日本語と英語、ふたつの言葉の間を行き来していると、ときどき「日本語(英語)にもこの言葉があったらいいのに」と思う言葉にぶつかります。ほとんどはことわざだったり価値観や概念など抽象的なことを指す言葉で、そのひとつにcafeglobeを始めた頃からずーっと悩ましいと思っている「ethic / ethical」という単語があります。
ethic
名詞(特定の文化集団の)価値体系, 倫理;道徳
━━形容詞=ethical
<プログレッシブ英和中辞典より>
日本語にもちゃんと「倫理・道徳」という言葉はあるのですが、「倫理」も「道徳」もどうもまだ中国語から輸入されたままというか、あまり肌に近い感じのしない言葉ではないでしょうか。
英語で「エシカルな暮らし(ethical living)」と言えば、それはたとえばゴミの分別をきちんとする、エネルギーを浪費しない、大量消費に与しない、クルマになるべく乗らない……といった地球にやさしい系のライフスタイルから、フェアトレードやまっとうな企業の商品を選んで買ったり、環境や人権を守るNGOに寄付をしたりすることなどを含みます。
「自分のことだけじゃなく、人や地球のことを考えて、自分の振る舞いを決める」というような、視野の広さや賢さを感じさせるのが、「エシカル」という言葉に含まれるニュアンスではないかと思うのです。今日本でよく言われる「地球にやさしい」や「エコ」に近いんですが、それらのほんわかしたニュアンスよりもう少し、問題の本質を正面から見極めようとする積極性のある感じ。受け身じゃなくて、能動的。
社会の中で人々が共有する価値観や問題意識は、言語化されて初めて広く伝わります。「KY」という言葉が流行って、いっそう「KYな人」や「KYな行動」への風当たりが強くなったりするように。だから私としては、このエシカルという言葉に相当する、ほんわかエコじゃなく、人々が積極的に自分の変える力を信じて行動するスタイルを示す言葉を見つけ出したいし、広めたい。でもどうも見つからなくて苦戦が続いています。「サステイナブル」という言葉がいまいち広まっていないように、「エシカル」とカタカナにしただけじゃ、やっぱりわかりにくいですよね。
そういえば、「空気を読む」という言葉は英語にはないみたいです。言葉がないってことは、「アイツはKY」といって揶揄されにくいということ。空気を読めという無言のプレッシャーが比較的少ない社会だということでしょう。