更新日:2011年4月06日



霧島の麓で見た秘祭と、日本の森のいま

カテゴリ:今日できることをしようカテゴリ:地球温暖化  2010年12月22日

 先日、九州は宮崎県高原(たかはる)町というところで植林イベントに参加してきました。主催の「プレゼントツリー」は、NPO法人環境リレーションズ研究所が行っている、プレゼントという形を通して植林をしようというプロジェクト。国内外で植林をしているのですが、今回はそのひとつ、南九州は霧島山系のふもとの植裁地を訪問しました。

 霧島連山のひとつ、高千穂峰の裾野は植林されたスギ・ヒノキの暗い緑に覆われている面積が多く見られます。そのところどころに本来の広葉樹林の紅葉も混ざるぽわんとした褐色が混ざっている。ここでも、スギやヒノキを切り倒した後植林されていない「植林放棄地」が増えていて、プレゼントツリーではそこに植林をしているのだそうです。
 

霧島連山の火口湖のひとつ、御池。このあたりは天然林かそれに近い照葉樹林(広葉樹林)が広がっていて、野鳥の森になっている。まさに生物多様性の幅広そうな豊かな森!


植林放棄地に去年植えられたスタジイ。この大きさでもシカやウサギに食べられてしまう被害が多く、定着できないことも多いとか。

 植林放棄地ができてしまうのは、せっかく育ったスギやヒノキがひどく安い値段でしか売れず、その後の植林をしたくても費用を山主さんが捻出できないからなのだそうです。

 裸の山は生き物を育む力が極端に落ち、山に降った雨水を保持することもできません。地元の有志の方々がボランティアで天然林に近い森を再生しようと活動を始めたけれど、過疎地でもありなかなか弾みがつかず悩んでいらした。そこでプレゼントツリーとの出会いがあり、このプロジェクトになったのです。


野生動物の勢いでふざけていた子どもたちも、いざ苗木を植えるとなると真剣! あっという間に予定の200本が完了!

 イベントでは、地元高原や近隣の町の子どもたちに集まってもらいました。地元の山に興味や親近感を持ってもらうのにとても効果がありそう。今回の新しい植裁地5ヘクタールには、道路沿いにヤマザクラ、その内側に動物たちの餌になるヤマグリ、スダジイなどを植えていきます。

 このとき子どもたちにお話をしてくださった林業組合の方によると、いま子どもたちが飲んでいる水は、70年前にこの山に降った雨なのだとか。山は水を保つダムとはよく聞くけれど、そこまでゆっくりなのか!と驚きました。「今日みなさんが植える木は、みなさんの子どもや孫が飲む水を作ってくれるんですよ」という言葉が重く響きます。


振り返ると、坂本龍馬が引き抜いたという天の逆鉾が山頂にある高千穂峰のどこか神秘的な姿が。

 訪れた日には、ちょうど地元の神事祓川神楽(はらいがわかぐら)が開かれていました。この日は、神楽を見に来た人は、知らない人の家でも上がっておそばに呼ばれていくのが習わしなのだとか!

 私たちも、神楽の保存会会長さんのお宅でおそばをごちそうになりました。一緒にいただくのはもちろん焼酎の「霧島」。会長さんのお座敷にはおそらく町の方が持ってきた熨斗付きの霧島が100本くらいありました。さすが九州……。


手前はプレゼントツリーのスタッフや町役場の方ですが、奥の方は地元の方です。おそばやおつまみ、お酒が振舞われます。


ゆずの香りたっぷりの手打ちのおそば! あっさりしたおだしでやさしい味。おかわり自由!
 

「祓川神楽」は、夜7時から翌朝まで夜を徹して舞われる。観光客も少なく浮かれた雰囲気もあまりなく、高千穂峰のふもとの暗い森の間で、むしろ神聖な雰囲気で進んでいく秘祭。とても貴重なものを見せていただきました。

 こんなマジカルな雰囲気を持つ森と山を後にして、東京に戻る途中ずっと考えていたのは、やはり国産の材木がちゃんと生産者の商売になるようにしたいということ。日本は世界最大の木材輸入国。世界中の森を伐採しては買っていて、日本の森は枯れるがまま。

 日本の木材がなぜ使われないのか。流通経路がなくなっている? 均一な質の材がまとまりにくいから、大量生産の時代に大手住宅メーカーに敬遠されている? 地元材に詳しいローカルな大工さんや工務店さんたちも消えつつある? 輸入材の商社が強すぎる? まったく素人頭でぐるぐる考える。関税を撤廃するTPPなどを結ぶならさらに国産材への対応をしないと状況はますます悪化しそう……その動きはどうやって作れる?などなど。

 国産材が、日本の森が、というトピックは知識としては知っていたけれど、その現場を目の当たりにして本当に考え込んでしまいました。いいきっかけでした。


今回一緒に旅をした、プレゼントツリーの顔をつとめるタレントの末吉里花さん。東京の港区エコプラザが国産間伐材で作った『和RE箸』を持ってポーズ。和RE箸は使用後はおが屑にして再利用する実験プロジェクト!

 そしてcafeglobeのブログに書きながら思うのは、この問題もまた、私たちにとって他人事ではないということです。「誰かがなんとかしてくれるだろう」では、この状況は悪化していく一方でしょう。流通や産業のこと、税金などのことは、国会や政治が決めること。つまり私たちが選ぶ政治家が動かすこと。私たちにも解決に向かって物事を動かす力があるということです。


| コメント (0) | トラックバック (0)



このエントリーのトラックバックURL:







青木陽子
Cafeglobe
ファウンダー・取締役
女性誌編集者時代、自分を含めまわりの女性たちが本当に読みたい媒体がないことに気づき、1999年に現社長の矢野とともにCafeglobeを立ち上げ、6年間編集長をつとめる。現在、パートナーの暮らすロンドンと東京の二重生活を実践中。
更新終了のお知らせです (4月06日)
東北と福島を見ながら(3) 寄付先さらなるオススメ (3月29日)
東北と福島を見ながら(2) 寄付先のおすすめです (3月18日)
東北と福島を見ながら(1) 全国で節電をしませんか (3月17日)
余震に揺られながらPCに張り付いています (3月13日)
iPhoneからの乗り換えもアリ? アンドロイドの「ストリーク」をお試ししました (2月21日)
裸のシェフ、料理する環境アクティビストに (1月25日)
ネパールの子どもたちに本を贈ろう (1月15日)
年末に、友人を紹介させてください (12月30日)
霧島の麓で見た秘祭と、日本の森のいま (12月22日)
ゆるい話題です
フェミニズムというかヒューマニズム
ロンドン
自転車ラブ
GRP 2006/貧困編
地球温暖化
東京
今日できることをしよう
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年

illustration / Nakagawa Isami

※お断り
・Cafeglobeの判断により、断りなくコメントやトラックバックを削除させていただくことがあります。ご了承ください。
・当ページの「コメント」に掲載されている「投稿者」名は、Cafeglobeの登録メンバー名と同一人物とは限りません。
2005年3月までのバックナンバー(from the editor)はこちら>>