*『渚にて』 ネビル・シュート・著 井上勇・訳 創元社 '65
冷戦時代真盛りのころの作品。第三次世界大戦は全面核戦争となり、北半球は全滅、標的を免れた南半球オーストラリアの人々も、しだいに放射線に蝕まれるなかも懸命に日常生活を続けようとしている・・・。
が、わずか数日で全生物が死滅するという放射線について、迫り来る死の恐怖を演出したかったんだろうけど、いくらなんでも大げさすぎるきらいがある。主人公二人の淡くて、切ない恋愛を際立たせるため強引な展開と思った。
*『拉致 知られざる金大中事件』 中薗英助 新潮社 '95
日本がかつて植民地支配していた韓国、北朝鮮とのその後の関係は闇の部分が多い。私が幼い頃TVニュースでよく「金大中(きんだいちゅう)事件」を報じていた。何のことだかさっぱり分からなかったが、子ども心にも恐ろしい事件だと思った。
これはまさに闇に葬られるべきはずのものが、わずかなズレから表に噴出した事件。韓国外交官が直接関与したことは明白なのに、それを再び闇に葬ろうと画策する日本政府。時の首相田中角栄に、韓国の時の朴正熙大統領から3億円が渡ったという(ウワサ)。
本当なら殺されフカのえさにされてただろう事件被害者の金大中(キムデジュン)が、田中角栄相手に"お手打ち"のため来日した金鐘泌首相を、事件から四半世紀後、自身が大統領になるとき、再び首相に指名するというしたたかぶりをみせた。
人間、闇だらけの生き物だ。
*『南北統一』 重村智計 小学館 '00
著者重村氏は何がすごいかって、韓国人有識者と口論できるくらい韓国語に堪能で、かつて毎日新聞ソウル特派員だったことから、韓国にも在日社会にも見当もつかないほどの情報網を持っているんだろう。いつどこで誰それと何某が会って、こんな話をした、というネタがぽんぽんと出てきて、とても説得力のある話を展開する。
それでいて、TV出演の時なんか、突然ジョークを混ぜたりするもんだから、まさかこんなシリアスな話の中でこれほどの専門家がジョークを言うとは、周囲に思われてないので、混乱させ、またそれを楽しんでいるあたりが、顔に似合わずお茶目な人のようだ。