ステーキが食べたいという日本からの友人5人を、私のお気に入りのレストランに招待しました。
ご存知のように、こちらアメリカでは、それぞれのテーブルに担当の店員の人がついて、最初から最後まで同じ人がサービスをします。支払いの際、その人のサービスがよければチップを大目に、反対に悪ければ少なめにおくのが決まりです。
今日の店員は、なんだか最初から機嫌が悪く、ドリンクの注文も遅いし、料理の注文の後にまたドリンクを注文すると、「まだ何か用はあるの?あるなら一度に言ってよ」という横柄な態度でした。そして極めつけは全員にサービスされるサラダ。普段は巨大なボールに山盛りのサラダをもってきて、お客さんの前で取り分け、好みのドレッシングをその場で選び、フレッシュなパルメザンを上からかけてくれるはずなのに、なぜか持ってこられたのは、もうすでに取り分けられたシーザーサラダ。日本人ばかりのテーブルなので、全員旅行者だから違うサラダでも分からないだろうというみえみえの手抜きのサービスに、私の怒りは爆発寸前まで高まっていました。しかし大切な友人の前で口論をして場の雰囲気を乱すことを恐れ、その場はぐっとがまんしました。もちろん普段のサラダを知らない友人たちは、何も知らずにシーザーサラダを食べながら会話を楽しんでいました。
食事が終わり、お会計のときになりました。今夜のチップは絶対に少なくしてやろうと思ってチェックを見た私は、それまでのなぞが一気に解けました。すでにGratuity(チップ)の欄に18%のチップが上乗せされて合計金額が表示されていたのです。日本人はチップの習慣を知らないのだという店員の思い込みで、サービスはほどほどにし、チップも18%に抑えて勝手に合計金額を算出していたのです。通常は20〜30%のチップを支払うものなので、今日のサービスからすると18%は妥当な金額です。私は心の中で、これは文句をいうべきかやめるべきかと迷ったあげく、結局その場の和やかな雰囲気を優先させて、なにも言わずに帰ってきました。
時間がたってもその腑に落ちない出来事のことが頭から離れず、何となくいらいらしながらそのときのことを考えました。そしてふとその店員の立場にたって考えてみることにしました。もしかしたら彼は、今までに何度か日本人のお客さんを応対した際、チップをもらえなかった経験があるのではないだろうか。だから日本人のお客さんが来るたびに、彼自身も不愉快な気持ちでサービスをしているのではないだろうかと。
日本ではレストランでチップを払う習慣がないのだから、アメリカで払うことに慣れなかったり、払うのは損をしたような気持ちになってしまったりすることは仕方のないことです。でもアメリカのサービス業で働く人の殆どはとても少ない時給(2ドルくらいのところもあります)で働く分、チップをあてにしているので、そのためによいサービスを心がける人もいるのです。外国を旅行するときは、その国の習慣や文化を知ってそれにあわせるように心がけることも貴重な海外経験となります。日本人の悪いイメージを持たせないためだけでなく、相手を知り、思いやり、できる限り親切にすることは大切なことだと思うのです。
次回レストランに行ってその店員が担当になったら、私の憶測が正しいかどうかを確かめ、もしそうであれば説明して謝り、良いサービスをしてもらってそれなりのチップを支払いたいと思います。悪いサービスで少ないチップを支払うよりも、お互いが良い気持ちになれるほうが断然良いからです。