『ワールド・トレード・センター』 2006米 監督:オリバー・ストーン
木乃伊になった木乃伊取りが、木乃伊取りされる話。救助されたので木乃伊じゃないか。
期待できない作品にお金を払って観るのはいささか苦痛だが、実話なので、一応感動作ではある。そういう意味でプラスマイナス・ゼロといったところ。
NY摩天楼群。WTCではありません…
9.11テロはまだ記憶に新しい話。ニューヨークの、そしてアメリカのシンボルでもある、ワールドトレードセンター(WTC)ビル崩壊で閉じ込められ、瓦礫に挟まれ身動きひとつできぬなか、互いに励ましあいながら救出を待つ警官隊二人と、その安否を気遣う家族の揺れる気持ち(これは民族、宗教を問わず万国共通でしょう)に絞った人間ドラマ。
が、一人の警官が意識が朦朧とする中、後光さすイエス・キリストがペットボトルらしきを差し伸べてくれた、という幻影をみて生き抜こうと決意したというくだりは、臭過ぎる。助けられた警官が何を見たか、何を思ったかは検証しようがないので眉唾物。何が言いたいのか、不明。キリストじゃなければ、彼は死んでしまったんだろうか。
また、元海兵隊員が教会で「自分が救助に向かうことは、神からの使命」と牧師に話し、一瞬ためらう牧師も「それが神の意志ならば」と許可をする。自分の意志で行動できんか?
彼は勝手に軍服を着て、勝手に現場に入り込み救助を行い(軍の指揮下にない「元」軍人なので、いわば統制違反。悪いことをしてるわけじゃないけど)、クソまじめな顔をして「人の命を助けることが、海兵隊員の役割」と言っちゃったあたりには、ズッコケた。相当勘違いなヤツである。迷わず「人を殺すことが海兵隊員の役」やろ、と突っ込んでしまう。
この元海兵隊員、この救助活動でナニを目覚めたのか、再び海兵隊に志願し、イラク戦争へと赴いたという(エンドロールの字幕による)。ヤレヤレ。
人を殺すのは弾丸一発、爆弾一発で十分だが、二人の人間を救うためどれだけの尽力が費やされたか。それもまた人間の一面である。
ならばアフガニスタンでイラクで、アメリカによる空爆の下、WTCの犠牲者以上の人たちと同じような、いやそれ以上の惨状で、瞬時に命を絶たれたり、瓦礫に閉じ込められたという事実を考えられるほどの想像力がアメリカ人にあるのだろうか。