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パリの音楽・アート雑記帳

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フランスの「詩人たちの春」
目に見えないものを研ぎ澄まされた感覚で捉え、文字に置き直す言葉の魔術師―詩人。
フランスでは3月8日〜21日まで、"Printemps des poètes(詩人たちの春)"というイベントシリーズが行われます。3月8日「女性の日」、3月21日「世界詩歌記念日(UNESCO)」に連動しているそうです。

100225_helene_souriredesir.jpg今年は「女流詩人の色」と題し、これまで「癒し」「霊感を与える存在」「聞き役」として男性の脇役に甘んじてきた女流詩人の立場を見直し、創造者としての女性詩人の存在に光をあてる、という企画。イベント期間中、様々なコンサートや映画、演劇などが上演されます。

その中で、日本をテーマにした朗読&演奏会にフルート・尺八奏者のエレーヌさん(Hélène Codjo)が出演予定。ご興味ある方は下記へどうぞ!右写真は2月公演「De lune et d'ombre」より。

◎コンサート「Sourire de Désir」
・3月13日(土)16時〜
・Fabienne Thiéry(朗読)、Hélène Codjo(尺八)、Christel Grévy(照明)
・Entrée libre (réservation au 01 70 46 40 00)
Bibliothèque Multimédia
Jardin des Arts / 78 Saint-Germain-en-Laye


documentary_portraitmere.gif女流詩人といえば、詩人であった母親を撮影したドキュメンタリー映画『Portrait of my mother poet』をご紹介しましょう。監督・制作はベルギーの映像作家Jean-Noël Gobron氏(Alcyon Film代表)。心のままに生き生きと詩を口ずさむ詩人Marie-Joさんは、自立した精神の持ち主だったようです。(紹介映像)。
水彩画家であった夫と生涯を共にしますが、その愛情はとても深く、広く、そして潔い。途中でやや衝撃的な事実も明かされますが、その受け入れ方はMarie-Joさんならでは。
この映画は昨年12月にイスタンブール国際ドキュメンタリー映画祭にて上映されました。

なお、夫であったRogerさんのドキュメンタリー映像『Portrait of my father watercolourist』もあり、この二つの映像を対比してみるとより興味深いです。またRogerさんの水彩画も、勢いがあり魅力的です。
2010年2月28日(日) 17:01 [ アート ]
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野外美術展にて
ただ今、日本に一時帰国中です。

先週末は千葉県の野外美術展に行ってきました。
会場は小山。山道を登り下りしながら、様々な作品を鑑賞します。アトリエで作ったものをポンと置いた作品、周囲の木や池となじむように現場で制作した作品など、30点ほどが展示されていました。

2009_Japan_Artfestival_Ball.jpg



毎年海外からもアーティストが参加し、今年はアメリカ、インド、エストニア、アイスランドなど、数カ国からの参加がありました。一部をご紹介します。

こちらは、アイスランドのミレヤ・サンパーさん(Mireya Samper)、ヴィディ・アーナソンさん(Vidir Arnason)の『Dream』。池に浮かぶ4つのオブジェが幻想的です。作品紹介プレートにはこう書かれていました。

"People talk about what they like to do.
If you don't have a dream, how you have a dream come true?"

お二人の素直で率直なメッセージとともに、彼女たちの美しい夢が詰まった作品でした。アイスランド出身らしく、湖をうまく生かしています。ちなみにサンパーさんは、マルセイユ、ボローニャ、バルセロナなどで教育を受けた国際派のようです。

2009_Japan_Artfestival_Sa1.jpg


こちらは、戸野倉あゆみさんの『朧輪』(Rolling)。
枯れた樹木の中にふわふわと漂う輪、この浮遊感は人間や自然物に宿る魂を思い起こさせます。この空間を見たとき、異空間に誘い込まれたような錯覚がありました。

