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五つ星ホテルの裏側(後編) [2006年04月11日(火)]
さてお待たせしました。肝心の「ホテル バビロン」の内容紹介です。

これは、実際にホテル業界で長年働いて、現在、ロンドンの某高級ホテルの支配人になっている匿名氏に取材したことを元に原作者が小説仕立てにした

というのは前編でお話しましたよね。

この話というのが、場所がロンドンだけに、湯水のようにチップを配りまくるアラブのお金持ちやテキサスの石油成金がやってくるんです。でもって、それを心待ちにしているホテルの従業員全員。

なにせ

敬礼の仕方がいいといっちゃーチップ

なにかに答えたといっちゃーチップ

葉巻を特注したといっちゃーチップ

ですからね。わたしもその場にいたいものです。

関係ないけどその場にいたからチップ

もらえそうなんですもの!

                

それで思い出しましたが、以前、アジアの某ホテルをベッカム夫妻が通り抜けた後、そのホテルのGMとお話する機会がありましたが、

「いや〜若いうちに大金をもつのはいかんですねーものすごい単位でチップ配りまくるもんだからスタッフにもいい影響を与えませんわ」

てな本音をはいてらっしゃいました。もちろんバビロンもロンドンの話ですから、ベッカムの話出てきますよ。ヴィクトリアがロクなもの食べてるわけがない・・というようなサラリとした皮肉描写だったと思いますけど。。。


さて、その反面、ダブルブッキングで割を食うのは単身で泊まりに来るジャパニーズビジネスマン。もれなく協定を結んでいる別のホテルに移るようお願いされ、おとなしく、はいそうですか、と物分りよく案内されてさようなら〜くという役どころなんですが、あいたたたた 心あたりのある出張族の方いますかしら? そうされないためには、旅行代理店を通しておくと、だいぶ防げるようです。あしからず。ホテルがいちばんいやなのが「お1人様1泊のみ」というパターンなんだって。



ノンフィクションに基づいたフィクションなのに、セレブの話だけは本名がばっちりでてくるのもおもしろいんですよ。そこだけ読んでもいいってくらい笑えます。


マドンナのために
ホテルはジムのエア路バイクを特注したがその前にカーテンの色が気に入らないって5回も6回も部屋をかえたとか、

マイケルジャクソンが来る前には、
すべてアメリカ製のもので部屋を整えるのに全員が忙しい、でもマイコーったら専属シェフ連れてくるのに食べるのはバーガーとかチキンバゲットとかお子様メニューだけだとか

エリザベス女王陛下はカンパリオレンジしか飲まないとか、

皇太后は甘口のヴーヴクリコやブランデーと角砂糖をのんだあとフィッシュアンドチップスでランチ+ランチの後はまずグリーンの次にイエローのシャルトリューズを飲むとか

フィリップ殿下
特定のエールか、ウェルフシュミット・キュンメルとジンとレモンジュースで作る恐ろしく強いカクテル「シルバーブリット」を飲むとか

   あー脱線しますが、この殿下のカクテル「シルバーブリット」というのは、わたしもぜひ飲んでみたいです。キュンメルとはキャラウェイという香草のドイツ語でウェルフシュミットというのはそのリカーのブランド名みたいですね。殿下はそこまでご指定らしい。シルバーブリットとは銀の弾丸の意味です。

                      



わたしが職業柄、一番ウケたのは、2時から3時の時間帯にきまってあらわれるフェイスリフト(整形)帰りの客2人連れ。包帯グルグル巻きに真っ黒のサングラスというブキミな姿で、もごもごしゃべるたびに飛び上がるほど傷いらしいし、一歩踏み出すごとにこれまた激痛らしい。なぜこの時間にチェックインかというと、ホテルマンにはバレバレで、

昼ごろの回診で医者の退院許可がおりてからやってくるから

なんだって。

それで3,4日ルームサービスのスープでつないで包帯とれたあとは何事もなかったようにチェックアウトしていくんだって。ロンドンにもそういうクリニックが並んでいるハーレーストリートっていうエリアがあるんですね。いったいどのあたりなんでしょう? こういう話が出てくるあたり、ほんとにホテル=人生の縮図ってかんじです。




イギリスではこの原作が発売されたのは04年。ドラマにはもってこいの題材ってことで、ドラマとなってBBCで放送されたそう。

ロンドン在住の方にきいてみたらドラマとしてテンポがよく俳優たちもみな芸達者でおもしろかったって。エピソードの中味を読むとどうやら原作とはちょっと違うストーリーに仕立て直されてるみたいだけど。おもしろそうだから日本でもぜひ放送してほしいものです!

