ニューヨークの風

数々の刺激とエネルギーに満ちた街、ニューヨーク。現地と日本を行き来するジャーナリスト・入澤依里さんが綴るのは、“暮らしているからこそ感じるニューヨークの醍醐味”。グルメからエンターテインメントまで、最新の話題を現地の空気と共にお届けします!

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続・ニューヨークの風

2008年11月21日(金) 05:20
N.Y.に戻りました。成田を30分ほど遅れて出発したのに、追い風のおかげで1時間ほど早くJFKに着きました。幸先の良いリ・スタートです。


寒空に映えるクライスラー・ビルディング

JFKのエントランスから出たとたん、0度前後のキーンと張り詰めた寒さが私を迎えてくれました。ここまでくると「寒い!」という域を通り越しています。この非常にN.Y.らしい寒さ自体は嫌いではありません。

本当は、体に負担をかけないために、タクシーで帰ろうと思っていたのですが、タクシー乗り場で順番を待つことを考えたら、きっと寒さが増すだろうと、目の前に偶然にも止まっていたバスに乗り込んで、マンハッタンのグランド・セントラル・ターミナルに向かうことにしました。


厚着をした人々が忙しなく行き交うグランド・セントラル・ターミナル

グランド・セントラル・ターミナルから自宅に向かう途中、2nd Avenueで「Nelson & Winnie Mandela Corner」という、ネルソン・マンデラと彼の前妻の名を冠したアヴェニューの表示を見つけました。この表示は、オバマが大統領に決まる前(Before Obama)にはありませんでした。これもオバマ効果の一端なのでしょうか。


今まで見たことがなかった道路表示

大きなバッグを持ってバスに乗り込む、様々な国から帰ってきた人々。
仕事と割り切るも、めんどくさそうに荷物を出し入れするバスの運転手。
かすんだ空の向こうに見えてきたツインタワーなき摩天楼。
地下から蒸気による白い煙が沸き立ち、サイレンが鳴り続けるマンハッタン…

どれもバスの車窓から眺めた光景です。見た目では、あまり変化はありませんでしたが、オバマが大統領当確後(After Obama)のN.Y.は、心なしか、落ち着いた風が漂っていました。

また、金融不安の影響で失業者の増加し、犯罪率も高まっていると日本でも報道されていましたが、早速つけたテレビでも、オバマの名前でののしられながら、黒人の少年が襲われたことがニュースになっていました。

オバマの光と、金融不安の影がおりなすコントラストを感じた到着初日のNYです。


青空とのコントラストが美しいアメリカン・フラッグ

実は、今まで、日本やいろいろな国からN.Y.に帰ってきて、マンハッタンに向かう途中、クライスラー・ビルディングやエンパイア・ステイト・ビルディングが見えてくると「ああ、帰ってきたんだ〜」と思ったものですが、今回、バスでマンハッタンに向かいながら、同じ景色を目にしたとき、不思議なことにあまり感慨深くなかったのです。

日本での約2ヶ月の病気療養で里心がついたのか、精彩を欠いているN.Y.の空気を瞬時に感じ取ったのかはわかりません。
次回は12月下旬に日本に戻る予定ですが、NYの輝きと復活を信じる私は、それまで、元気なN.Y.の一面を探してみます。


部屋から見たイースト・リバー

時差で変な時間に目覚めてしまいました。外気は氷点下。セントラル・ヒーティングが効いた部屋でも隙間風を感じ、手動のヒーターをつけました。
明日も0度前後で雪になるようです。

[ NYの風に乗って ]
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病気によって再認識、人生で本当に大切なこと

2008年11月17日(月) 08:00
今週、新たな気持ちでN.Y.へ戻る予定です。



以前より、体中の痛みが軽減し、おかげさまで体調は、だいぶ回復しました。しかし、正直なところ、パーフェクトではありません。雨の日や曇っている日には、頭が痛くなって、なかなか起きれないし、PCを見ているとすぐに目がかすんできます。症状の中でも目のかすみが一番厄介らしく、すぐには治らないこと。この症状が治まったときが、“完治”なのかなと自分で思ったりしています。


