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「猫の客」 平出隆 著
 日曜日の新聞紙上で紹介してあった「遊歩のグラフィスム」に興味を覚え、府立図書館で、その著者である平出隆の著書の中から「猫の客」 を借りた。

 物語は鋭角な路地をもつ一角に間借りた夫婦のもとへ、”てんでん”な性格をしたチビ(シャンシャン)という名の猫の珍客との”おはなし”であるが、そこに描かれる猫の描写がとても楽しい。

風や光のつくろうとする見えない変化
に反応している、としか思えないこともあった。多くの仔猫がこの傾向をもつ
としても、この子の場合、その動きは極端に鋭角的だった。
ー稲妻小路の猫だもの。
目の前を過ぎるのを指して、妻は讃えるようにいったりした。
「猫の客」 平出隆 著

 閉め切っていた大窓の方で音がした。くり返して、鈍い音がつづいた。和室
から妻が立って行きカーテンを引き開けると、一途な表情のまま、くり返し、
ガラスの窓にぶつかってくるものがあった。
 妻のノートを覗かしてもらうと、そのときはこう書かれている。
ー それは白くて小さくて、瞳をみひらいたまま燈台に打ち当る鳥よう
だった。
「猫の客」 平出隆 著

 突然木登りは、稲妻に化けたようであった。稲妻はたいがい上から下へ走
るものだが、この稲妻は下から上へも走ったわけである。チビが電撃的な動き
で柿の木に登るのを、件のノートの中で「稲妻の切尖のように」と妻は書き留
め、また、「雷鳴を起す手伝いをするように」とも言い換えたりした。
「猫の客」 平出隆 著

 自分の関心は天文や動植物相にあ
り、人間界のことには構わない、という顔のままだった。こちらからは見えな
い隙間へ無差別に浸透していく流れに対してだけ、尖った耳を澄ましつづけてて
いるようだった。
「猫の客」 平出隆 著

 
 
2007年12月13日(木) 14:30 [ 914EssaysAndPro ]
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