醒めやまぬ興奮の日から1日があけました。今日のワシントンを行く人々は、いつもより何となく背筋がぴんと伸びているような気がします。今回のChangeは国民1人1人の意思と努力の賜物以外の何物でもないのですから、アメリカ国民であることを誇りに思うのは当然のことです。
歴史的なその瞬間から少し時間が経過したので、この永遠にも思えた21ヶ月間の選挙戦のことをふと冷静に考えてみました。そしてとある一つの考えが浮かんできました。
昨日のオバマ氏の勝利演説は、文句のいいようのない感動的なもので、彼が来年1月20日に行う大統領就任演説は、きっとリンカーン大統領がゲティスバーグで行った「人民の人民による人民のための政府が消滅することはない」や、ケネディー大統領が就任演説で行った「この国があなたに何をしてくれるかを望むのではなく、あなたがこの国に何ができるかを考えてほしい」という演説に並ぶ、歴史的な名演説になるであろうことが安易に予測できます。これは余談ですが、もし今英語を勉強中の方がいたら、ぜひ昨日のオバマ氏の演説を自分で訳してみることをお薦めします。日本のニュースで訳されている文章は、彼が選んだ言葉の感動を半減させていて、実際の彼のスピーチは、聞いた者に鳥肌を振るわせ、英語を勉強しているのなら、あれほどポジティブでエネルギーのこめられた文章にはそうそう出くわすことがないと思うからです。
本題に戻ります。
しかしその一方で私の心に引っかかったのは、オバマ氏の勝利宣言の前にマケイン氏が行った敗北宣言でした。そこにあったのは、それまでの討論やCMでの、オバマ氏への攻撃やネガティブな表現で満ち溢れたマケイン氏ではなく、人間的な品位と、秩序と、才能にあふれた実力政治家の姿だったからです。
ここからは私の勝手な空想ですが、意識的であれ、無意識であれ(もちろん無意識だと思いますが)、マケイン氏はオバマを大統領にするために、これまでわざと悪役を演じていたのではないかと思うのです。これまでの演説で、昨日のようなリーダーシップとプロ意識を見せていたら、そして経済状態の危機という世情が助けていなければ、オバマ氏が今回のような大勝利を達成できたかどうかは疑問です。誰もが彼のリーダーとしての素質を疑うような副大統領の選出を行い、メディアや大衆の笑いの的になったのは、マケイン氏の細胞のほんの一部が、彼に歴史的なヒーローの登場を助けるように命令したからではないかと思うのです。もちろん彼の無意識のうちにです。昨日のすばらしい演説や、上院議員として長年活躍してきた姿が彼の本性であるとしたら、今回オバマを大統領に選んだ本当の仕掛け人は、マケイン氏である気がしてなりません。
オバマ氏は勝利演説で、15万人の支持者に向かって言いました。
"This victory belongs to you"(この勝利はあなたたちのものである)と。
マケイン氏は敗北演説で、歴史的に数少ない共和党支持者に向かって言いました。
"The failure is mine, not yours"(この敗北は私だけのものであり、あなたたちのものではない)と。
この選挙戦の本物の仕掛け人でありヒーローは、もしかしたらマケイン氏であり、真実がどうであれ、私は心からマケイン氏に拍手を送りたいと思います。 |