たおやかな光

“たおやか”とは、しなやかさを表します。ニューヨークで生まれた風とたおやかに生きる光を吸収した執筆家・入澤依里がよそおいも新たに、日々の想いを綴ります。

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幸運の女神が微笑む安住の地を求めて

2008年12月31日(水) 22:59
日本に着きました。予想通り、ニューヨークを離れるときは、ばたばたでした。

結局、出発の朝ぎりぎりまで、一時間だけしか眠れずにパッキングをすることになりました。

とは言うものの、追加で荷物を発送したり、ケーブル会社に解約に行ったりしていた帰国前日、慌しい合間をぬって、予定通り、自由の女神様には、最後の挨拶に行ってきました。
雲間から時折射す光は、とても崇高で、最終日をドラマティックに彩ってくれました。


寒空にベスト・ショットを狙って1時間半も粘りました

そして、最後の晩餐は最近までお仕事を手伝ってくれていたR子ちゃんと。
彼女はかつてニューヨークで働いていましたが、5年ほど前に日本に帰り、今年、再び、この街に戻ってきました。そんな彼女は、5年前の帰国時、「飛行機の窓から日本が見えてきたとき、涙が出てきた」そうです。

同じように日本への帰国を決めた知人に話を聞いてみると、皆一様に、自分で決めたこととはいえ、ニューヨークへの郷愁がなかなか拭えなかったと言います。


誰かの家を訪れたかのような瀟洒なイタリアン・レストラン「sfoglia」。私のお誕生日にもR子ちゃんに祝ってもらったお店です。何度行っても期待を裏切らない、お気に入りのイタリアン・レストランでした

私の場合は、どんな気持ちになるかと思っていましたが、タクシーに乗り込んで振り返ったとき、お見送りに来てくれたY美ちゃんの姿と愛着のある我がアパートが小さくなっていき、やがて、クライスラー・ビルディングさえも見えなくなった瞬間が一番ぐっときました。


タクシーでJFKに向かう途中、タクシーの中から見たマンハッタン

さらに、機内で「New York」→ 「Tokyo」と表示されているTVモニターを見ていて、もう、後戻りはできないんだなあ…と。万感胸に迫りくるかんじでした。


ニューヨークを“卒業”するとも思わずに手配したフライトでした

成田に着いて実家に向かう途中、車中から夕焼けに映える富士山のシルエットが見えました。今まで、何十回も往復していたこの道中で、このような光景が見えたのは、今回が初めてでした。燃えるようなオレンジに浮かび上がった富士山はまるで影絵のようで、本当に美しかったです。この光景は何かを暗示しているような気がしました。


レインボー・ブリッジから撮った夕景。残念ながら、富士山の写真は撮れなかったのですが、美しい光景でした

日本に戻って3日目ですが、毎日、ニューヨークの夢を見ます。
そして、不景気なニュースばかり聞こえてくる上に、家族のことなど、既に、いろいろなことが窮屈に感じています。しかし、一度腹を括ったこと。一見マイナスに思える状況を真摯に受けとめて、プラスに変えていくことを目指したいと思います。

私自身の心境と環境、体調については、引き続き、お伝えしていきます。2009年もよろしくお付き合いください。


[ The Very New York ]
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たおやかな光

2008年12月26日(金) 17:00
前回、お知らせしましたように、次回のブログから、『たおやかな光』というタイトルで装いも新たに日々の想いを綴っていきます。日本及び世界のどこにいても私の想いをシェアさせていただきたいので、このままのアドレスで引き続きご笑覧ください。


礼拝が始まる前、長いキャンドルに光が灯されたトリニティ・チャーチ

さて、皆さん、クリスマスはいかがお過ごしでしたか?
私は、毎年、教会に行くようにしています。今年は、去年、深夜の礼拝に行って、とても感動した、グラウンド・ゼロの傍のトリニティ・チャーチの朝の礼拝に出席しました。


クリスマス・リースが掲げられているグラウンド・ゼロの工事現場

お話のテーマは「光」でした。「光は、暗闇の中で輝く。そして、どんな暗闇も光にはかなわない」という内容でした。一見、お先真っ暗に思えるような状況でも、自分自身の中に希望の光がある限り、そこに向かっていけるんだと、お話を聴いていて改めて確信しました。

正直なところ、日本にいったん戻った後、自分がどうなるのか、まだ、まったく想像がつきません。でも、私は悲観していません。なぜなら、夢を追求するために、私の中に希望の光があるからです。人には無謀に思えることでも、自分の心の中の光が消えない限り、どんなことがあっても、がんばっていけるように思います。


「The light shines in the darkness」と記されているトリニティ・チャーチのフラッグ。去年同様のデザインで彩られています

ところで、今日の礼拝ではイエス様の血と肉を象徴するパンと葡萄酒を分かつキリスト教の儀式・聖餐式が行われました。どういうわけか、ど真ん中の一番前に立つことになり、誰よりも一番最初にパンと葡萄酒を司祭から受ける恩恵に授かったのです。パンと葡萄酒をいただいて賛美歌を歌っていたら、なぜだか涙が止まらなくなってしまいました。

