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ラクに見える道にはご用心!? 『私がクマにキレた理由』  [2008年09月19日(金)]
 


スカーレット・ヨハンソン主演の最新作『私がクマにキレた理由(わけ)』。スカーレットがナニー(子守)役に挑戦、という情報だけでこのタイトルを聞いたときには、新人ナニーが奮闘して最後はジーンと泣かせるコメディ? と勝手に内容をイメージしていたのですが、かなり大きな勘違い。人生について考えさせられる要素がギュッと詰まっている作品でした。特に「やりたいことが見つからない」とか、「いまの仕事、なんか違う」と迷っている人にはリアルに響くものがありそうです。

大学を卒業して母親に勧められるまま、銀行の面接を受けた主人公のアニー(スカーレット・ヨハンソン)は、面接官に自己PRをするように言われて、自分が何をやりたいのかがわかっていないことに気が付き愕然とする。行くべき道がわからなくなって途方にくれているところに舞い込んだのが、セレブ一家の息子の面倒を見るナニーという仕事。母親には内緒のまま、とりあえずマンハッタンのアッパーイーストで住み込み生活を始める、というところから話が展開していきます。

「ラクに見える道こそ地雷だらけなのよ」。これは、アニーがナニーの仕事についたときの親友からのセリフなのですが、アニーはそれをすぐに実感することに。セレブな雇い主の“ミセスX”は育児を完全に投げ出してショッピングとセミナーに忙しい日々。そのシワ寄せで、プライベートな時間がまったく取れないアニー。やってられない!と思っても、すでに息子のグレイヤーはアニーになついているので、裏切って逃げるわけにもいかない、という悪循環。外から見たら完璧に見えるセレブ一家も内側ではみんなが満たされずにイライラしているし。まったくラクではない、というわけ。



アニーのような状況って、けっこうよくあることだと思いませんか? 勝手にラクそう、というイメージで始めることに限って実際とのギャップに愕然としたり、現状は嫌なのに人間関係のしがらみが気になって辞められず、ずるずるとした状態が続いてしまったり。

好きでもないし、ラクでもないのにもう引き返せないなんて、かなりサイアクの事態ですが、ちゃんと心を決めて誠実に対応すれば十分に軌道修正ができる、ってことをアニーの行動が教えてくれます。最後まで観ると、このタイトルもストンと納得できるのです。

アニー役のスカーレット・ヨハンソンは、これまで『マッチ・ポイント』や『ブラックダリア』で見せた妖艶でミステリアスな役とはまったく違って、今回はごくごくフツーの女の子を演じています。裏表のないタイプで、そそっかしくて、人生にも恋にも迷ってばかり。ファッションも、常にブランド物で着飾っている雇い主のミセスXに比べると、本当にフツーの大学生のファッション。そういう意味ではとても感情移入しやすいキャラクターでした。こういうちょっとダサめのスカーレットも可愛くっていいですよね。

公開はもう少し先の10月11日です。

ところで、映画のチケットってみなさんどうしてますか?
私は試写会で観ることが多いとはいえ、誰かと一緒に観たい場合や、試写会で逃した作品をチェックするのにけっこう劇場を利用します。予定を立てて行動するのが苦手だからと、つい当日券ですませてしまうのですが、前売り券って日時を指定されるわけではないし、誰かを誘うときにも便利だし、何よりおトクだし。賢く利用したいですよね。

たとえばチケット予約サイトの「イープラス」なら、映画の前売り券を最寄のセブンイレブンで受け取ることができるんだそうです。手数料もかからないというので、さっそく利用してみようかなーと思っています。

ということで、『私がクマにキレた理由(わけ)』は前売り発売中です♪

『私がクマにキレた理由(わけ)』
監督・脚本:シャリ・スプリンガー・バーマン&ロバート・プルチーニ
出演:スカーレット・ヨハンソン、ローラ・リニー、アリシア・キーズ、ポール・ジアマッティ
10月11日(土)より、日比谷みゆき座ほか全国ロードショー
(C)2007 The Weinstein Company, LLC. All rights reserved.