バビロンといえば、1902年発表の「グランド・バビロン・ホテル」という大作の小説があるようです。とすると、この本のタイトルは過去の名作を意識したものかもしれませんね。グランドバビロンホテルはサボイホテルをモデルにし、イギリス上流階級VSアメリカ成金 という図式の対決が進むとやら。こちらも読んでみたくなりました。が、リンクご覧になりました? すごいっすね この本 古すぎてタイトルが右からかかれてます むろん絶版


                       

なのであらすじを知るにはこちらのぺージがよろしいかと思います


もともとの本はこちらでした


五つ星ホテルの24時間
イモジェン・エドワーズ・ジョーンズ&匿名氏
ソニーマガジンズ ¥1600+税
五つ星ホテルの裏側(前編) [2006年04月11日(火)]
東京には、昨年のマンダリンに続き、
来年のリッツカールトン(六本木防衛庁跡地ミッドタウン)、ペニンシュラ(日比谷 オフィスビル跡 でもそもそもあの場所にはホテルがあったんですってね)と、大ブランドホテルが勢ぞろいする予定で、ただいま建設まっただなか。新たなホテル戦争勃発か!? といわれています。そして、これをむかえうつ、老舗、帝国ホテルはすでに大改装を敢行してますしね。


日本のご近所、香港を見ても同様なことがひと足先に進行中。というのも、老舗マンダリンのそばに昨年秋、新マンダリンができ、空港からのエクスプレス香港駅の上にはフォーシーズンズ香港ができ、これに対して九龍半島側の老舗ペニンシュラは5月待望のスパをオープンさせて存在感を再アピールという手に出る。

ソウルには昨年パークハイアットがあき、アジア初のWホテルもお目見えし(先日チェジウ竹之内ドラマの「ロンド」のロケ場所になってたようにCMや映画のロケ多し)、これに対して老舗の新羅ホテルはレストラン改造に続いてただいまロビーを大改装中。

どこでも、新興勢力に対して老舗がリノベで対抗という図式になっているわけです。


一方でいま最も新ホテルの計画が多いという中国大陸では、上海はコンラッドが建築中だし、北京にも、いまのところグランドハイアットが1人勝ち状況の市内の目抜き通りに、リッツカールトンやラッフルズやパークハイアットがやってくる・・・だけじゃなく、たまげることには、世界遺産のリージャン(麗江@雲南省)なんて山奥にまで、バンヤンツリーができるっていう話もトラベル&レイジャー誌で読みました。たいへん!ちゅーかホントなんでしょうか!?


タイも負けてはおらず、チェンマイのマンダリンがグランドオープンしたり、バンコクのペニンシュラのスパが大改装したり、モルディブにだって、去年、ワンアンドオンリーの新リゾート、リーティラというすごいものができたばかりなのに、津波で遅れていた2軒目のフォーシーズンズがついにオープン(オーナーは1軒目のフォーシーズンズと一緒らしい)したり、意表をついてなんとWホテルができたり・・・


このように、しばらくは雑誌のホテル特集のネタには事欠かない状況が続くんではないかという華々しいアジア近辺の状況なんですが、そういういわゆる高級ホテルの裏事情、働いてる人たちの苦労とか、やりくりとか、来るであろうセレブのお行儀ってどうなんでしょうね?


・・・というのが、前置きだったんですが、すでに前置きで相当長くなってしまいました。実は今回は、そういうミーハー心を、ちょっぴり満たしてくれる小説を書店で見つけましたって話です。名著という類じゃないですが、興味深い一冊ということで、紹介しておきます。ホテル好きな人ならおもしろく読めると思う。


本の名前は邦題「誰も知らない五つ星ホテルの24時間〜匿名ホテルマンの爆笑告白記〜」 原題はHOTEL BABYLON(ホテルバビロン) 


ロンドンにある架空の五つ星ホテルのレセプショニストが語る高級ホテルの裏側のドタバタ劇、いってみれば有頂天ホテルロンドン版とでもいいましょうか、舞台は架空の場所=ホテルバビロンだけど、できごとはすべて実際におこったこと。なぜなら業界暴露作品で有名なジャーナリストである著者は、ロンドンのいくつかの高級ホテル勤務を経た後、某有名ホテルの支配人になっている匿名氏への取材を元に、

10年分のほんとうにあったできごとを24時間に縮めてストーリー仕立てにしたというんです。

・・・・・さて、気になるその内容は後編として、すぐ追ってアップいたしますね。
韓国を食べる [2006年04月07日(金)]
折からの韓流ブームで
ソウルにおでかけの方も
多いと思います

