ヒロシマからJRで2時間弱、忠海駅から船で10分ほどの大久野島は戦争中、島全体が毒ガス工場として陸軍の管轄下にあり、従業員以外の一般人は立ち入ることはできず、地図からも消されていた島だった。今は無人島だが、国民休暇村が作られ、リゾート地として観光客が訪れる。
毒ガス工場施設は戦後、占領軍によって破壊されたものの、島の方々にはまだその痕跡が残っている。が、観光施設ではないので長年放置され、一部を除けば案内も説明版もなく、何も知らずに見るとまったくの意味不明な箇所だ。もちろん人に見せるための工夫はされておらず、あるのは「立ち入り禁止」の札のみ。しかし完全に手付かずというわけでもなく、適度に草木を刈る、ごみを拾い集める程度の手入れはされているようで、非常に微妙なグレーゾーン、知る人ぞ知る“廃墟”巡りのスポットとなっている。
そのためかそれら“廃墟”は“こっそり”と侵入する輩が後を絶たず、まるで手柄であるかのよう書かれた落書きもそのままとなっている。なかには肩車をしても届かないくらい高い箇所に書かれたものもあった。
内容は他愛もないものがほとんどだが20年、30年いやもっと古い日付のものがはっきりと読み取れるところをみると、その状態のよさが伺えると同時に、奇妙な時間の流れを感じさせてくれる。
これまでいくつかの戦争遺跡と言われるものを見てきたが、ここはもっとも遺跡、いや堂々たる廃墟であり、それ以上に落書きの宝庫と化していた。
だが、まったく変な話だ。ここが観光施設として、あるいは戦争遺跡として文化財等の指定されているならこんな落書きは許されるはずがない。が、そうなっていないが故、ほとんど手入れされずに破壊されたころの姿をとどめ、アングラスポットとしてそれが一部の人を惹きつけ、そして“こっそり”と落書きできるほど近づけ、あるいは写真を撮ることもできるアンビバレンツな箇所なのだ。
上)島の住民はウサギ。人懐こく、足元に寄ってくるが、
エサをもらえないと判ると、さっさとどっかに行ってしまう
下)近年の調査でも島からは環境基準を大幅に越す砒素が
検出されているという。一部は海水浴場になっているけど、
大丈夫なの?