先日、クリエイティブスタジオ「サムライ」主宰・佐藤可士和氏の奥様でマネージャー、佐藤悦子さんの講演を聞いてきました。サムライいえば、ユニクロのNY・パリ出展など、大規模な海外戦略を大成功に導きました。昨年10月パリ支店オープンに際しては、パリ市内各地でユニクロのポスターを目にしましたが、シャツやジーンズを着たパリジェンヌやパリジャンが伸びやかな表情で映っていたのが印象的でした(写真は昨年10月撮影。コワモテのお兄さんですね・・)。そして当日は800人にも及ぶ長蛇の列!白髪の女性までもが笑顔でユニクロの紙袋を提げていたのを思い出します。ユニクロというブランドを通じて、ロープライス&ハイクオリティ、ユニバーサルデザインといった日本の「今」が、伝わったのではないかと思います。

常々、日本ブランドの海外輸出にはどんな背景や戦略があるのだろうと興味を持っており、また佐藤さんの
ブログも日々拝見していたので、今回はぜひ!と思い立ち、申し込んだのでした。
とても美しい佇まいと流れるような語り口!そして具体的な実例を踏まえたお話には、大変にモチベーションを刺激されました。サムライの構想力と実行力もさることながら、そこには「それは本当に意味のあることなのか?」という質問を繰り返しながら、徹底的に無駄を排除し本質を追求するという強い信念が伺えました。
まず仕事上のポリシーとして特に気をつけているのは、最初の「座組み」をしっかりすることだそうです。始めの一歩でしっかりと将来像のすり合わせや、各自の役割の確認、そして覚悟を共有すること。仕事をしていく過程では、少なからずクライアント企業との間で摩擦が起きることもあるようですが、相手への信頼と未来像のビジョンを共有しているからこそ厳しい意見が出る、それは当然のこと。たとえ途中で糸が絡み合ってしまっても、戻るべき「原点」があれば、再びゴールに向けて足並みを揃えることができるでしょう。
さて、お話の中で最も印象に残ったのは
、「今治タオル」海外戦略でした。今治タオル組合がJAPAN BRAND育成支援事業に申請し、その助成金を利用した海外戦略事業のディレクションをサムライに委託することになった経緯からお話されました。今治タオルはもとから高い品質を有していましたが、その品質の良さがきちんと伝わるデザインや広報体制になっていなかったそうです。そこで3年間でまず国内で地歩を固めてから海外へ、という戦略に決めたそうです。
その際、もっとも重視したのがタオル本来のもつ品質をいかに伝えるか、ということ。それまではモナリザや睡蓮の絵の入ったデザインのレトロさもあって、今一つ魅力が伝わっていなかった。そこでタオルの原点に戻り、「ホワイトタオルのバリエーション」を提案したそうです。白は、ある意味、完全に実力勝負の色です。それで勝負するということは、最高品質のタオルを提供できる、という自信があるからこそ。結果として、新宿伊勢丹特設コーナーで反響を呼び、Web売り上げも1,000倍!に伸びたそうです。
では、クオリティという曖昧になりがちな価値基準をどう客観的に表現するか?そこで提案したのが「今治基準」の設定。今治ではタオルの吸水性の高さをはかるのに、水に浮かせて5秒以内に沈むという基準があるそうですが、それを『今治タオル5秒ルール』と表現し、合格したタオルにロゴをつけて差別化を図ったそうです。確かに分かりやすいですね。
当初の目標だった海外戦略はというと、2009年フィンランドの見本市にブースを出展し、大盛況になったそうです。一気に海外に飛び出すことなく、まず地場産業の強みを徹底的に引き出し、磨き上げ、国内で地歩を固めてから海外に臨んだのが奏功したのですね。
外国人は自分が出会った人、商品のあり方や見え方、人や商品を通じたコミュニケーションなどから日本の印象を深めていきます。昨今のプリウスもそれに繋がります。商品の海外戦略とは、単に世界へモノを輸出するのではなく、「日本の見え方を考えること」(佐藤さん)の言葉が印象的でした。
海外にいて見えてくる日本のイメージ、日本にいて見える海外のイメージ。日々、「それは本来の姿なんだろうか?この情報があれば、別の見方が出来るのではないか?」と思うことがよくあります。改めて、「伝わること」の難しさ、「いかに伝えるか」の奥深さを考えさせられた講演でした。