キョンキョンのお母さん役、いい感じ! 『トウキョウソナタ』舞台挨拶 [2008年09月18日(木)]
 
来週末から公開される『トウキョウソナタ』の舞台挨拶に行ってきました。
登壇したのは、黒沢清監督ほか、小泉今日子さん、香川照之さんほか、主要なキャスト。

中央の4人が佐々木家の家族役。井川遥さんはピアノの先生役、右のアンジャッシュ児嶋さんは先生役で出演

この映画は、東京に暮らすある4人家族の話。一見フツーの穏やかな家庭のように見えるけれど、それぞれがヒミツを抱えて少しずつ気持ちが離れていく。たとえば父親はリストラされたことをいつまでも家族に話せない。家の中では、父親が箸をつけるまで食べてはダメ、みたいな封建的な態度を通してきているのでなおさら。父親としての威厳を保つために必死になる姿が切ないんです。

女性目線で観ると、小泉今日子さんの母親役に引き込まれました。小泉さんは数年前に『空中庭園』でも母親役でしたが、そのときは「ママ」という感じで、母親が家族の中心的な存在でした。それに比べると今回はかなり昭和な「お母さん」でしたね。夫を立てるし、息子たちの言うことも頭ごなしには否定しない。

肝が据わってるなあと驚いたのは、いきなり長男が「戦争に行くから」と言い出したシーン。お母さんは、取り乱したりせずにいったん受け止め、声のトーンも変えずに「お父さんに相談しないと」と返す。でも、もちろん平気なんかじゃないってことがあとから分かるんですけどね。

舞台挨拶でも、父親役の香川照之さんと息子役の2人のやり取りをニコニコ見守っていた小泉さん。撮影中のエピソードとしても「現場を引っ張っていたのは香川さんなので、息子役の2人が香川さんを信じて一生懸命に芝居をし、俳優という仕事に目覚めていくようすを近くで見て、役の中の母親の気持ちと変わりなく見守れました」と、まさにお母さんのようでした。

長男役の小柳友さんが香川さんの言葉に感動した話を披露するも、「覚えてない」と香川さん。ショックを受ける小柳さんに「嘘に決まってるだろ」とフォロー。小泉さんは終始ニコニコと

でも、映画の中ではドーナツを作っても食べてもらえないことに、虚しさを覚えているお母さん。リストラされた、みたいな分かりやすい事件ではないけれど、母親の中にも深い闇があるんだということが伝わってくる。

途中気分が暗くなるような事件も起こりますが、最後には少し希望が見える。しみじみと余韻に浸れる作品です。

(c)2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会

余談ですが、舞台挨拶の質疑のなかで、1人ずつ個人的な秘密をここでしゃべってください、と言われて「子供のころ夢遊病と夜尿症だった時期があって」とコメントした小泉今日子さん。「夜尿症」という言葉にちょっと会場がざわつきましたが、「そういえば、俺もそうでした!」という香川さんの返しもあって、ひとしきり盛り上がり、その後の会見でも「衝撃の発言で…」とレポーターに切り出され「え? みんなそうじゃないんですか?」とあっけらかんと答えていました。おねしょくらいで騒ぐんじゃないわよ、とお母さんに言われているようで……、ますます小泉さんが好きになりました。

息がぴったりの2人は同級生なのだそう。「話さなくても分かり合えるのがいい」と小泉さん

『トウキョウソナタ』
監督:黒沢清
出演:香川照之、小泉今日子、小柳友、井之脇海、井川遥
9月27日、恵比寿ガーデンシネマ、シネカノン有楽町ほかにて全国ロードショー

古いアパートにはドラマがいっぱい 『東南角部屋二階の女』 [2008年09月17日(水)]
 
この間、近所を散歩していたら、貸本屋さんが休業の貼り紙を出していました。以前からそこにあるのは知っていたんですが、お店の中は見えないし、どういう人が利用するのかも想像つかなかったので、本当に営業していていたんだ!ってことにまず驚きましたが、「健康上の理由で休業します」といった内容だったので、妙に寂しい気持ちになりました。

その店がある界隈は古い昭和の雰囲気そのまんまで、軒先に植木鉢がずらーっと並んでいて季節感もあるし、通るたびに和みます。でも、そこからちょっと歩いただけで、ピカピカの中規模マンションがずらーっと並ぶエリアにつながるので、ここも時間の問題なのかもしれません。散歩好きとしては古くて味のある建物がなくなるのは残念ですが、住んでいる皆さんにはいろんな事情があるんでしょうねー。

そんな「事情」を抱えているのが、この映画『東南角部屋二階の女』の主人公、野上。死んだ父親の借金を背負い、古いアパートが建つ祖父の土地を売ろうとするのです。まだおじいさんも健在なんだしと、周囲からいろいろ言われても、野上にとっては切実なわけで。彼自身もその古アパートに住んで日々祖父を説得するけれど、イエスともノーとも言わず、そもそも聞こえているのかもよくわからない。



で、ひょんなことからそのアパートに、突発的に会社を辞めた野上の後輩と、アパートの更新料が払えずに住むところがなくなったという、野上が以前見合いをした相手の涼子が転がり込んでくる。2人とも自分の現状が嫌で逃げ出したくてしかたがないし、ちょっと被害妄想気味。そういう、人生に行き詰まった3人がアパート暮らしを始めるのです。

