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『雨の罠』

2008-09-05 16:07:34
2008年9月5日(金)
バリー・アイスラー著、『雨の罠』を読んだ。


これは日米ハーフの殺し屋<ジョン・レインもの>第三弾。
ちなみに第一弾『雨の牙』の感想はこちら。

リオに潜伏休暇中のジョン・レインは、CIAに居所を突き止められ、大物武器商人ベルハジを自然死に見せかけた暗殺することを依頼される。
ギャンブル狂のベルハジは、近々マカオへ行くという情報によってレインもマカオへ向かう。

そこで暗殺を実行しようとした矢先、ベルハジの連れである謎の金髪美女が登場し、やむなく断念するが、謎の金髪美女も訳あってベルハジに近づいた同業者の模様。

金髪美女は何者でどんな目的でベルハジに近づいたのか?
ベルハジは本当にギャンブル目的でマカオへ来たのか?
レインは暗殺を実行することができるのか?
というミステリーサスペンス。

前にも書きましたが、ゴルゴ13のパクリとも思えるような話の展開(ゴルゴ13読んでないけど)。
このシリーズは面白いのですが、やっぱりマッチョな男性主人公ということで、例えば『検死官ケイ・スカーペッタシリーズ』のような共感は、全くできないところが辛い。
出てくる女性がみんなボンドガールみたいで現実味ないし。

まあそもそも、「日米ハーフの凄腕殺し屋がCIAから大物暗殺の依頼をされる」って設定だから、作者がリアリティを追求しているわけじゃないのはわかっていますけど。

この小説を原作に、ハリウッドで映画化するという話を聞いていたのだが、どうやら日本で映画化されるらしい。
ジョン・レイン役は椎名桔平で、来年公開されるそうだ。

ハリウッドだったら誰がレイン役をやるのかな?と楽しみにしていたんだけど(キアヌ・リーブスかな?とか)、椎名桔平ではちょっとイメージが違う。
背は高いけど、どう見ても純血日本人ですよね。

「人はなぜ学歴にこだわるのか」

2008-05-09 15:46:37
2008年5月9日(金)
「人はなぜ学歴にこだわるのか」小田嶋隆著(光文社/知恵の森文庫)を読んだ。



小田嶋隆さんの書くものはなんでも面白くて深い含蓄があるけれど、これはその中でも秀逸。

ここで言われている学歴とは、主に学歴差別悪のことであり、学歴社会の弊害とか、学歴コンプレックスとか、学歴詐称について著者の実体験や、話題になった世間の事例(広末涼子の早稲田入学とか、野村沙知代の学歴詐称問題、田中角栄の立身出世物語など)を、小田嶋さん視点で掘り下げいるのだが、それらを通して、日本の教育行政のあり方についての正論をぶっているような本、ではありません。

「人はなぜ・・・」という題名だけど、実は著者自身のうちに潜む学歴に対する嫌らしい偏見や各種感情の解明にほとんどを費やしていて、けっけっけっと最後まで笑いながら読んだ。

彼は早稲田大学出身なのだが、そのお陰で得したことのいろいろ、例えば、息子の小学校ママたちからは
「ああ、あの、小柄でおとなしい半ズボンの人ね」
くらいな認識だったのが、早稲田出身とわかったとたんに一目置かれ、PTAに誘われた、とか。

本を読んだ感想を書こうと思ったけれど、どうしたって私の学歴に触れずして書くことができないから、「おもしろくて、ためになる」にとどめておく。
本書にも書かれているように、学歴に関してコメントするのは、どう転んでもいい結果にはならないということで。

「予告された殺人の記録」

2008-04-02 12:14:55
2008年4月2日(水)
ガルシア・マルケス著「予告された殺人の記録」を読んだ。


ガブリエル・ガルシア・マルケスは1982年にノーベル文学賞を受賞したコロンビア生まれの作家。
ということも、この小説が原作の映画が撮られたことも私は全然知らず、この本が私にとっては初ガルシア・マルケス。
40年以上生きていても知らないことだらけ

コロンビアの貧しい田舎町に、全国的英雄である軍人の息子がふらりと訪れ、町に住む一人の美しい娘に求婚する。
結婚式は町を挙げて盛大に行われるが、その晩、新婦が生娘(!)ではないとわかった新郎が離縁を言い渡し、新婦は実家に帰されてしまう。
新婦の相手を聞き出した彼女の兄弟二人は激怒し、まだ結婚式の興奮さめやらぬ早朝の町に繰り出して、その相手の男をナイフでめった切りにして復讐を果たす・・・というお話。