そのとき、この涙の原因は、何なのか自分でもわかりませんでした。ニューヨークへの郷愁なのか、それとも礼拝の崇高さに感動したためなのか…。しかし、今、思うと、その両方だったような気がします。

礼拝が終わった後も尚、心がほかほかしていたので、司祭にその気持ちを伝えに行きました。「初めてお話させていただきます。去年も今年も礼拝に伺って、とても感動しました。明後日、ニューヨークを発つのですが、最後にこの教会に来ることができて、私は本当に幸せです」と。そうしたら、「また、この街に戻ってくるでしょう?とはいえ、新しいスタートが祝福に包まれ、あなたがすべてのことから護られることをお祈りしています」と両手を包み込んで、暖かいお言葉をかけてくださいました。なんだか、新しい始まりに向けて、優しく背中を押してもらえたような気がしました。


グラウンド・ゼロの目の前にある消防署の脇に据えられたクリスマス・ツリー。オーナメントの代わりに犠牲になった消防士の写真や記念品が飾られていて、見ているだけで切ない気持ちになりました

来年、40歳になる節目の年に新しいことを始められる私はとてもラッキーだと思います。32歳のとき、同時多発テロの映像を日本でライブで見て大いにショックを受け、大好きなニューヨークの役に立つことがしたいと思ってこの街に移り住むことを決心しました。

学生からスタートした私のニューヨーク生活。「30歳を過ぎて、ましてや会社を辞めてまで語学学校の学生に戻るなんて」という人もいましたが、そのとき、私は自分の夢の実現へのスタートが遅くも早くもなく、30過ぎの学生生活も悪くないと思いました。

もともと、何事も年齢に縛られず、心が熱くなったときが、“実行すべきとき”だと思っていましたし、同時多発テロによって命を失った方々の無念さを思うと、一度きりの人生、悔いなく生きようと思ったので、自分の気持ちに素直に従いました。

当時の私に壮大で綿密な計画があったわけではなく、「ニューヨークのことを記事にして日本の人に配信することで、同時多発テロ後、客足が遠のいてしまったこの街へ、一人でも多くの人に再び関心を向けてもらいたい」という想いがあっただけだったのだと、今、振り返って思います。


グラウンド・ゼロの傍のツリーの中で一番印象的だったオーナメント。「Sunrise:1977, Sunset:September11, 2001」と書いてあります。つまり、sunrise=生まれた年、sunset=亡くなった年を意図しているわけです。24歳で亡くなった彼の無念さと、残されて、このオーナメントを作ったご家族のことを思うと、心がとても痛くなって目頭が熱くなりました

そして七年経った今、再び見えない力に導かれて決断した“ニューヨーク卒業”ですが、この街で培った、たおやかな生き方と、この街を吹き抜ける風が、これからも、私を支えてくれるような気がします。

もちろん、それなりに不安もありますし、これから、きっと大変なことの方が多いことも予測できます。悲観はしていませんが、楽観もしていません。何が待ち受けているか楽しみではありますけどね。

さらに、前述しましたように、これで、このブログは終わりではありません。むしろ、New beginningだと思っています。しかし、ニューヨークからの配信は残念ながらこれが最後となります。この場をお借りして『ニューヨークの風』の中締めとさせていただき、改めて、皆様に御礼を申し上げたいと思います。

いつも素敵なコメントやメール、お手紙を下さって励ましてくださったり、病気に立ち向かうことをシェアしてくださった読者の皆様、本当に本当にありがとうございます。私が、こうして前向きにがんばれるのも、皆様が、心から紡ぎだしてくださる暖かい一言一言に支えられているおかげのように思うのです。

つらいときや自信を失いかけてへこたれそうになったときに、皆様のお言葉に、どんなに励まされたことか…。cafeglobeにコラムを持つことができたからこそ、皆様に出会えたのだと思っています。矢野社長をはじめ、担当編集者の小松さんやcafeglobeのスタッフの皆様にも、この節目に心から御礼をお伝えしたいと思います。

これからも、折に触れて心情を吐露していきますので、引き続き、どうぞよろしくお付き合いください。
Happy New Year!!
[ The Very New York ]
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プロフィール
Profile
入澤依里

入澤 依里 Yori Irisawa
執筆家。NYに7年間移住し、『ELLE Japon』 『ELLE a table』などの雑誌や、ウェッブメディア『nikkei BPnet』内でコラム『国境を越える風』などに寄稿。 現在、日本を主な拠点とし、“世界の子供のために役立つこと”をライフワークにするすべを模索中。 翻訳絵本『THE KISSING HAND-キスのおまじない』(アシェット婦人画報社刊)は「全国学校図書館協議会・選定図書」「日本図書館協会・選定図書」に認定された。 翻訳書『静かに恋を見つめてみませんか?』(主婦の友社刊)、『ZAGAT TOKYO』(英訳)がある。


『ニューヨークの風』はこちら

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