2009_Japan_Artfestival_To.jpg


これぞ野外美術展!という作品を二つ。

こちらは、小山和則氏による『ふぉーかす』。樹木の幹と枝を使い、視点を近景と遠景へフォーカスさせるコンセプト。手前の竹製イスに座って眺めます。これは子どもにも大人気でした。
2009_Japan_Artfestival_focu.jpg


また、日・米・印3ヶ国アーティストによる共同制作『Existence-Nonexistence/存在-無存在』。
(David Mcleish, Udeya Vir Singh, Namu/Krassy/Natsuki Kasahara)

最初はどこに作品があるか気づきませんでした。とりあえず作品紹介プレートに向かって歩み寄り、「ん?このタイトルはどういう意味?」と思いつつ後ろを振り返ると、こんな巨大な物体(葉の塊り)が目の前に現れます。「え?もしかしてこれが作品??」

2009_Japan_Artfestival_To2.jpg


そしてさらに歩みを進めていくと、ところどころ雑草の葉陰から、デザインされた砂の塊りが顔を出すのです。ちょっと写真では分かりにくいのですが・・

2009_Japan_Artfestival_To4.jpg

そして30メートルほど歩くと、はっきりタイトルの意味が分かりました。

無いようである存在。明確に見えないけれど確実に存在するもの。意識してないと見えないが、静かにメッセージを発しているもの。
ただの雑木林にしか見えなかった道から、次第に作品の顔が姿を現すにつれて、じわじわと作者のメッセージが伝わってきました。

約2時間のウォーキング、いい汗かきました!
2009年11月16日(月) 14:57 [ アート ]
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パリの秋は、現代アートと音楽で
パリでは現在、パリ・秋のフェスティバル (Festival d’automne a Paris)が開催中です。
音楽、演劇、ダンス、現代アート、映画、詩など、様々な芸術分野が集まって、一つのフェスティバルになっています。

まずはアートから。チュイルリー公園の池をぐるりと囲むように、12体の可笑しな顔をした銅像が並んでいます(写真はその一つ)。タイトルは「Sunrise East」。

091005_tuilerie_arts.jpg


作者はN.Y.及びチューリヒ在住のウゴ・ロンディノーネ(Ugo Rondinone)というアーティストです。この12体は12ヶ月を象徴していて、永遠に繰り返される季節の移ろいと時の経過を表しているのだそうです。それ以外にも、子どもの夢や憂鬱なピエロ、あるいは消滅した文明社会、はてはシュールレアリズムやピカソの作品を彷彿とさせる・・との説明書きがありました。
複雑になりすぎた文明社会への批判、とも取れるかもしれませんね。

とにかくこの不思議なアート作品、子どもや観光客にも大人気です!いつもこの銅像の前で、フラッシュがたかれています。

また、音楽の分野ではウォルフガング・リム、フレデリック・ジェフスキ、エドガー・ヴァレーズ、バルトーク、ベリオなどが、様々な作品と組み合わされて演奏されます。ハイライトの一つは、シュトックハウゼンとリゲティでしょうか(10月17日サル・プレイエル/ブーレーズ指揮アンサンブル・アンコンテンポラン)。

ダンスでは、マーサ・カニンガムが12月2日〜12日まで、Theatre de la Villeで公演予定。勅使河原三郎の『Miroku』(終了)、白井剛『True』(10月15日〜17日)等、日本人舞踏家も出演されます。

「現代」を様々な芸術で表現する−そんなパリの秋。まずは木の葉散るチュイルリー公園でお楽しみ下さいね。
2009年10月15日(木) 18:46 [ アート ]
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越後妻有アートトリエンナーレより
作曲家の大場陽子さんが、先日参加した「越後妻有アートトリエンナーレ大地の芸術祭2009」の写真を頂きました。

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090830_echigotsumari.jpg

その他写真は、こちらです!

