テクマクマヤコンフルスロットル
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『男のだいどこ』  荻昌弘 [2006年03月08日(水)]
こちらは支離滅裂に気が散る性格の反映でノージャンルであれこれ読み飛ばす本の中から心に残った本、お薦めしたい本をご紹介するコーナーです。

第1回は、往年の正しいグルメ指南本。

「男のだいどこ」  荻昌弘

似非グルメが蔓延する昨今ですが、グルメという単語ができるはるか昔にまっとうに美味いものを紹介してくれた名作がありました。それがこの本。

この名作が、なぜかわが実家にころがっておりまして、大学生のころ、この本の中の美味しい紅茶の入れ方のくだりを読んだおかげで紅茶本来の味を引き出す入れ方と味を覚えた私。いまでも非常に感謝しております。

しかしいまになり、はたと思い出そうとしても内容詳細を忘れてしまったので、いつか実家から奪ってこようと思っているうちにズルズル。
ようやく先日、実家戻りの折に
「荻昌弘の男のだいどこ、どこにある?」と聞いたら
「捨てたわよ」
とあっさり言うではありませんか!
うおーーあの本ってもう多分絶版 手に入らないのにぃイイ〜〜と、のたうちまわっても too late。 

あーああーーーー(タメイキ)

しかし天は私を見放さなかった。青山のCOW BOOKS でナニゲに本棚を見ていたらあるではありませんか! うちにあったものより、かなりいい状態の、ピカピカの「男のだいどこ」が。

ほくそえみながら即座に手に入れました。

急いでくだんの紅茶の入れ方のくだりを探す・・・と、覚えていたとおりありました。皆さんが読むことができるチャンスは少ないと思うので、以下、参考になる部分を抜粋させていただきます。

p223

「紅茶のいれ方は、ただ一つである。すべての関係容器を徹底的に熱く保つことである。熱して乾かしたポットに、少な目の葉を投込む。一人前、小サジすりきりより少な目である。そこへ、コーヒーと同じく、ぐらぐらの煮え湯を注ぎ、いそいでポットを、ねんねこでくるむ。

ナニ? キミんとこは、赤ん坊つくらんのか。仕方ない。では、バスタオルでくるみなさい。砂時計ひっくりかえして、三分間。充分あたためておいた茶碗に、注いでごらんなさい。ほら、色からして今までの紅茶とはちがった澄明感(注:原文ママ)でしょ。

最近は国産の缶(原文は缶編に灌のつくり部分がついた漢字)も相当によくなって、日東の セイロン、ダージリン、ことにアッサムなど、非常にいい色が出るのは感動的である。・・・・」

というのがその内容です。だまされたと思って、一度この通りに入れてみてください。書かれているすべての条件をそのまま実行しないとダメですよ。復習しますと、

*関係容器をすべて熱く保つこと
*ぐらぐらのお湯にすること
*茶の量も守ること
*そして注ぐや否や急いでねんねこ(ないと思うのでバスタオル)でくるむこと
   タオルじゃだめです バスタオルで その厚みで蒸らすことが大事
*きっちり3分待つこと
*温めておいたカップに注ぐこと

これでどんなに安い葉でも、すばらしく香り高くコクのある紅茶が入ります。

これが記されたのは、本の後ろを見ますと、昭和47年(1972年)。いまでは、さまざまなブランドから ありとあらゆる種類の紅茶が日本に上陸し、いくらでも手に入りますが、果たして、本当に美味しい入れ方で紅茶を入れて本来の茶葉の実力を充分に引き出して飲んでいる人がどれだけいるのかどうか!?

カフェでも、カッコつけた名前のブランド羅列してるわりに美味い紅茶入れてくれるとこ、ほとんどありませんからね。味がしないばかりか、まったく香りもしない、紅茶色のお湯を飲まされるばかり。ときには水が悪くて水の臭い匂いがしちゃったりね。

厨房にいるのがいまさっきから入ったバイトでもいいの。このとお〜りにやってくれさえすれば
イギリスの茶屋が二束三文で売ってくれる類の粉みたいなクズ茶葉でさえ、コクのある忘れ得ぬ味の紅茶ができあがるんです。

まっとうなグルメ本ってこのように初心者でも、とくに大枚はたかなくても、いい味にめぐりあえる指南をしてくれる本だって私は思うんですが・・・。

ともあれ、これを読んだみなさんはぜひとも、この荻昌弘方式でご家庭では美味い紅茶、飲んでくださいませね。


その他、食にまつわる興味深い話が満載の名著、興味を持った方がいらっしゃいましたら、ぜひ古本屋さんで探してみてください。

「男のだいどこ」 著者:荻昌弘(おぎ まさひろ)
昭和47年6月25日 第一刷
文藝春秋社刊

著者略歴を転記します。

1925年、東京に生まれる。1951年、
東京大学国文科卒業。
「キネマ旬報」同人、「映画旬刊」編集委員を経て、
1966年からフリーの映画評論家。東京都立大学
講師。著書に「映画百年史」「ステレオ」がある。
(注:略歴も昭和47年時点のもので、ご本人はすでに故人です)
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