきます



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あるプリンシバルの話 [2007年07月25日(水)]
「さてさて、なんの話だったか」とOrega(オリガ)は言う。
そろそろ冬に移りゆこうかというこの季節にあって、額に大粒の汗をかき、フーフーと大仰な息を吐く。あごの下には幾重にも脂肪がつらなり垂れ下がっている。
120キロはあろうかという体躯を窮屈そうにベッドに横たえ、アルコールで濁った眼は虚空を見つめている。

「元はハバロフスクの出でね、10才ですでにオリンピック体操の強化選手だった」とオリガは言う。
今のオリガを見て、この女性がかつてボリショイ・バレエ団のプリマ・バレリーナであり、アメリカン・バレエ・シアターのプリンシバルとして名をはせた超一級のバレリーナだと誰が思うだろうか。
しかしそれは紛れもない事実である。

ロシアの中でも精鋭中の精鋭、その類まれなる才能を活かして、オリガは少女時代、体操で頂点を目指していた。そのオリガの高い身体能力を買って、バレエの世界に引き入れたのは天才コリオグラファーとして当時の名声を欲しいままにしたラブレンチだった。

「ウラジオストク駅からモスクワまで一万キロの旅さ、12歳の子供がたった一人で未来を切り開こうとしていたってわけさ」と語るオリガの眼には一片の誇りも、懐かしさをも見出すことができなかった。





Posted at 20:01 | art+ | この記事のURL
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