イエスともノーとも言わない祖父のところには、毎日近所の居酒屋の女将、ふみさんがやってきては身の回りのことを世話している。でも、二人の関係は不明。マイナス思考の若者3人は、彼らのすぐ近くで淡々と暮らす2人を見ているうちに、少しずつ変わっていく、という話。



西島秀行さんと加瀬亮さんという、実力派の二人の存在感だけでもぐいぐい引き込まれますが、ふみさん役の香川京子さんがとても美しかったです。祖父役の高橋昌也さんとのやり取りが、歳を重ねても常に緊張感のある、古き時代の男女という感じで、とても素敵なのです。

古い建物にはいろんなドラマがあるものだなーと。しみじみとするラストです。


『東南角部屋二階の女』
監督:池田千尋
出演:西島秀俊、加瀬亮、竹花梓、塩見三省、高橋昌也、香川京子
9月20日より渋谷ユーロスペース、シネマックス千葉ほか全国順次公開
(c)2008 Transformer, Inc.

こんな夫婦に憧れる!? 『アキレスと亀』 [2008年09月10日(水)]
 
北野武監督の最新作。ベネチア映画祭でも、受賞は逃しましたが大きな話題になっていました。レッドカーペットに着物姿で登場した樋口可南子さん、美しかったですねー。



裕福な家庭に生まれ、周囲に勧められて絵を描き始めた少年、真知寿(まちす)は、両親の死をきっかけに貧しい生活を強いられることになるが、それでも絵を描き続ける。青年になった真知寿の前に現れた幸子は、彼を理解し支える存在に。絵はいっこうに売れず、貧しい暮らしからは抜けられないが、真知寿の夢を叶えるべく2人は創作活動に没頭していく、という話。



映画の構成は、真知寿の成長に合わせて3つに分けられているのですが、北野映画の中ではとても分かりやすい作品だと思いました。メインに描いているのが夫婦愛ということもあって、観終わって優しい気持ちになる。
でも、いっぽうではかなりシニカル。夢を持ち続けるって本当に厳しいことなのだなあと。

自分の絵が売れないからと、画商にあれこれ言われるままに画風を変えていく真知寿は哀し過ぎて喜劇、という感じ。周囲に認められなくてもわが道を行く、というほど破天荒でもなく、見切りをつけて違う道に進むわけでもない。それでも諦めずにやっていけたのは、夫婦(というより妻)が支えていたからなんだろうなあと思います。

ある意味、幸子は理想の妻なのかも。夫の理解者であり同志。社会から浮きまくろうとも、夫のやりたいことを叶えようとするし、そのためにがんばれる。
青年時代を演じた麻生久美子さんと柳憂怜(柳ユーレイさんが改名したんだそう)の夫婦も味があってよかったんですが、樋口可南子さんとたけしさんの夫婦が本当に素敵でした。



シーンによっては、真知寿が妻にやらせようとしていることが、たけしがかつてバラエティ番組でたけし軍団に対して出していたムチャな態度に重なったりして。で、妻の反応も軍団と同じように「殿に言われたら仕方ない」という愛情で動いているように見えました。樋口さんが「はいはい」って言いながら、ムチャをさせられる。このやり取りは傍から見ると、ちょっとハラハラします。でも2人の世界ではちゃんと成り立っているんですよね。嫌々やらされてるわけではないってところが、夫婦愛、なのかな。

なんだかふと、林家ペーさんとパー子さんを思ってしまった。こちらの2人はきちんと成功も収めていますけどね。

公開は来週末です。

『アキレスと亀』
監督・脚本・編集・挿入画:北野武
出演:ビートたけし、樋口可南子、柳憂怜、麻生久美子、中尾彬
9月20日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
(c) 2008『アキレスと亀』製作委員会

アラスカで見つけたものは…… 『イントゥ・ザ・ワイルド』 [2008年09月05日(金)]
 

明日公開の『イントゥ・ザ・ワイルド』。全米で大ベストセラーとなった原作ノンフィクション小説に惚れ込んだショーン・ペンが10年かけて映画化したもので、これはいろんな意味で圧倒される作品です。

裕福な家庭に育ち、大学では優秀な成績を収め、将来を有望されていた青年・クリスが卒業と同時に家族に黙ってアラスカに旅立つ、という話で、優等生の自分探し? なんて意地悪な見方もできるんですが、車も捨て、IDも捨て、お金も燃やして、まっさらな自分になって出発するという彼の決意はかなり本気。

で、旅先でヒッピーの夫婦や、1人暮らしの老人など、おそらく彼がこれまで出会ってこなかったタイプの人たちとの交流があり、それだけでもいい話だなあと思えるんですけど、クリスはストイックに旅を続けることに。


