|
ちょっと前のブッダカンのところの話で、NYではわかりやすいスケール感とお派手感がないと飲食のハコはうまくいかない、という話を書きました。渋いという価値観はほぼ通用しないと。
そのいい例がミートパッキングの某シェフの店で、名前はアメリカで広く知られているのに、残念ながらハコとしての入りはいまいち。それもこれも、建築内装をこれまた広く知られた某建築家に頼んだからだっていうんです。この建築家は世界的に知られてるけど、その建築家の、どちらかというと殺風景な作風はNYにやってくる成金族たちの期待にはこたえられない種類のものなんだそう。
逆にその斜め前にあるイタリアンはシャンデリア・ドッカーン的なものすごい派手な内装でえらく混んでいるんだそうな。これは、いずれも、投資として物件を考えてる人たちへの物件紹介をお仕事にしてる不動産のプロ(仕事とは別で、知り合いから紹介されて課外活動でお会いした人)からお聞きした話です。NYはすべてがマーケティングだから、マーケティングをはずすと、いくら料理人が有名でもいい腕持っててもダメだって。
一方でイアン・シュレーガーという建築家の作品がやたら目立つNYです。昔ながらのグラマシーパークインというホテルも彼の手によって改装され(wakiyaが入ってます)、なんだかとんでもない内装になってますが、それでも話題を集めて流行ってる。また、ソーホーの北側のノーホーというエリアに、呪われた館みたいなイメージの恐るべき外観のアパートメントも造っちゃってこのアパートメントのおかげでこの通り全体が、夜通ったらこわいよーって雰囲気になっちゃってるんだけど、それでもプロに言わせればイアン・シュレーガーブランドは、成金ワールドではステイタスが確立されてるから、このアパートもあっというまに完売してるんだそうで。悪趣味=ダメとならないところがNYマーケティングの奥深さ。
日本でいうところの「渋い」をNYでわかってもらうのは難しい。
という前提を理解したうえで話を進めます。
ロバート・デニーロがトライベッカにホテルをオープンしました。トライベッカはウォールストリートから近いので昔からヤッピーたちが倉庫街を改装して住み始め、故・JFKジュニアもお住まいになって当時はやりだったローラーブレードで走ってたあたりです。
久々に行ったトライベッカは、さらにお金持ちタウンになっていて、めちゃこぎれいな落ち着いたたたずまいになってました。デニーロホテルはその一角に、看板もなにも出さずに存在してます。今回の別チーム、ホテル担当のYさんが取材のために宿泊してたのでSちゃんと訪ねてみました。完成しても70室余りというブティックホテルサイズですが、小さなホテルという印象はなく、ロビーや中庭の雰囲気、お部屋の雰囲気は、ヨーロッパの別荘ってかんじです。お部屋はとくにイタリアンな感じで、でも、きらびやかなタイプのイタリアではなく、トスカーナの山荘みたいなイメージ。ホテルというより誰かの家のゲストルームにおじゃましたみたいなノリで、可愛らしく趣味よくまとまってました。
レセプションも、なにせ部屋数が少ないし、まだ泊まってる人も少ないだろうから、Yさんに会いに来ました、というとすぐ反応して、お部屋に電話し「お友達がきてますがロビーに降りてきますか?お部屋にご案内しますか?」という感じでバトラーみたいです。Yさんは「外に何の表示もないのによくわかりましたねー」と驚いてましたが、その週のNY食べ歩きみたいなフリーペーパーに1Fに入っているイタリアンが紹介されていて、その外観写真がヒントでわかったのでした。それがなかったら番地だけでは確かにわからないかもしれない。
ここでまた不動産のプロの話登場ですが、このホテル、立地といい存在といい、別に観光客に泊まってもらおうと思って作ってるわけじゃないそうです。またもマーケティング的にいえばデニーロのお友達関係の映画クルーがNYで映画撮るときに、たとえば「全館貸し切りで」みたいに使ってくれればいいや的発想で作られてるとか。な・る・ほ・どー。それでああいう「僕の家へようこそ」的な部屋であり、レセプションの応対であるわけですねぇ。ロビー横のライブラリーなんてまさにデニーロさんちにおじゃましたって感じですもん。
それで雑誌などにも積極的には露出しないそうです。もちろんホテルなんだから一般の人が泊まりたければ泊まってもいいんですけどね。625ドルくらいから。お部屋の内装はひと部屋ずつ違うそうで、私たちが見た部屋はイタリアの山荘みたいだけど、モロッコ風とかチベット風とかもあるようです。詳しくはYさんのルポを私も楽しみにしてるところ。
「渋い」話の続きは、実はここのスパの話なんです。なぜならその名もSHIBUI SPA(しぶいスパ)。まさに日本語の「渋い」からきてるんです。当初はモロッコスパを作る方向で進んでいたのに、デニーロのお父さんが日本に来て、コンセプトを思いついちゃったとの話を小耳に挟みましたが、渋いコンセプトが受け入れられづらいNYで、あえて「渋い」スパ。どう評価されるのかが気になるところですが、日本人が渋いと思って作るものと、アメリカ人が思う日本っぽさって違いますもんね。NOBUを立派に成功させたデニーロなので、アメリカ人受けする渋さをマーケティングした上での企画なのかもしれません。
|