たまの休日に写真機材を抱えて京阪神のいずこかに出没、目指すは紀信かアラーキーか。みずからの愚かさ、未熟さ、時にはクライアントの理不尽さに嘆きつつも、世界を股にかけ写真を撮りまくることを夢想する・・・。
デジタル化の波に否応なく呑み込まれ、もみくちゃにされながらもどっこい生き残りを賭ける赤貧写真家の徒然なるブログである。

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旧国鉄宇品線を行く D  [2008年05月22日(木)]
現代史彷徨:廣島行脚 旧国鉄宇品線を行くD 旧宇品線周辺の現代遺構・上

宇品線一帯は軍関係施設が多く、陸軍の海外派兵の一大兵站機能(今で言うロジスティックス)を担っていた。原爆の時はいずれも爆心地から離れていたため、大きな被害を出すことはなく、また、戦争激化で設備や機能を疎開させ、遊休化していた建物は一転、被爆者の収容や救護という役割を果たした。戦後は民間工場や官庁、学校などに衣替えし広島の復興を支えた。

宇品港  竣工:1889年 爆心地から約4700メートル
 
終着点宇品駅に直結し、膨大な軍需物資と兵員を戦場へ送り出した宇品港は、日清戦争に先立つ1889年、当時の千田貞暁県知事の号令で、大型築港事業として完成。だが大幅な予算超過(\87000→\30万)の責任を問われ、新潟県知事へと左遷された(藩閥政治の弊害で、“朝敵”新潟県知事職(当時は官選)は冷遇ということか?)。
完成直後は地方都市に似合わぬ大きな港湾の需要がなく、無用の長物と揶揄されたが、日清戦争を期にその機能はフルに活用された。後に千田の業績が称えられるが、戦争を当て込んでいたかどうかは分からない。

今は埠頭が埋立てられ、港の機能は東側の1万トンバースと西に1kmほどのフェリーポートに譲り、宇品波止場公園として市民の散策や釣り人たちの集うところになっている。兵士らが輸送船に乗るための通称「陸軍桟橋」(1902年建設)が、往時の姿を今に伝えている。また、公園の一角に宇品線を伝えるモニュメントがある(線路自体がそこにあったわけではないが)。
写真) 宇品波止場公園の陸軍桟橋(右上)と宇品線モニュメント(左)。線路の曲がり方が変。
カーブではなく、角度がついている。これでは列車は曲がれない…='07/4撮影

宇品凱旋館  竣工:1939年 爆心地から約4660メートル

しだいに増え続ける出征兵の歓送迎施設として宇品港に建てられた凱旋館は、有志が寄付金を集め、竣工後陸軍に寄付したもの。大ホールや映写室を備え、音楽会なども開かれたという。戦争末期には陸軍船舶司令部(輸送船などを統括。通称「暁部隊」)が入居、被爆直後に市内各地に入っての懸命な消火や救護活動がよく知られている。

戦後一時期、原爆障害調査委員会(ABCC)と第6管区海上保安本部が入居していたが74年に取り壊し、跡地は公園となり、凱旋館、船舶司令部それぞれの記念碑がある(写真='07/4撮影)。また、これらを相手にした旅館や食堂などいくつかの被爆木造建築物もあったが、いずれも高速道路建設にあたり、前後して姿を消していった。

ちなみに先述の陸軍糧秣支障倉庫跡は、この公園すぐ北側にある。ちょうど1年前の07年4月に訪れたとき、この近辺にあることまでは知っていたが、生垣に遮られ、わずか数メートル先にあったのもかかわらず、まったく気付かずじまいだった。

陸軍糧秣支廠  竣工:1911年 爆心地から約3210メートル

主に軍隊用の糧食として牛肉の大和煮の缶詰を製造していた。併設の食肉処理場(屠畜場)で牛は殺され、缶詰を食った兵士は戦場で殺された。いやその缶詰さえろくに口にできず、飢えや病気で死んでいった者も数知れない。

戦後は民間の食品工場をへて1985年改修、広島市郷土博物館として利用され、原爆の爆風によってひん曲がった屋根の鉄骨が今なお見られる。また、食肉処理場は1949年よりカルビー発祥の地として、「かっぱえびせん」等の工場だったが2年前の06年3月、県内廿日市市の新工場に移転、昨年取り壊された。同社看板商品も老朽化した建物での生産は「やめられない、とまらない」とはいかなかったようだ。
写真) 解体工事始まった直後のカルビー広島工場・旧食肉処理場時代からの煉瓦造り建物='07/6撮影
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