自分のいる環境とか価値観とまったく違う世界に飛び込むことって、人に深みを与えると思うし大切な経験だと思うけれど、たいていはどこかで引き返したり、両者の間で折り合いをつけたりすると思うんですよね。そのまま突っ走るクリスは、観ていて危なっかしいけど、すがすがしくもある。

クリス役のエミール・ハーシュがこの役にぴったり。育ちがよくて人好きのする感じがするけど、頑固。彼と知り合う人たちが、放っておけないけど、送り出したくなる気持ちがよくわかりました。

しかし、アラスカでひとりきり、はキツイなあと。山でキャンプして自然はいい、なんて言っているのとはワケが違いますね。特に、肉を調達するにはどれだけ苦労があるのかのエピソード、これはけっこうショックでした。

それにしても、アメリカは広くて大きいなあとあらためて思います。グランドキャニオンとか、荒野とか、激流とか、当たり前ですが日本とは規模が違いすぎる! そういう大自然の中にひとりで入っていくのは相当覚悟がいると思いますが、観ているほうは単純にワクワクできました☆

『イントゥ・ザ・ワイルド』
明日より、シャンテシネ、テアトルタイムズスクエアほか全国拡大ロードショー
原作 ジョン・クラカワー
監督・脚本:ショーン・ペン
出演:エミール・ハーシュ、キャスリン・キーナー、ヴィンス・ボーン
(c)2006 Into the Wild LLC.

モントリオールでグランプリ受賞! 『おくりびと』 [2008年09月03日(水)]
 
公開は来週末なので、もうちょっとあとにしようかなと思っていたんですが、モントリオール世界映画祭グランプリ受賞のニュース! おめでたい♪
ということで『おくりびと』をご紹介します。

山ア努さん演じる先輩納棺師の前で、納棺をする大悟。一連の美しい動きには、それぞれに意味がある(肌を遺族に見せないようにするとか、肌に触れないようにするといったこと)のだそう。

東京でチェロ奏者としての生活に挫折した主人公の大悟が、故郷の山形に戻って、ひょんなきっかけから「納棺師」という仕事につくことになる、という話。納棺師というのは、遺体を清めて棺に入れるまでを担当する人。そういう仕事が存在すること自体、映画を観るまで知らなかったので、どんな仕事内容なの?というところで、まず引き込まれました。 

さらに、そんな覚悟もなく、いきなり「納棺師」になった場合、本人はどう感じるんだろうか、とか、家族はどう受け止めるんだろうかとか。「死」に関するテーマってふだん語られることがあまりないと思うので、「納棺師」という題材を聞いただけでもいろんな想像が膨らむし、疑問もわいてくる。そういう素朴な疑問と実際の納棺の現場を、大悟を通じて疑似体験できるというのも、この映画の魅力だと思います。

本木雅弘さんと広末涼子さんがいい感じの夫婦役

映画の原作は『納棺夫日記』という、実際に納棺の仕事をしている方が書かれた日記。知らないことだらけの内容は、ぐいぐい読ませるのですが、ちょっと哲学的な部分が多いのも事実。それが映画では小山薫堂さんの脚本によって、先輩納棺師や妻とのやりとりが加わるなど、本とは違ったわかりやすさが出ているし、コミカルなシーンも多かったので、あまり深刻になりすぎずに観れました。あとは、食べるシーンを丁寧に描いていたのが「生きてる」象徴って感じでよかったです。

ちょっと前に、この作品について主演の本木雅弘さんに取材をしたのですが、本木さんはもともと原作に強い思い入れがあったようで、納棺師について本当に熱く語ってくれました。納棺師の歴史とか技術とかにも詳しくて、プロの方に話を聞いているのかと思うほど。映画の中で納棺技術を披露するシーンもあるのですが、ひとつひとつの所作が優雅で本当にきれいで。特にエンドロールのワンカットでの動きは圧巻です。

自分が死んだらどうしてほしい、なんてふだんは考えないと思うんですけど、こんなふうにきれいに送り出してもらえたらいいだろうなあ。

テーマが独特なので誘いにくいところもありそうですが、誰と行っても楽しめると思います。

『おくりびと』
監督:滝田洋二郎
出演:本木雅弘、広末涼子、余貴美子、吉行和子、笹野高史、山ア努
9月13日より 丸の内プラゼールほか全国順次ロードショー
(C)2008 映画「おくりびと」製作委員会

プロフィール
プロフィール
ミヤモトヒロミ。ライター。映画やカルチャー関連の記事をウェブサイトや女性誌などで執筆。
号泣モノから爆笑ストーリー、胸キュン恋愛ものまで、忙しくても絶対劇場で観たい!と思える映画を厳選してご紹介します!
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