PCのキーボードの上に乗るミケ。私の目を心配して…と言いたいところですが、肉球の写真を無理やり撮ろうとしたら怒り、こうすることで彼女なりの抵抗を表したかったようです

さらに、ちょっとしたことに傷つきやすく、精神的な圧迫やダメージがあると、頭や首、肩が痛み出し、目のかすみがひどくなります。しかし、お医者様に、渡米することへの承諾を得ることができました。「基本的に、何をしてはいけないというのはないし、薬さえあれば、どこででも過ごすことができる」のだとか。念のため、NYで緊急事態が起こった場合の、線維筋痛症の専門医も紹介していただいたので安心です。

10月初旬に病名が発覚し、治療が始まって以来、1ヶ月半の日々…、痛みで何もできずに暇をもてあますか、精神的に落ち込むか、どちらかだと思っていたのですが、今思うと、人生で、かけがえのない時間を過ごすことができたように思います。

今までは、仕事と自分のことで精一杯で、いろいろな人のことを気にかけつつも、何もできませんでした。しかし、こうして、ゆったりとした時を過ごすことができる今、心から、その人たちの幸せや健康を心から祈ることができるようになりました。


昨年の11月16日に亡くなった甲斐犬のブルータスと父。父の最愛の犬であり、パートナーであり、常に物静かで、頼もしく、一家を護ってくれていた忠犬でした

中でも、今まで、親不孝を重ねていた私は、忙しくしていたときから、何かに追われることなく、両親とゆっくり過ごしたいと思っていました。それが私にできる、せめてもの親孝行だと思ったからです。そして、今回、念願かなって、両親と、彼らの生活のリズムを尊重しながら、のんびり過ごすことができたことは、私の病気にとって、一番の特効薬だったように思います。
犬や猫たちと普段以上に“蜜月”を過ごせたこともかけがえの無いとても幸せな時間でした。


暖かい日差しの中で日向ぼっこして幸せそうなカイ(左)とポテ(右)

彼らと過ごした時間は、寒いN.Y.で、がむしゃらに働いていたら、きっと味わえなかったことでしょう。
変な話ですが、病気になったのも、神様が与えてくださった人生を見つめなおすための特別な時間のように思えました。


「C」の字の上で、白いポロシャツを着て両手を振っている人たちが見えますか?すぐに再会できるとわかっていても、毎回、帰国時には成田まで送ってくれ、私がタラップを通って機内に入って見えなくなるまで手を振り続けてくれていた父と母の小さき姿です

そして遅ればせながら、自分にとって、本当に大切にすべきことや人がやっと明確になってきました。さらに、こんな状態でも、夢をあきらめないでいようという不屈の精神が身についたことも、優柔不断な私にとっては、むしろ、良かったのではないかと思います。

“すべては益になる”―これは、私の座右の銘なのです。「どんな辛いことが起こっても、それは何か良いことにつながるきっかけであって、人生に無駄なことは何も無い」と言う、このメッセージの意味を、病気を通じて改めて実感するに至りました。

ところで、皆さんにとっての人生でかけがえの無いことって、何ですか?
[ NYの風に乗って ]
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プロフィール
Profile
入澤依里

執筆家。NYに7年間移住し、『ELLE Japon』 『ELLE a table』などの雑誌や、ウェッブメディア『nikkei BPnet』内でコラム『国境を越える風』などに寄稿。 現在、日本を主な拠点とし、“世界の子供のために役立つこと”をライフワークにするすべを模索中。 翻訳絵本『THE KISSING HAND-キスのおまじない』(アシェット婦人画報社刊)は「全国学校図書館協議会・選定図書」「日本図書館協会・選定図書」に認定された。 翻訳書『静かに恋を見つめてみませんか?』(主婦の友社刊)、『ZAGAT TOKYO』(英訳)がある。


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