ちょっと前ならノリピー事件に押尾学事件、小沢氏の献金疑惑など政局ニュース……マスコミがその時々の人気のトピックに飛びついて、バランスが悪いほどにそればかり報道するのは洋の東西を問わず。
でもイギリスで少しでも安心できるのは、マスコミの姿勢を痛烈にからかって楽しむカウンターパンチとしてのカルチャーがあること。毎週、その時々のニュースの内容やその報道のされ方をおちょくる1時間程度の番組がゴールデンタイムのBBCなどに数本あり、それぞれのメディアの意向や事情、お家芸もなんとなくわかってきてためになります。
そんな文化だからこそ成立するのがこういうニュース。リベラル寄りの高級紙『Guardian(ガーディアン)』のサイトで先週末にアップされたビデオです。

この動画記事のタイトルは、「この動画の撮影で、動物虐待は行われていません」というお決まりのフレーズ。これもすでにおちょくっているのでしょう。
6月に、ロンドン都心で、家で寝ていた赤ちゃんが野性のキツネに襲われて大怪我をするというとても気の毒な事件がありました。用心深く臆病で知られるキツネが、いくら窓が大きく開いていたとしても、人家の2階まで上がって子どもに噛み付くというのは前代未聞で、ノリピー覚せい剤ほどではないにせよ、マスコミも「キツネが凶暴化!」「キツネが増えすぎ!」とヒステリックに報じました。
保守派メディアの中には「赤ちゃんが殺されてからでは遅い、キツネ狩りはやっぱり必要! 再合法化を!」というような声を紹介するものも出てきました。キツネ狩りはイギリス上流階級の「伝統的なスポーツ」ですが、たくさんの猟犬でキツネが走り疲れて倒れるまで追い込むため、残酷すぎるとして数年前に違法化されています。でもキツネ狩りをしたい人もまだ多いのです。
「このメディアの興奮ぶり、キツネ狩り合法派の声まで紹介する無節操ぶりに、このままではキツネ狩りが復活してしまうかもしれないと危惧した」映画監督とその友だちが企てたのが、「汚いキツネどもは俺たちが退治してやるゼ」と覆面でキツネをたたき殺す若者たち……を演じてウソのトピックを仕立てるというもの。「ヒステリックになっているマスコミは、キツネに関することなら、どんなアホな内容でも報道するんだってことを確認してみたかった」とこの動画内で動機を説明しています。
ウソのキツネ狩りの様子をビデオに撮り(友だちの犬やキツネの剥製を借りりるなど気合入ってます)、ネットにその様子をアップしたところ、目論見はヒット! タイムズにガーディアン(この記事が掲載されているのもガーディアン)など、多くのメジャーメディアが報道したのでした。BBCのロンドンニュースでも紹介されて、ヤッター!状態。
もちろんこの第一報のニュース(若者が社会の味方気取りでキツネを撲殺)にはネットなどで非難が殺到、人々の怒りはちょっと想像の範疇外だったようで、「ニュースで心を傷めた方には心からお詫びします」と謝っています。
で、この「ウソでした」という第二報のニュースに対しての読者コメント欄を見ると、ケシカランと怒っている人もいますが、けっこうな数の「いや、マスコミをおちょくったのはよくやった!」という声もあります。
これが日本だったらどうでしょう? ちょっと許されない雰囲気になりそうな気がします。そもそも、マスコミ自身がおちょくられることに慣れていないので、怒ってしまってこんな記事は紹介しないかもしれませんね。