夕暮れ時が、本当に綺麗ですね。

左手前に木製の三角錐が見えますが、もう一つを離れた場所においてワイヤーでつなぎ、さらにその下に木琴のようなものを置き、子どもたちが上を通過するときに音が鳴るようにしたということ。そしてこちらは、「音が鳴る木」の前でのコンサートの写真。地元の子も楽器を持って共演した様子。

なお9月末には、東鳴子温泉の地酒「天音」が発売されたそうですが、醸成させる時、大場さん作曲の『お酒の子守唄』をスピーカーから流したそう。醸成の工程にあわせて、1.発酵 2.しぼり 3.熟成 という曲目構成になっているそうです。

どんな味のお酒になっているか、楽しみです☆
2009年10月3日(土) 17:28 [ アート ]
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カンディンスキーとシェーンベルクの友情、そして・・
先日、ソルボンヌで文化政策を学ぶ友人から「これは絶対いってみて!」と勧められたのが、ワシリー・カンディンスキー展。というわけで先日、ポンピドゥーセンターに足を運んでみました。公式サイトはこちら。(8月10日まで開催)

090728_kandinsky.jpg


カンディンスキーはモスクワに生まれ、その後拠点をミュンヘン・モスクワ・ワイマール・ベルリン等に移し、晩年はパリで過ごした画家。その作風は時ともに変遷していきます。ロシア時代はややレトロな画風で、人物や情景描写はまるで他の画家の作品のようですが、その頃から書き溜めていた即興(improvisation)には、後年の作風が顔を覗かせています。点・線・円といった幾何学模様と、多彩な色彩を組み合わせて、独自の世界観を生み出そうと試みています。その一つ一つに、しっかり計算された「創造性」が感じられます。

独ワイマールのバウハウスで教鞭をとっていた頃は、実験に近い作品作り。タイトルも"black line", "red spot", "white center", "blue segment", "circle on black", "accent in pink"など。点・線・色彩などの素材の組み合わせを発展させることで、表現世界を押し広げていきました。ドイツ時代の作品は鋭角かつ直線的で、がっちりした構成感を感じさせます。

しかし晩年にパリに居を構えてからは、直線が曲線的に、色彩も柔らかくなり、作品に軽やかさとまろやかさが加わります。彼は恐らく、外的環境からインスピレーションを受ける画家だったのでしょう。


その後ミュージアム・ショップで、「ブゾーニ⇔シェーンベルク、シェーンベルク⇔カンディンスキーの往復書簡集」という本を買いました。20世紀前半を代表するアーティスト同士の書簡、これが面白くないわけはないと思い、早速読んだところ、実に生き生きとした手紙のやり取りが綴られており、時間を忘れて読んでしまいました。

カンディンスキーという画家は、なかなか率直で飾り気ない方だったようです。1911年初めてシェーンベルクの演奏会に行き、その音楽に感激し、感動を率直にシェーンベルクに書き送っています。演奏会プログラムは、弦楽四重奏曲第2番 嬰ヘ短調 op.10(1907-1908)と、3つのピアノ曲 op.11(1909)。カンディンスキーの方が8歳も年上ですが、シェーンベルクに敬意を表して「cher professeur!」と宛てた上で、彼の音楽と自分の絵画が目指すものの方向性が同じであると、共感の意を示しています。そして、その印象を「impression III konzert」という絵に残しています。

やがて二人は、音楽や芸術、お互いの演奏会や絵画展の話、日常のこと等、手紙で意見を交わすようになります。メールなどない時代、手紙のやり取りも日数がかかって大変だろうと思いきや、返信の早いこと!マメだったんですね。返事が遅いと、「何で返事をくれないのでしょうか。何かまずいこと言いましたか?一刻も早くあなたのことを知りたいのです」と率直に書いているところにも、カンディンスキーの人柄が表れています。