この話は、1951年にコロンビアの田舎町で実際に起きた事件のルポルタージュとも言える作品で、殺された男の親友であった主人公が、過去に起きた事件を捜査してゆく、という形を取っている。

生娘ではない新婦は速攻で離縁されてしまうとか、家族の名誉のために相手の男を始末するとか、それが男の義務であるとか、50年代の南米の閉ざされた田舎町の価値観は、架空の出来事としか思えない。
善悪とか倫理とか貧しさとか共同体とかいうことを考えさせられる小説だけど、残忍な殺人事件ながら、引いた視線でクールに書かれていること、ところどころユーモラスで(ユーモアのセンスが私の好み)重たくなくて面白い。

初ガルシア・マルケスだったので中編を選んだのだが、これを読む限り、おそらく何を読んでもハズレはなさそうなので、これから長編の分厚い単行本に挑戦してみようと思う。

雨の牙

2007-11-21 13:58:11
2007年11月21日(水)
バリー・アイスラー著「雨の牙」を読んだ(ヴィレッジブックス)。



アメリカ人作家による、オール日本が舞台のサスペンス小説。
面白かったー。

主人公の殺し屋()ジョン・レインは、日本人の父親とアメリカ人の母親を持つハーフで、彼は父親が亡くなる8才まで日本で育ち、その後母親と共にアメリカに渡り、高校卒業と同時に当時ベトナム戦争をしていたアメリカ軍に志願入隊する。
ベトナムでは特殊部隊に参加したが、除隊後日本へ渡り、政界のとある人物をクライアントに持つ凄腕の殺し屋になる(デューク東郷を想像してしまう。とか言って、ゴルゴ13は読んだことないが)。
ある日、クライアントから高級官僚暗殺を依頼され、自然死に見せかけた暗殺に成功したのだが、気になることがあったため相棒を使って調べているうち、暗殺した高級官僚の娘と出会い、自ら行った暗殺事件の余波に巻き込まれて行く、という話。

私はミステリーやサスペンス小説や、CIAなんかが出てくるスパイ小説の類が大好きなのだが、「ハードボイルド系」だけはどうしてもダメ。
マッチョで勘違い気味の男(マルボロ&ジッポ愛用者というような)が死ぬほど嫌いだから、という理由で。

この小説の主人公も、まあそれに近いタイプではあるのだが、ポール・スチュワートのスーツを着たり、チャイ・ラテを飲んだりするし(それもまた許せん!という気はする)、相棒の日本人パソコンおたく君がちょっとユーモラスだったりするところが気に入ってしまった。
それに、ストーリー自体が面白くて、よく作り込んでいるから、マッチョ風味はそれほど気にならない。

ところで、作者のバリー・アイスラーという人は、日本に住んでいたこともある日本通だが、完全なアメリカ人。
けれど日本のことや日本人のことを知り尽くしているのにビックリで、日本人作家によるものだと言われても気がつかないくらい。

とは言え、突っ込み所がないわけではない。
ただ、突っ込み所まで教えてしまっては読む楽しみがなくなるだろうから、気になる方は是非読んでみてください。

ジャズガイド

2007-09-12 11:30:31
2007年9月11日(火)
先日、トニーベネットの音楽番組を見たことを昨日ブログに書いたが、その番組を見た後に、トニー・ベネットのことが知りたくなって、私のジャズガイドを取り出して読んだ。
私の「ジャズガイド」とはこれ。


村上春樹と和田誠の「ポートレイト・イン・ジャズ」と「ポートレイト・イン・ジャズ2」。
和田誠が好きなジャズメンの絵を描いて、そのひとつひとつに村上春樹が文章をつけている。

私は特にジャズファンというわけではないが、このお二方が大好きな私にとっては宝物のように大事な本だ。
そして絵と文章に触発されて、何枚かジャズのCDを買った。
和田誠の画集でありながら、村上春樹のエッセイであり、更にジャズのガイドブックにもなるという優れ物の一冊で、二度も三度もおいしい。

