たまの休日に写真機材を抱えて京阪神のいずこかに出没、目指すは紀信かアラーキーか。みずからの愚かさ、未熟さ、時にはクライアントの理不尽さに嘆きつつも、世界を股にかけ写真を撮りまくることを夢想する・・・。
デジタル化の波に否応なく呑み込まれ、もみくちゃにされながらもどっこい生き残りを賭ける赤貧写真家の徒然なるブログである。

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悠遊国記 鉄の鯨、感 [2007年04月07日(土)]
4/7 撮影行脚6日目、広島県呉市

初めは行くつもりはなかったが、次いつ来るかも分からないし、話のネタとしては悪くないと思い、行ってみたのが、つい2日前にオープンしたばかりの海上自衛隊呉史料館(通称てつのくじら館)。
何がすごいかって、老朽化して引退した潜水艦をそのまま一隻展示してあるのだ。しかも地上に。

道路を挟んですぐ隣の呉市海事歴史科学館(通称大和ミュージアム)は、1/10大和の模型で話題をさらい、映画『男たちの大和』の上映もあって、一大ブームを巻き起こした。
二匹目のドジョウを狙っているのか、旧日本海軍のお荷物、1/10大和に対抗、いや圧倒する現代海軍の主力兵器、本物の潜水艦を、現日本海軍がぶつけてきた。

退役した軍艦を、いわば博物館的に公開している例は少なくない。また現役の自衛艦も時々公開されるが、当たり前だがいずれも港に係留されている。船なんだから海の上は当たり前。それをまったく逆の発想で地上に上げ(クレーンで吊って運んだ)、通常見ることのできない船の底を仰ぎ見ることは、観方を変えれば艦から見下ろされ、威圧されているふうにも受け取れる。

史料館としての内容は海上自衛隊の歴史、特にその揺籃期10年間くらいの掃海活動(*)に重点がおかれ、その意義と業績は充分に伝わるものだった。さらに、やがてその実績が湾岸戦争後のペルシャ湾掃海活動分野への海上自衛隊の海外派兵へと発展し、その有効性、“国際貢献度”を認知させようというもの。つまりこれは海自の活動のアピール、国民への理解を高めてもらうための宣伝施設であり、プロパガンダの一種なわけだ。

宣伝目的なので、入場は無料。もちろん、施設の建築だけでなく、これからの維持費にも多額の税金で使われることになる。これでいいのかなあ。

こういった宣伝活動はこれまでも行われてきたが、地味で控えめに、しかも基地内の施設を使っていたので、市民生活との接点はなかった。しかし、この「てつのくじら艦」は、ひらがな表記することや、かわいらしいイメージイラストを用いることで、軍・戦争の匂いを掻き消し、本物の潜水艦は断然注目度と集客力が期待できる、むしろ観光施設の要素を前面に出し、呉市中心街の大型ショッピングセンターが隣接する嫌でも人々の目に飛び込んでくる場所に陣取った。

ここまですれば、軍の活動がデモンストレーションの枠を超え、兵器が日常生活の中に平然と割り込んできて、それに対する感覚が麻痺するような気がしてならない。

今日4月7日は戦艦大和が沖縄特攻作戦なかば、米海軍機の集中攻撃を受けて沈んだ日。午前中旧海軍墓地(長迫公園)にあるその慰霊碑前に、遺族や元乗組員が、三々五々集まって話をしては、帰っていった。もう高齢者が多いので、行事としての慰霊祭は行わないという。

慰霊碑周囲に刻まれた犠牲者氏名

集まったのは全部で10人くらい。
こんなにこじんまりとした集まりとは思わなかった

あの日、あの時、あの場所で起こったことを、今の私たちは読んだり聞かされたりして、想像するしかない。それでも、その真実はそれに余りあるものであることも、想像しなければならない。

てつのくじら館ではそういった想像力を働かせられるか、ちょっと疑問…。そこを心得たうえで見る必要があると思う。

潜水艦内部の公開箇所は限定されている


(*)機雷とは海にばら撒く地雷。船舶が接近、通過すれば爆発する。そのため、付近の船舶航行を困難たらしめる効果も大きい。太平洋戦争末期、米軍が日本周辺の海に多量に敷設した機雷が、戦後日本復興に欠かせない海上輸送の支障を与えるため、それを発見、処理する作業をGHQが日本に依頼した。
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