kandinsky_composition.jpg



さて、その中で一番胸を打たれたのは、1923年にシェーンベルクが最後にカンディンスキーに宛てて書いた手紙。それは、ユダヤ人として理由なき差別を受ける立場におかれた宿命を嘆き、やり場のない怒りに満ちていました。ユダヤ人というだけで白い目で見られる、ユダヤ人ではない君たちにこの苦しみが分からないだろう、きっと君も同じはずだ・・民族を超えて分かり合えるというのは所詮夢なのだ・・・と長文に綴られています。人間としての尊厳を傷つけられた、シェーンベルクを始めとするユダヤ人の嘆きが、痛々しく刻まれていました。この手紙は第二次世界大戦が始まる15年以上も前に書かれたものですが、このとき既に、民族排斥・浄化の空気が色濃く街中に流れていたことが伺えます。シェーンベルクはこの10年後、1933年にアメリカに亡命し、41年に帰化しました。

これに対して、後にカンディンスキーは「僕は君をユダヤ人だと意識したことはない、大切な友人として付き合ってきた、これからだって同じだ。・・そうだ、いつか君に会いにアメリカに行こう」と返事しています。これもまた、やるせない心情がにじみ出ています。そして10年以上続いた二人の往復書簡は、ここで終わります。

それにしても、このカンディンスキーとシェーンベルクは、出会うべくして出会った二人でした。二人とも従来の作曲法や画法にしばられず、全てを音・線・点といった「素材」に分解し、それらを組み合わせて、新しい表現を生み出しました。カンディンスキーはシェーンベルクへ送った初めての手紙で、「絵画の世界でも『新しいハーモニー』を創造したい」と、この作曲家に大いなる共感を寄せています。

それから約100年たった今。実は近いようで少し遠い存在だった20世紀初頭の前衛音楽ですが、カンディンスキーの絵画を見ながらシェーンベルクを聴くと、二つが一体となってすんなりと入ってくるのを感じました。
2009年7月28日(火) 16:22 [ アート ]
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ルネ・マグリットの描くモナ・リザ
先日ブリュッセルに行った時、6月初旬にリニューアル・オープンしたばかりのルネ・マグリット美術館に足を運びました。マグリットはシュール・レアリズムを代表する芸術家の一人で、他にマックス・エルンスト、サルヴァドール・ダリなどがいます。
マグリットといえば、昔美術史の教材に出てきた空に浮かぶ岩山の絵が、鮮烈に印象に残っています。その「わけの分からない不条理な世界」に入ってみました。 

090724_brussels.jpg

(写真は美術館横の通り、街が一望できます)

まずエレベータで最上階に上がり、1階ずつ下りながら、年代順に作品を鑑賞していきます。若い頃の作品は、マグリットらしさの断片は見えますが、まだ試行錯誤の段階。「死の逆襲」と題した、鑑賞者を睨みつけているセルフ・ポートレート写真もありました。強烈なアイロニーです。

後半になってくると、いよいよマグリット色全開です。例えば、海にカーテン、その横に球体。これは「モナ・リザ(ジョコンダ)」という絵です。モナ・リザの姿はどこにもありません。球体は不変・永遠を表しているようですが、それがモナ・リザの化身ということでしょうか。それとも永遠なる母性と女性の神秘性を、海とカーテンに託したのでしょうか。本家モナ・リザの微笑より、謎が多い絵です。

マグリットの絵には海、空、葉、彫刻の頭部、球体、鳩、樹といった各要素が、不思議な組み合わせで提示されています。一つ一つに意味があって、かつ無駄なものがない。その非合理・不条理な無意識の世界を、完璧に整理して、意図的に再配置しています。(ちなみに鳥と空のモチーフも頻繁に出てきますが、1966年の作品「Sky Bird」は旧サベナ・ベルギー航空から委嘱された作品だそうです)

小さい3歳くらいの男の子が、「ママ、ママ〜」と泣きべそをかいていました。子どもにも異質な空間だと分かったようです。

ベルギーという国は、小国ながら二つの言語圏が同居する複雑さを抱えていますが、一方で落ち着いたエレガントな色彩感覚、異質な要素を受け入れる許容性、それらをバランスよく組み合わせるセンス、上質なレトリックで本質に迫る力、があります。そうした土地柄ならではのアーティストだと、実感しました。

なお、マグリット美術館公式サイトで作品などがご覧になれます。作品のプレゼンテーション方法が面白いです。
2009年7月24日(金) 11:41 [ アート ]
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明けましておめでとうございます
明けまして、おめでとうございます。
Bonne Annee!