ソウルといえば焼肉
と思う前に
韓国の食の奥深さを
この本で読んでおくと旅がいちだんと
興味深くなることうけあいの本

それが「韓国を食べる」by黒田勝弘氏です

日本以上に人と人とのネットワークで生きている韓国の人たち、「ウリ=われわれ」の身内意識についてがまず最初の前書きに語られ、なぜならば、

「食は人間の生活の核心であり、基本的な文化である。そして人と人をつなぐ重要なきずなである。食は一大総合文化といっていい。だから韓国の食を語ることは、韓国・韓国人を語ることでもある」

のだから。

話はソウルの裏道食堂にとどまらず、チェジュ島、ウルルン島、江原道、全羅道・・食べ物もウマ肉から松茸、ワタリガニ、イカ、豆腐、アユ、ウナギ、クジラ、フグ鍋、猪の生き肝、北朝鮮料理、回転寿司、日本食・・・

これらが食の話にとどまらず、文化、政治、経済、男同士の話、シモネタ・・にまで背景を広げて語られるのだから、読み物としておもしろいことこの上ない。ずんずん読んでいるうちに、いつのまにかムズカシイ南北問題や韓国内の政治の現状、まずは精をつけなきゃ料理じゃないという韓国料理の秘められた真髄などに詳しくなったりしちゃうのだ。

たとえば日本でも流行りつつあるスントゥプ(固まる前の豆腐)鍋の話のところに、

「日本の演歌は北が舞台だが、韓国の演歌は南に向かう 帰れ釜山港だって南だ」

と演歌の話になったり、「受刑者が刑務所から出所すると家族や友人は生豆腐を持って迎えにいき、刑務所の門で出所者の口に豆腐を押し込んで食べさせる」のだという韓国の習慣の話が出てきたり、

サムゲタンの話をした後で

トリの手羽先は旦那に食わすな なぜなら羽が生えて飛んでいく=浮気するから 

だとか、ともかく話しの種になるエピソードがいっぱいなの。

とっかかりは冬ソナでもチャングムでもヨン様でもピ君でもチャンドンゴン氏でもいいのです。少しでも韓国に興味を持っていたら、ぜひこの本を読んでみてください。ますます韓国に興味を抱いて旅立ちたくなるから。

私はこの本ですっかり黒田氏という人物にお会いしたくなり、折から企画中だった昨年秋のHanakoのソウル特集号でぜひに、とお願いして、黒田さんの案内するディープなソウルの食事情のページを作っていただきました。取材は編集部のO氏が担当になりましたが、黒田さんにお会いしたいので、私も自分の取材を終えた後でついていきました。

裏道の魚定食や、エイの刺身や、納豆チゲなど、本当におもしろいゴハン処に連れていってくださいました。そのどのお店でも黒田さんは店のおばちゃんに愛されているんです。

一軒目のおばちゃんにはいい魚があるからと持たされ、
2軒目に向かう途中の韓定食屋さんでもおばちゃんに見つかり「なんでうちに寄っていかない」といわれ、
2軒目では帰り際におばちゃんにつかまって話しこまれ
3軒目ではおばちゃんと肩を組む勢いで酒を酌み交わし・・・

そう、黒田さんは通訳の女の子が電話かけたときにこの人は日本人じゃなくて韓国人のおじさんなんじゃないの?と思っちゃったほど韓国語ペラペラなのです。

「本職は、竹島問題とか教科書問題なんだけどなー」とつぶやきつつも、ちゃんと希望に沿ったお店を紹介してくださる黒田さん。そう黒田勝弘氏の本業は、新聞社の論説委員兼ソウル支局長なのです。

昨年秋、黒田さんは「四半世紀にわたり韓国に特派員として駐在し、その政治、経済、歴史、文化のみならず日韓関係全般を、広く深く報道し続けた功績」により菊池寛賞を受賞しています。

韓国を食べる 文春文庫 \619+税
黒田勝弘著

*黒田さんに登場いただいたHanakoは05年11月2日の858号 丸ごとソウル大特集本でして、私も2月にソウルに遊びに行ったときこの号を持参しましたが、街歩きの友としてとても助かりました。バックナンバーを扱っている書店にあればぜひ次回のソウル旅のお供にどうぞ

*そうそう、チャングムの誓い地上波を見ている方は今週からまた土曜放送になりますね お間違いなく!
『男のだいどこ』  荻昌弘 [2006年03月08日(水)]
こちらは支離滅裂に気が散る性格の反映でノージャンルであれこれ読み飛ばす本の中から心に残った本、お薦めしたい本をご紹介するコーナーです。

