| 最後の写真 |
だって、会っている時に言ってしまいたいから。
「昨日草男くんが、京都で働いている時、私が電話に出てくれるだけで
嬉しかった、って言ってたでしょ?
あれを聞いて、胸が痛んだよ。
あの頃、自分が、忙しいとか疲れてるとか言って、
草男くんの思いに、なかなか応えようとしなかったものね。」
「いいんだよ。もう。」
「あ、草男くんの写真を撮ろうと思って、カメラ持ってきたんだった。」
「遺影?俺死なないよ。」
これで3回目だ。言われるのは。
それで諦めた。
「草男くん、それからね、私・・」 |
2012年2月28日(火) 22:30 [ 草男 ]
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| 二人の携帯 |
そして手をつないで歩きながら、私達は、色々必要な事を話していった。
「一緒に買った、携帯はどうする?」
「まだ、しばらく持っていよう。」
「二年の期限は、10月までだものね。
今解約したら、解約料がかかってしまうから。」
「うん。
結局、一年しか持たなかったね。
これがつながらなくなったら、みらのさん、
ふっきれたのかと思うよ。」
「そんなこと、言わないで。
今朝早く目覚めて、草男くんが以前手紙を送ってくれたことを思い出したの。
引っ越して、合鍵を送ってくれた時の。
思わず、読み返したわ。
読む?」
「いや、やめておくよ。」
「それから、草男くんにメールの書き方とか教えてもらった。
改行するように、とか絵文字を出来るだけ使う事、とか。」
「そうだね、みらのさん絵文字を最初全然使ってなかったものね。
どういう人や、って思ったもん。」
「それから・・」
と、言っておくことを書いたメモを見ているみらのに、
俺、死ぬみたいやな、とまた草男くんが言った。
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2012年2月27日(月) 23:31 [ 草男 ]
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| 音楽のない指輪交換 |
「婚約指輪を、本当は返さなければいけないよね。」
「いいよ。みらのさんに、あげたものだから。
でも、あれを売って二人で分ける、って手もあるよ。」
「そんなお金、もらえないよー
あれはこれから、勇気をもらいたい時に、つける事にするわ。
それに死んだ時、お棺に入れてもらおうと思ってる。」
「俺、その時、即効、灰の中から、取りに行くわ。
で、すぐ売る!
自分で買った、一番高価な物だよ。
しかも、それを人にあげた、ってすごい。」
「お母さんが指輪の事を知ったら、怒るよ」
「言わないよ〜」
ファッションビルの地下に到着した時、みらのは草男くんがつけていた
以前おそろいで買った指輪を抜いて、左薬指にはめてあげた。
そして、みらのがつけていたおそろいの指輪を草男くんに渡すと
草男くんは、みらのの左薬指にはめてくれた。
草男くんは、何も言わなかった。
「あのね、おととい神戸で、草男くんが、
今までみらのさんが、嬉しくて泣いたことなかったから残念だ、って
言ってたでしょ?
だから、嬉しくて泣きたかったの。」
と言って、涙をこぼした。
「悲しいんじゃないの?」
「違うよ。
嬉しいの。ありがとう。」 |
2012年2月22日(水) 22:51 [ 草男 ]
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| 俺、死なないよ |
「草男くん、みらのやっぱり、神戸に行く事にする」
家族で年末に淡路島に行く草男くんは、
1日に、ひとり新神戸から帰る予定でいた。
「遠いし、いいよ」
「行きたいから。
もし行かなかったら、ずっと後悔するような気がして。」
「俺、死なないよ。」
そう言って、草男くんは少し笑った。
「31日、年が変わったら電話くれる?
今年、一番最初に話す人になって欲しいもの。
それから、メールも送って。」
「うーん、努力してみる」
「それから、お願い。
別れた事を、お母さんにまだ言わないで欲しいの。
草男くんがお母さんに、みらのと別れた、と言ったら、
お母さんは、きっとほっとした顔をすると思うんだ・・・
その顔を見て草男くんは、この判断が間違ってなかった、って
きっと思うはずよ。
そう思って欲しくないから。
お母さんには、電話で言って欲しい。」
「そんなの、考えすぎだよ」
草男くんは、こう言ったけれど、力がなかったのは
図星なのかもしれない。 |
2012年2月19日(日) 21:43 [ 草男 ]
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| 力をください |
翌日も、早く目が覚めて、しばらく泣いた。
そして、父のお墓参りに向かった。
「お父さん、元気ですか?
報告です。
去年の春にここに来てくれた、草男くんを覚えていますか?