自宅に籠もる

2007-08-27 12:30:39
2007年8月26日(日)
そんなはずではなかったのだけれど、週末は自宅に籠もって読書&映画三昧。
映画は「スーパーマン・リターンズ」と「アルフィー」を見て、パトリシア・コーンウェルの新作「捜査官ガラーノ」とパール・バックの「大地」を読んだ。

スーパーマンはとってもおもしろくて、完成度は高いし、俳優も良かったけどあまりにも長すぎる。
半分に縮小するか、3回ぐらいに分けてくれないと、年寄りには辛いです。

アルフィーは初めイヤな予感がしたが、思ったほどつまらなくなかった。

「捜査官ガラーノ」はいまひとつ。
主人公の州警察捜査官がイタリア人とアフリカ人のハンサムな混血、っていう設定が、なんかロマンス小説っぽい。

「大地」は中国の清朝末期ごろから日中戦争に突入する頃ぐらいまでを描いた歴史大作。
中国の歴史に疎い私にはとても興味深く、ストーリーがおもしろく、長い長い古典小説だが一気に読んでしまった。

貧しい小作農民だった王龍が、金持ちの奴隷として働いていた阿蘭を妻としてもらい受けるところから王龍の運が上向き、一時は大飢饉に見舞われて食べる物が全くなくなり、物乞いや略奪でなんとか食いつなぐが、やがて大地主になった王家の三代に渡る物語。

「ワイルドスワン」とは時代が近いこともあってかなりだぶる。
中国で「激動の時代」というからには、その激動度合いは日本の比ではない。
国土の広さも、歴史の長さも、人口の多さも、貧富の差もスケールがまるで違うと思った。
もっと若い時に読むべきだった。

「街場の中国論」

2007-07-07 13:00:31
2007年7月6日(金)
内田樹著「街場の中国論」を読んだ。
これは神戸女学院大学教授である著者が、大学院の演習で取り上げたテーマをまとめたもので、ご本人も学生も中国論に関しては全くの素人であるとのこと。

だからこそ、更に無知な私が読んでもよくわかっておもしろい。
○○論、なんていうと、事前知識がなければ読み通せないものが多いが、この本はアヘン戦争以降の中国近代史の入門書として、日中の外交問題の解説書として、中華思想の手引き書として大変読みやすい。
「中華思想」なんて、知識もないし考えたこともなかったが興味を持った。
さすが教育者だけあって、まるで興味の範囲外だったことに関しても、もっと知りたいと思うようにチクチクと知識欲を刺激してくれる。

内田先生は中国・韓国含めて、近隣諸国との友好的で安定した外交関係こそが日本の平和の基本、という考え方で、憲法9条は今のところ変えるべきではない、という考えの持ち主だから、中国・韓国嫌いの改憲派ナショナリストの方は、読んでも面白くないだろう(そういう人こそ読んだ方がいいと思うけれど)。
けれど、だからと言って内田先生が「親中派のコテコテ左翼」というわけではなく、どちらかというと自国や自国民について冷静ではあるが、かなり贔屓目で偏った愛国者だし、日本の諸問題に対しては楽観的。

更に私は、そのえこ贔屓を大目に見ているけれど、それは、おそらくそういう楽観性こそ、困難な問題を解決したり、次世代につながる大事な何かを編み出したり、夢物語を現実に変える原動力になると思うからだ。
夢や希望やモチベーションというものは、否定や悲観や偏見や対立からは生まれてこないもの。

世の中は憂う問題ばかりでお先真っ暗、とばかり思っていたが、何事も叶わぬことはないと教えてもらったようで、一筋の希望の光が見えたことがこの本を読んだ一番の収穫。

ティンブクトゥ

2007-06-14 12:30:22
2007年6月13日(水)
大好きなポール・オースター著「ティンブクトゥ」を読んだ。
ホームレスの詩人ウィリーと相棒(雑種犬)のミスター・ボーンズの物語を犬の視点で書かれた小説。

結核で余命わずかなウィリーが、死ぬ前に、それまでに書き留めた原稿をかつての恩師に渡すと同時に、自分が死んだ後のミスター・ボーンズの将来も託そうと、はるばるボルチモアまで二人(一人と一頭)で旅をする。

それ以上は読んでのお楽しみだが、はらはらドキドキしたわりには結構はぐらかされるので、単純なハッピーエンドものが好きな人にはお勧めできない。
それから犬の小説だが、シャンプーの香りがする美しいペットの話でもないから、そういう愛くるしい犬の話を期待したらガッカリする。
けど私は泣きましたです。
昔飼っていた大型犬と、ものすごくダブった。