第1回は、往年の正しいグルメ指南本。

「男のだいどこ」  荻昌弘

似非グルメが蔓延する昨今ですが、グルメという単語ができるはるか昔にまっとうに美味いものを紹介してくれた名作がありました。それがこの本。

この名作が、なぜかわが実家にころがっておりまして、大学生のころ、この本の中の美味しい紅茶の入れ方のくだりを読んだおかげで紅茶本来の味を引き出す入れ方と味を覚えた私。いまでも非常に感謝しております。

しかしいまになり、はたと思い出そうとしても内容詳細を忘れてしまったので、いつか実家から奪ってこようと思っているうちにズルズル。
ようやく先日、実家戻りの折に
「荻昌弘の男のだいどこ、どこにある?」と聞いたら
「捨てたわよ」
とあっさり言うではありませんか!
うおーーあの本ってもう多分絶版 手に入らないのにぃイイ〜〜と、のたうちまわっても too late。 

あーああーーーー(タメイキ)

しかし天は私を見放さなかった。青山のCOW BOOKS でナニゲに本棚を見ていたらあるではありませんか! うちにあったものより、かなりいい状態の、ピカピカの「男のだいどこ」が。

ほくそえみながら即座に手に入れました。

急いでくだんの紅茶の入れ方のくだりを探す・・・と、覚えていたとおりありました。皆さんが読むことができるチャンスは少ないと思うので、以下、参考になる部分を抜粋させていただきます。

p223

「紅茶のいれ方は、ただ一つである。すべての関係容器を徹底的に熱く保つことである。熱して乾かしたポットに、少な目の葉を投込む。一人前、小サジすりきりより少な目である。そこへ、コーヒーと同じく、ぐらぐらの煮え湯を注ぎ、いそいでポットを、ねんねこでくるむ。

ナニ? キミんとこは、赤ん坊つくらんのか。仕方ない。では、バスタオルでくるみなさい。砂時計ひっくりかえして、三分間。充分あたためておいた茶碗に、注いでごらんなさい。ほら、色からして今までの紅茶とはちがった澄明感(注:原文ママ)でしょ。

最近は国産の缶(原文は缶編に灌のつくり部分がついた漢字)も相当によくなって、日東の セイロン、ダージリン、ことにアッサムなど、非常にいい色が出るのは感動的である。・・・・」

というのがその内容です。だまされたと思って、一度この通りに入れてみてください。書かれているすべての条件をそのまま実行しないとダメですよ。復習しますと、

*関係容器をすべて熱く保つこと
*ぐらぐらのお湯にすること
*茶の量も守ること
*そして注ぐや否や急いでねんねこ(ないと思うのでバスタオル)でくるむこと
   タオルじゃだめです バスタオルで その厚みで蒸らすことが大事
*きっちり3分待つこと
*温めておいたカップに注ぐこと

これでどんなに安い葉でも、すばらしく香り高くコクのある紅茶が入ります。

これが記されたのは、本の後ろを見ますと、昭和47年(1972年)。いまでは、さまざまなブランドから ありとあらゆる種類の紅茶が日本に上陸し、いくらでも手に入りますが、果たして、本当に美味しい入れ方で紅茶を入れて本来の茶葉の実力を充分に引き出して飲んでいる人がどれだけいるのかどうか!?

カフェでも、カッコつけた名前のブランド羅列してるわりに美味い紅茶入れてくれるとこ、ほとんどありませんからね。味がしないばかりか、まったく香りもしない、紅茶色のお湯を飲まされるばかり。ときには水が悪くて水の臭い匂いがしちゃったりね。

厨房にいるのがいまさっきから入ったバイトでもいいの。このとお〜りにやってくれさえすれば
イギリスの茶屋が二束三文で売ってくれる類の粉みたいなクズ茶葉でさえ、コクのある忘れ得ぬ味の紅茶ができあがるんです。

まっとうなグルメ本ってこのように初心者でも、とくに大枚はたかなくても、いい味にめぐりあえる指南をしてくれる本だって私は思うんですが・・・。

ともあれ、これを読んだみなさんはぜひとも、この荻昌弘方式でご家庭では美味い紅茶、飲んでくださいませね。


その他、食にまつわる興味深い話が満載の名著、興味を持った方がいらっしゃいましたら、ぜひ古本屋さんで探してみてください。

「男のだいどこ」 著者:荻昌弘(おぎ まさひろ)
昭和47年6月25日 第一刷
文藝春秋社刊

著者略歴を転記します。

1925年、東京に生まれる。1951年、
東京大学国文科卒業。
「キネマ旬報」同人、「映画旬刊」編集委員を経て、
1966年からフリーの映画評論家。東京都立大学
講師。著書に「映画百年史」「ステレオ」がある。
(注:略歴も昭和47年時点のもので、ご本人はすでに故人です)

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