フランスの物語作家Muriel Blochさんより、ニューイヤーメッセージとともに頂いた写真。とても微笑ましいですね♪
幸福と知恵の象徴であるフクロウは、フランスの地方都市ディジョンのシンボルでもあります。


ちなみにMurielさんは英・仏を中心に、ストーリーテラーとしても活躍中。先日はフランス放送フィルハーモニー管絃楽団のコンサートで、ラフマニノフの人生を生き生きと語っておられました。

2009年も良い年になりますように!
2009年1月1日(木) 23:36 [ アート ]
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3次元に展開させる、日本人の想像力
装飾美術館で開催されている「Kansei〜感性展」に行ってきました。

これはかなり面白い!です。

まず展示の仕方。商品・業種別ではなく、表情・動作を表す動詞(しつらえる、もてなす、おる、むすぶ、はぶく、もったい、等)にもとづいた13のコーナーに分類。伝統工芸品と、最新技術を駆使した製品を比較展示し、伝統的価値観が現代デザインに生かされていることが伝わります。

空間設計も見事です。1000平方メートルを超える広いスペースにゆったりと展示されてあり、中央の吹き抜け空間には、高さ数メートルに及ぶKansei展イメージ作品と、壮麗にライトアップされた生け花、そして平安絵巻物をモチーフにしたビジュアル映像が流れています。この空間設計にはフランス人も大変感心していました。


さて今回個人的に最も印象に残ったのは、2次元世界の「3次元的展開」。

端的なのは「おり」(折り、織り)です。「おる」とはまさに、2次元を3次元的に展開すること。日本伝統のおりの技法は、折り紙のみならず、地図や人工衛星パネル展開(ミウラ折)等に応用されていますが、木イスにもこの考え方が応用されていました。1枚の木を「折りこむ」ことで、人間の身体に優しく沿ったラインと、無駄のない素材使いが両立しています。

またあや織りの考え方が、イス(別品)の背もたれに採用されていました。ざっくりとしたあや織りは、背中の微妙な凹凸にしっくり馴染み、身体の重みを揺ぎなく受けとめてくれます。あや織りは最もシンプルな織り方ながら、そこには様々なデザインのヒントが眠っているのですね。


また紙のコーナーでは、中小印刷業者5社と5名のアーティストによるコラボレーション作品5点が展示されてありました。文字や絵を印字する紙は、いってみればキャンバス。アーティストが、麻布・木・銅版など、描く土台を自在に選んだように、印字する紙質を対象物にふさわしいものを選ぶことによって、その対象物が立体的に浮き上がり、デザイン全体が直感に訴えかけてきます。中でも、薄いパラフィンのような半透明紙に印刷された繊細なデザインは、アヴィニョンの印刷業者の方が注目していたそうです。



今回の目玉は、吹き抜けの中央に配置された『命の華』(池坊)。生け花を「生命の湧き出る泉」と見立て、見事に全体を華やかに彩っていました。その周囲を囲むのは、割り箸でできた“篝火”。割り箸を輪ゴムで結びながら自在に形を膨らませ、燃え盛る火を力強く表現していました。この約3メートル四方の黒枠で縁取られた空間は、感性が最も重んじられた平安時代を再現しているようでした。


1枚の紙や木、布といった素材を、折り、結び、繋げることで、立体的な生活空間や芸術世界を創り出す。これは日本人の素晴らしい感性だなと思いました。


色々な見方ができる今回のKansei展。開催は12月21日まで。まだご覧になっていない方は、ぜひ会場へお急ぎくださいね!