飼っていた犬も利口だったし(従順ではなかったから飼うのに苦労した)、こちらの言いたいことをあらかた理解していたから、もしかしたらミスター・ボーンズと同じようなことを考えていたのかもしれない、なんて思って泣けた。

犬とのコミュニケーションは、言語そのものでというよりは、お互いに感情を察知し合うことで成り立つと私は思う。
逆に言葉でのコミュニケーションに慣れてしまうと、感情を察知し合うことに実は言葉はそれほど重要ではない、ってことに気がつかなくなる。
ミスター・ボーンズは人間の言葉を完全に理解する犬だが、相手を理解するために言語は必ずしも必要ではない、ということをオースターは逆説的に言いたかったのかもしれないとちょっと思った。

死んだ犬と私は理解し合えていたし、私は飼い犬に愛されていたのだと、ずうずうしくも思い込ませてもらえる素敵な小説です。

点と線

2007-06-10 14:48:50
2007年6月9日(土)
先日、知人と話していたらこの話題になり、気になったから、またまた本棚をごそごそ探して引っぱり出した、松本清張の「点と線」を読んだ。

初めてこの本を読んだのは、おそらく中学生の頃で、その後何度か読み返したから、内容はだいたい覚えているのだが、それでも読みたくなってしまった。
やっぱり松本清張の小説はおもしろいし。

中央省庁を巻き込んだ大がかりな汚職事件が社会を賑わせている時、その渦中にある役所の実務担当者が愛人と思われる女性と香椎(福岡県)の海岸で心中自殺した。
単なる心中だと思われたのだが、その役所の出入り業者に不信を抱いた警視庁の若手刑事が、鉄壁のアリバイを崩して行く、というストーリー。

ストーリー自体は、まるで現在そのもの、今まさに同じようなことが行われているわけだから、時代遅れというかんじはしないのだが、舞台は昭和33年。
私が生まれる前の日本だから、昭和情緒たっぷりのところが魅力的。
青函連絡船があったり(私も乗ったことあるけど)、「肺を患っていて逗子で療養中」の人妻がいたり、都電(路面電車)が走っていたり、銀座のコックドールで洋食を食べたり、男性がやたらめったら至る所で煙草を吸ったり、普段でも若い女性が和服を着ていたりと、私の両親が若かりし頃の東京や日本の風景。

ストーリー(つまりこの小説ではアリバイ作りそのものなのだが)と、出てくる町の風景や風俗描写の印象が強く個々人のキャラクターがいまひとつ薄いかんじがするのだが、文句はないです。
これ以上望んでどうする。

青列車の謎

2007-06-02 13:00:52
2007年6月1日(金)
先日ブログで、アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」についてチラッと触れたが、あれから何となくアガサ・クリスティが気になって、本棚の奥をごそごそ引っかき回し、この本を探し出して読んだ。

私は子供の頃、探偵小説が好きで、学校の図書館からアルセーヌ・ルパンや、シャーロック・ホームズや怪人二十面相なんかを借りてよく読んだ。
怪人二十面相もおもしろいのだが、日本の小説は身近でリアルな分ちょっと怖いから、海外物のほうを好んで読んだ。
伯爵夫人とか執事とか晩餐会とか、見たことも聞いたこともなく、想像するしかない華やかな世界のことを考えるのも楽しかったし。

たぶんその延長で高校生か大学生の頃、アガサ・クリスティにのめり込んで片っ端から読んだ。
だから今も本棚にはアガサ・クリスティの文庫本が50冊くらいある。
去年の引越しの時に全部処分しようかと思ったが、取って置いて良かった。

で「青列車の謎」だが、うっ、おもしろい。
今となってはちと安っぽい気がしなくもないが、クリスティ・ワールド。
ロシア皇帝の幻のルビーを巡って、アメリカ大富豪の一人娘が殺される。
ニースへ向かう豪華な青列車の中で。
犯人は離婚を言い渡された借金まみれの夫か?
それともルビーを狙う彼女の愛人の伯爵か?

一気に読んでしまったのだが、すごく驚いたことが。
私は間違いなくこの本を20年くらい前に読んだはずなのに、内容を何一つ覚えていなかった
がーん。
ま、一冊の文庫本で2度もワクワク・ドキドキできたのだから良しとするか。
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