戦争を扱った映画はたくさんあるけれど、作り手がどんな視点でどんな思いで作ったかによって全く違ったものになる。今回紹介するのは、手法は異なるけれど2つとも今年の私の心に残る作品。(KI)
■「麦の穂をゆらす風」★★★★☆

1920年、アイルランドが舞台。イギリスの圧政下、アイルランド独自の言葉、ゲール
語を話しただけで拷問を受けるなど理不尽な暴力が横行する中、若者たちは軍事訓練を重ね抵抗運動を組織していく。対英独立戦争から内戦にいたる激動のアイルランド、アイルランド共和軍(IRA)の草創を英国の巨匠ケン・ローチ監督が描く。アイルランド南部の自然に重ね合わされるような、簡潔で力強く無駄のない若者たちの抵抗の姿は深く胸を打つ。やむにやまれず政治に巻き込まれ、対立を深めていく彼らが、死に追いやられる悲しみ、戦いのむなしさ、それは、歴史の事実としてだけでなく、今起きている戦争の悲劇につながるものだ。2006年カンヌ映画祭では、最高賞パルムドールを受賞、上映後はスタンディング・オベーションが鳴り止まなかったという。ケン・ローチ監督はカンヌ映画祭でこう語った。「私は、この映画が、英国がその帝国主義的な過去から歩み出す小さな一歩になってくれることを願う。過去について真実を語れたならば、私たちは現実についても真実を語ることができる。英国が今、力づくで違法に、その占領軍をどこに派遣しているか、皆さんに説明するまでもないでしょう」。
■「トンマッコルへようこそ」★★★★☆

戦争が起こっていることを知らず、笑顔あふれ自然とともに暮らすトンマッコル村に偶
然鉢合わせした敵対する3組の兵士たち、彼らはあたたかい村人たちとの交流を通して戦うことをやめ、人種、国籍に関係なく次第に心を開き笑顔になっていく。800万人を動員して2005年度韓国No.1ヒットとなった話題作だ。韓国と北朝鮮、米国の兵士が朝鮮戦争下、秘境の村で友好を築くファンタジー映画。村の少女がまちがって手榴弾のピンを抜いてしまい、投げ込まれたトウモロコシの貯蔵庫が爆発してポップコーンが雪のように降ってくるとか、確かに現実とはかけ離れた夢のようなシーンが目白押しなのだが、兵士たちのこんな村はありえないという表情といっしょになって、しまいには観客もついついその村人たちののどかな明るさに引き込まれてしまう。不思議な映画だ。「JSA」のシン・ハギュン、「シルミド」のチョン・ジェヨン、「オールド・ボーイ」のカン・ヘジョンなど演技派俳優が集結、音楽は韓国映画初参加の久石譲が担当した。