写真)パリの朝焼け(上)、装飾美術館裏手にあるチュイルリー公園の夕焼け(下)
2008年12月20日(土) 15:49 [ アート ]
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日本人の感性とは
最近、日本では「感性」が注目を浴びています。

先日、(株)感性リサーチの黒川伊保子先生に、「小さい子がどこまで音楽を聴き取ることができるのか」という取材をさせて頂きました。記事はこちら


黒川先生は脳科学の立場から、人の潜在意識に届くことばのイメージを数値化し、効果的な商品ネーミングをサポートするビジネスをされています。リズミカルで手際よい語り口が印象的な、とても素敵な方でした。著書も多くありますので、ご興味がある方はぜひ!


その黒川先生曰く、日本人独特の感性というのは、日本語を使う脳から生み出されているそうです。日本語は“母音のリズム”で文脈の意味を把握する言語(欧州言語などは子音)で、母音とは自然の中の音響と似ているアナログの波形。だから、「自然が語りかけてくる感覚」というのは、日本人独特の感性なのだそうです。
これは貴重な感性ですね。


さて、上記とは直接関係ありませんが、

パリの装飾美術館(Musee Les Arts Decoratifs、ルーブル美術館隣)では、本日12月12日〜21日まで、日本人クリエイターによる展示会『Kansei―感性』が開催されます。日本人独特の感性がどのように作品に表現され、またフランス人にインスピレーションを与えるのか、じっくり鑑賞したいと思います。
2008年12月12日(金) 22:23 [ アート ]
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月光ソナタを絵にしたら?
ベートーヴェンの『月光』を絵にしたら、どうなるでしょうか?

先日、オルセー美術館で開催中の『Le mystere et l’ecrat(神秘と輝き)』展に行ってきました。パステル画材の発展と、パステル画における表現の進化が分かるエキスポジションです。(〜2009年2月1日まで)

18世紀には30色あまりしかなかった色彩が、表現技術の進歩に伴い、19世紀半ばには1000以上の色彩・濃淡が開発されたそうです。モチーフは優美で柔らかい女性像や子どもが多く、とても優しい気持ちになります。


エドワール・マネは、スキャンダルを巻き起こした『草上の昼食』や『オダリスク』等の油彩画で有名ですが、健康を害してからは小さいキャンパスにパステル画を多く描いたそうです。裸婦像や女性像などは、珊瑚のようなピンクや指でふわりとぼかした黒、身体の輪郭もまろやかで優美です。

またエドガー・ドガの傑作『バレエ(エトワール)』も、パステルで描かれています。ドガは700作以上もパステル画を残していますが、本人曰く「油彩よりも扱いやすく、より自由に描ける」そうです。


一方、象徴主義のルドンやモンドリアン等もありました。象徴主義は19世紀末に出現した芸術思潮で、理想や夢、観念的世界、寓話、神話などをデフォルメして表現したもの。パステル画は、この世のものとは思えない夢幻の世界や、神秘的なモチーフを描くのにいかにも適しています。特に、ルドンの『アポロンの馬車』(Le Char d'Apollon)は傑作の一つ。

さて冒頭のベートーヴェンですが、Lucien Levy-Dhurmer (1865-1953)が『Sonata au clair de lune』という作品を1925年に残しています。これはベートーヴェンの月光ソナタを表現したもの。月光そのものではなく、月の光を浴びた女性の美しさ、艶かしさが象徴的に表現されています。まるで女神の化身のようです。(個人的には、ドビュッシー『月の光』の方がイメージに近いと思うのですが)


後期印象派ゴーギャンは、風景画を描くとき「描写されたものより、そこに暗示されているものを見るとよい。音楽がそうであるように」と、この芸術思考を先取りしたような発言を残しています。

さて・・・この絵を見たら、ベートーヴェンは何というでしょう?



←こちらは同時開催されている「マスク(仮面)」展より、ブールデル作『ベートーヴェン』の胸像。迫力満点です。
マスク展は来年2月8日まで。
2008年11月28日(金) 00:25 [ アート ]
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