住み着いた町、ケレマネには
スーパーなどというものはなかった。
トイレットペーパー、洗剤などの”工業製品”はインド人経営の小さな店へ、
魚や野菜など”生鮮食品”は青空市場へ買いに行く。
朝8時
すでに高く昇った太陽に照りつけられながら市場まで歩く。
市場へと続く道端にはすでに
カラフルなプラスチック容器が積み上げられている。
それを横目に見ながら市場へ入ると
”セニョーラ、セニョーラ こっちこっち。じゃがいもが10コントス”
”セニョーラ、何買いにきたの?これこれ、バナナ。5コントス。
あ、でもセニョーラは3コントスでいいよ。はい、これ”
ひっきりなしに、次から次へと人が寄ってくる。
魚のにおい
バナナの甘い香り
野菜についた土のにおい
ココナツから立ち上る濃厚な香り
それらが人の汗、汚水、生ゴミのにおいと一緒に
市場の匂いをつくっていた。
今しがた木からもぎ取ってきたマンゴーの横には
生きたままのカニが籠の中でうごめき
にわとりは足を縛られ
売られていた。
食べるということは
生きていくということは
すなわち
他者の生命を頂くこと。
そんなことを思い出させてくれる
生命が溢れる市場だった。