彼と別れることになりました。
喜ばせてあげられなくて、ごめんなさい。
でも、仕方ないです。
これから辛い日々だと思います。なかなか立ち直れないかとも思います。
でも、みらのは、お父さんの子です。
力をください。お願いします」
そう言って、ぽろぽろ泣いた。
草男くんとの待ち合わせは、15時に紀伊国屋前で。
早めに行って、先に草男くんを見つけたかった。
なのに、みらのが見つけたのは、草男くんの後ろ姿だった。
草男くんは、きょろきょろして
電話をかけようとしていた。
あの時、なぜ名前を呼ばなかったんだろうか。
振り返った草男くんがみらのに気付き、電話を切った。
はい、これ、と、草男くんは、クリスマスプレゼントのipodを差し出した。
さようなら、と言って。
やっぱり、返すのは惜しかったんだろう。
「一度返品して、新たに刻印して注文するね。」
歩き始めてみらのが右手を出すと、うん?という顔をして、
草男くんがこっちを見た。
ほらっ、と手を振ると、やっと気付いて手をつないだ。
「何か、くれるのかと思ったよ。」
「どうしてそんな事言うの?」
笑いながら、みらのは、腕を叩くふりをした。
草男くんの、職場へのお土産を買うのに付き合い、
その後、みらののもう一つのお願いを実現する為に
私たちは、ある場所へ向かった。
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2012年2月17日(金) 00:51 [ 草男 ]
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| 大胆になったね |
駅までの道、人通りが途切れると、私たちは向かいあって軽いキスをした。
「大胆になったね。」
そう言って、草男くんは笑った。
「以前、○○でデートした時、みらのが「10年後にここで待ち合わせしよう」
って言ったのを、覚えてる?
草男くん、嫌がったよね。」
「あれは、音信不通になったケースだからそんな約束をしていたんだよ。
僕たちはそうではないから、そんな約束しなくても大丈夫。」
駅に着き、しばらくして電車が来た。
草男くんは、電車に乗ってからいろんなジェスチャーをして、
みらのを笑わせようとした。
そんな二人は周りから見れば、幸せそうなカップルに見えただろう。
手を振って草男くんを見送ってから、同じ道を泣きながら帰った。
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2012年2月15日(水) 01:13 [ 草男 ]
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| Kiss and goodbye |
「久々に、泣いたよ。
さあ、行かなければ。」
時間は、18:30になっていた。
どうしても行くの?、と聞いたみらのに、
「うん、行くよ。」
そう言って、草男くんは、みらのの顔を見つめ、もう一度唇にキスをした。
それはそれは長いキスで、私たちは、過去に思いを馳せていた。
喧嘩をした後、
「僕らが、一番仲良くできる場所に行こうか?」
と言って、草男くんはベッドに誘った。
そこでは、ただ抱き合っているだけで、
ぬくもりを感じているだけでよかった。
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2012年2月12日(日) 22:46 [ 草男 ]
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| いつまでもきれいでいてね |
今度は、獣のように吠えながら泣き、
寂しいよー
怖いよー
と、子供のように泣き続けた。
「草男くんは、今まで一番の相談相手だった。
味方だった。
草男くんといたら、安心したの。
それを失くすのは、本当に辛い。
みらのが、どこかに行ってしまっても、探し出してね。
おばあさんになっても、優しくしてね。」
いつの間にか、草男くんも泣いていた。
ごめんね、ごめんね、と。
「草男くんは悪くないよ。」
「この二年間、本当に楽しかった。
成長できたよ。みらのさんのおかげ。
色々教えてもらったし。
いつまでも、おしゃれなみらのさんでいてよ。
いつまでも、きれいでいるんだよ。
おばさんくさくなったら、ダメだよ。
会社も、辞めたらダメだよ。
せっかく、ここまで頑張ったんだから。」
それを聞くと、もっと泣けてきた。
コンタクトを使うようになってから、コンタクトをつけている時は、
泣けないものなんだと、ずっと思っていた。
涙は、少し浮かんでも、すぐ消えた。
それは間違いなんだと、やっと気付いた。
草男くんは、泣いている私の唇にキスをした。
深いキスだったけれど、いつのもようには応えられなかった。
いつの間にか、窓の外は暗くなっていた。
少しだけ電気をつけて、薄明かりに草男くんの顔が見えるようにした。
二年前とは全く違う、精悍な顔をした青年が、そこにいた。
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2012年2月8日(水) 22:22 [ 草男 ]
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| こんな素敵な人だから |
「いや、絶対、忘れないよ。」
草男くんが、ぽつんと言った。
そしてまた、黙ってしまった。
「いつかは、こういう日がくることがわかっていたけれど、
こんなに突然だとは、思わなかったよ。
わがままで、草男くんの言うことを聞かない私についてきてくれて、
ありがとう。
いい彼女じゃなくてごめんね。
もう、こんなおばさん誰も相手にしてくれないわ」
「そんな事ないよ。
みらのさんなら、きっとまた見つかるよ。
こんな、素敵な人だもの。」
そう言って、草男くんは、私の顔にキスの雨を降らせた。
そして、手にも。
みらのの手は、寒さの為、乾燥してかさかさしていたけれど、
草男くんは、何も言わなかった。
一度、落ち着いたみらのだけれど、
もう一度、草男くんにきつく抱きしめられると、また涙があふれ出てきた。
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2012年2月7日(火) 22:09 [ 草男 ]
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| 忘れられるのが怖いの |
「草男くん、草男くんのお母さんが、言ってらっしゃる事はよくわかるよ。
草男くんの気持ちも、よく理解できる。
草男くんはまだ若くて、将来があって、可能性が沢山ある。
それを止める権利は、私にはないの。どうする事もできない。
今まで草男くんにいっぱい支えてもらって、教えてもらって、
色々ほめてもらって、自信がついたし、なんでもできるような
気になっていた。
こんなに人を好きになった事はなかった。
こんなに愛された事はなかった。
だから辛いの。
朝が来るのが怖いの。
また、ひとりぼっちになるのが怖いの。
忘れられるのが怖いの。
怖いの・・・」
泣きながら、一気に言った。 |
2012年2月5日(日) 23:41 [ 草男 ]
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